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光に弱いのはいつでも同じ

 上がった瞬間、目に飛び込んできたのは何処からどう見てもあの「可愛い」先輩だった。しかし大きな壁が立ちふさがる。そう、彼女の周りには彼女を取り囲む女友達は多数目に入る。もうちょっと少なければ隙間に入り込めるのに・・・いや、一人でもいる時点で多分無理、いや絶対無理。ところがそんなことはお構い無しに彼女が手を振っている。後ろを振り返るが人はいる。だがそちらを見ている人は誰もいない。

「私?」

いやそれは無いだろう。ここで手を振り返そうものなら地獄の底まで直通特急だ。

だが誰も彼女に反応しない。やがて私の隣を歩いていたの女子が突然、私の手を取った。

「あなた、梓に呼ばれてるわよ」

 そう言って私の手を上に挙げる。

「やっと気がついてくれた!てゆうかごめんね〜」

まるで前から知り合いだったかのように私に話しかけて来る。

「あなた、昨日の昼も来てたわよね?誰か探してるの?」

探してるんです。というか目の前にいるんです。

「いや・・・あの・・・」

彼女を前に言葉が出ない。

「なぁに?」

その仕草がまた反則のように可愛い。今日、友達になった夏美ちゃんごめんなさい。あなたも素敵です。でもこの先輩も可愛すぎて選べません。

「かっ可愛い人だなと・・・」

さっき食べたばかりの弁当の中身が出るぐらいに絞り出した言葉を発した後、私はすぐさま後ろを向き

「失礼しました!」

そう言って階段を降りようとした・・・が回り込まれてしまった。RPGは普段やらない派なんですけどね。

「それじゃ分からないよ」

「ねぇもしかしてこの子、梓に用が昨日も今日も有ったんじゃない?」

感のいい奴め。先輩だが思わず悪態をついてしまいそうになる。キリッとした目のボーイッシュな友人は私の顔を覗き込みながら確認をする。まるで刑事に取り調べを受けているようだ。テレビでしか見たこと無いけど。

「正解みたいだよ。梓!」

はい、大正解です。もう瀕死です。だから助けて下さい。

「それならそうと言ってくれればいいのに」

柔らかな声は耳を突き抜け脳みそをとろけさせる。これは非常にまずい。

「じゃあ・・・」

そう彼女が言いかけた時、救世主の音がなる。昼休みを終えるチャイムの音だ。

いまだかつてこれほどこの音に感謝したことは無い。賽銭箱があるなら貯金箱の小銭をぶち込みたいぐらいだ。

「あっ昼休み終わっちゃったね。またね。今度はこっちからいくね。その色、二年生でしょ?」

私の胸元の制服のリボンの色を見て私が二年生だと判断する。

今更だがこの学校は女子生徒はリボンの色が学年ごとで違う。勿論、その年の色は三年間固定だが三年生が卒業すればまたその色が次の一年生に使われる。なので私の今している緑のリボンは二年生しかありえない。因みに三年生は赤色、一年生は青色をしている。

とまぁどうでもいい豆知識を披露したところでボスが今度は向こうから攻めてくるタイプのRPGに出くわしてしまうとはこれはバチが当たったのか?一年生と友達になりつつ三年生にも浮気しようとしたバチなのか。なら世の中の性欲にまみれた男どもはどんな苦しい人生を歩んでいるのだ。

完全に頭がパニック状態のままクラスに戻り席につく、その日の午後は全く頭が使い物にならなかった。

元からとか言うな。そこ。


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