楽しい時間
とは言ったものの自分のスカスカの連絡先が一人でも増えるのは嬉しい。勿論、いらない迷惑メールや企業からのメッセージなどが増えても何も嬉しくは無いが知り合いの連絡先しかも先輩とはいえ同じ高校の女子高生の連絡先を得るというのは何とも言えない嬉しさが込み上げてくる。
ダメだ。顔に出しちゃ。そう思うほどに口元は緩む。
「あれ?アイスがそんなに楽しみ?それとも私の連絡先そんなに知りたかったの?」
簡単に見透かされるこの全裸の脳と心に腹を立てつつ正直に答えることにした。
「あんまり、友達いないんで・・・それなりに嬉しいです」
あんまりというかゼロかも知れない。夏美ちゃんとは交換したからゼロは言い過ぎだ。でもそれまでは無い。クラスの女子ですら連絡先をもしかしたら知らないかもと思って返されたメッセージアプリの連絡先を見るとホッとした。よく考えればクラスが決まった時にクラスのグループラインに入れてもらったんだった。
ただそのグループラインが使われることは本当にたまにでそれも「テストがダルい」などクラスの人気の男子がつぶやいてそれにみんなが乗っかるぐらいで普段はそれぞれのコミュニティで連絡を取り合っているのだろう。この中から厳選され残ったのが私ということだ。
そんなことはいい。二人、連絡先が手に入った時点で満足だ。多ければいいというものでは無い。量より質だ。少なくとも先輩も夏美ちゃんもどちらも可愛いし綺麗だ。その時点でこの二人の連絡先を知らない人たちに私は勝っているのだ。
「なんだかよっぽど嬉しかったんだね。あっでも一応、レンタル友達ってことだから普通に交換したことは内緒ね。こういうのトラブルになるから普段はするの禁止なんだけど後輩だしいいよね」
「誰にも言いません」
というか言う人がいない。先輩以外に。
そうこうしているうちに順番が来た。カラフルなショーケースにカラフルなアイスが並んでいる。もはや何味なのかケースが邪魔で分からない。何とか隙間からアイスの種類を覗き込み柑橘系のアイスを選ぶ。先輩はどうやらチョコ系の様だ。色が多過ぎてチョコなのか何なのか分からないが頼む時に最後、「チョコ」という単語が出たので間違いないだろう。
「柑橘系好きなんだ」
「いや、さっき結構食べたのであっさりしてるのがいいなと」
「なるほど。つまり私は食べ過ぎと?」
「そんなことは全く言ってませんが」
話がズレ過ぎでは無いだろうか。
「ところでこれ食べ終えたら今度は雑貨屋さんに行きたいんだけどいいかな?」
いいも何も私には選択肢が無い。選択権では無い。選択肢が無い。それは相手に脅されてとか、相手の圧に負けてとかでは無い。単純な私のスペック不足による選択肢不足、いや、不足では無く常に在庫を切らしているやる気のない賞味期限切れの商品を置いている店なのだからだ。
「お任せします」
私は今日はこの言葉で全てを乗り切る。友達にお金を払い。友達に何たるかを教えて貰い。先輩の連絡先を交換し。ちょっとこんがらがって来た。
私の足りない頭がショート仕掛けたので手に持っていたアイスに思い切りかぶりつき急速冷凍行動をとった。
「頬張りすぎだよ。リスみたい」
横でケラケラ笑う先輩は可愛かった。




