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白兎と始めるアポカリプス世界冒険譚(闘神と仙術スキルを携えて)  作者: クラント


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48話 異常


 翌朝、ジュードと約束した時間よりも早めに起きて、

 チームトルネラの拠点ビルを一人で出る。


 白兎に今日の予定変更を伝えに行くためだからすぐ戻るつもり。


 一応、周りには朝のジョギングと言って出てきた。

 トールやジュードからは微妙な顔をされたのが少し気になったけれど。





「…………と言うわけだ、白兎。今日の狩りは中止」


 フルフル

『ダンジョンか~、僕は付いていかなくても大丈夫?』


「白兎が付いてきてくれたら心強いが、ジュードが一緒にいるからなあ~」



 未だ白兎のことはチームの皆には秘密にしている。

 チームトルネラにはボス以外の機械種がおらず、

 俺1人が白兎を連れ帰ると悪目立ちしてしまうかもしれないから。


 色々ヤラカシてしまっている俺だが、これ以上、

 目立つ要素を付け加えるのは避けたい所。


 せめて、ザイードの機械種タートルが完成すれば、

 俺だけが、ということもなくなる。


 そう言った意味では、今回のダンジョンにて、

 何とかザイードが求める部材を確保したい。



「まあ、今回のダンジョンアタックで目的物を入手できれば、チームトルネラの皆に白兎を紹介できる日も近くなる。もう少しの辛抱だぞ」


 パタパタッ!

『はーい! その日を楽しみにしているよ!』



 耳をパタパタ、ピョンピョン飛び跳ねて返事をする白兎。


 俺だって白兎を皆にお披露目できる日を待ち望んでいる。

 なんとしてでもダンジョンアタックを成功させねばなるまい。




 次に、サラヤやジュード、カランやザイードから得た情報を白兎と共有。

 『チームトルネラの事情』、『機械種』、『他のスラムチーム』……、

 特に『ダンジョン』や『紅姫』『宝箱』は重要事項。



 ピコピコ

『本当にゲームみたいだね、宝箱まで出るなんて』


「全くだ。あいにく俺が知っているゲームではなさそうだけど」



 自分が良く知るゲームの中に入り込むのは良くある話。

 原作・設定・攻略方法を知るが故に、初めから知識チートを備えているとも言える。


 けれど、『赤の帝国』『機械種』が出てくるようなゲームに心当たりはない。

 元の世界でもそういったゲームは星の数ほどあっただろうから、

 俺が知らないだけという可能性は過分にあるのだけれど。



 フルフル

『ゲームだとすれば、ジャンルはRPGなのだろうね。仲間を集め、装備を整え、敵を倒して経験値を貯めて強くなるって仕組みの』


「仲間は機械種を従属させていけば増えていくだろうが、ステータスが見えないから、敵を倒しても経験値が溜まって強くなっているのかどうか分からないぞ」



 トールやジュードと話をしていても、ステータスやスキルとかの話は無かった。

 スキルについては翠石というアイテムを使って機械種に追加できるということくらいか。



 フリフリ

『僕のような機械種なら強さはデータとして表現できそうだけど』


「その可能性はあるな。車だって出力や燃費がデータとしてあるんだし……」



 肝心の俺の能力だけ不透明。

 『闘神』スキルも『仙術』スキルもイマイチその全容が分からないまま。



「その辺はおいおい調べて行くしかないか……、世界のこと、機械種のこと、俺自身のこと………、分からないことだらけだな」


 パタパタ

『じゃあ、僕は今日一日、朝から街を回って情報収集しておくね。昨日の晩、この周辺を歩いてみたんだけど、やっぱり夜だと人が少なくて……』


「おう! 頼んだぞ………、あと、俺のヒロイン候補の情報も頼む。どちらかと言うと、そっちの方を優先で」


 フルフル

『相変わらずだねえ……、世界の謎よりも女の子の方を優先するんだ?』


「男にとっては、世界よりも女の子の方が謎深いんだよ……、おっと、ついでに他のスラムチームについても調べておいてくれ。どうやら敵対する可能性があるらしくてな」



 白兎に俺が聞き及んだ他のスラムチームの名前を伝え、調査を依頼しておく。



「では、任せたぞ! 白兎探偵局!」


 フリフリ!

『任せといて! 【真実はいつだって1つ!】【マスターの名に賭けて!】【小さな灰色の脳細胞を存分に使うよ!】【ウチの奥さんがねえ~】【問題は会議室で起きているんじゃない! 現場で起きているのだ!!】』


「……後半、おかしくないか?」





 とにかく、白兎に調査を任せて、チームトルネラの拠点に戻る。


 すると、ちょうどジュードが準備を整えた所だったので、

 そのまま、ダンジョンに向かって出発することとなった。



 昨日の夜に用意したのだろう大きめの袋を渡される。

 中には鉄パイプと布が入っているようだ。

 袋から鉄パイプがはみ出している。

 


 ひょっとして、この鉄パイプは武器なのだろうか。

 確かにジュードは狩りから帰ってくる時はいつも鉄パイプを持っていたが。


 歩きながらジュードにダンジョンについての質問をいくつか行う。



 ダンジョン内は薄暗いものの、壁全体が薄っすら発光しており、灯りは不要。

 出てくるのは、ラットの他は、リザード、スネーク、スパイダー、バット等。

 これらは大量に襲いかかられるか、倒れたところを襲われない限りはそれほどの危険は無いとのこと。

 鉄パイプで十分追い払うことができるようだ。


 あと、このダンジョン内で銃を使うのは危険だそうだ。

 床や壁に当たって跳弾し、大惨事になることもあるらしい。

 よっぽどのことが無い限り、銃は抜かない方がよさそう。



「ダンジョン内では、鉄パイプが最も頼りになるんだよ」



 なぜか普段の2割増しの機嫌の良さで、そう宣うジュード。



 鉄パイプになんか思い入れでもあるのか、コイツ?



 また、機械種より危険なのは他のチームからの襲撃らしい。

 何せ人が死んでも機械種に襲われたとしか思われないから、襲う方も躊躇いが無いらしい。


 極力他の人間に会わないようにしないといけない。

 潜るのは、3階層まで。

 それ以上は瓦礫や土砂が道を塞いでおり、先に進めない模様。





 色々分からないことを教えてもらっているうちに目的地に到着する。


 目の前にあるのはダムのような人工的な壁。高さは5,6階建のビルくらいで、幅はちょっと見当が付きにくいくらいの大きさだ。

 短くても1キロ以上はありそう。

 


 下水道跡って聞いていたけど、どちらかというとダム跡だよな。



 ダムと違うところは、壁に幾つかのトンネルが開いていること。

 トンネルの大きさは4トンクラスのトラックが通れるくらいの大きさから、縦横2mくらいしかないものまで。それが見渡す限りは20本以上ありそうだ。


 朝早く来た為か、人がほとんどいない。

 ジュードはいつも人が少ない時間帯に来てダンジョンに潜っているらしい。



「ヒロ、こっちだよ。僕がよく潜っている穴は」



 ジュードが俺に声をかけて、潜ろうとするトンネルを案内してくれる。



「入れる穴はチームによって決まっているのか?」


「うーん………、明確に割り当てられているわけじゃないけど、どのチームも良く利用するルートは決まっているね。だからそういったルートに勝手に入ると、喧嘩を売っていると見做されるかな」


「やっぱり縄張りがあるんだな」


「でも、これだけあるからあまり気にする必要は無いよ。僕が入る所は人気のないエリアだからね。でも、罠とかがほとんどないから危険は他に比べれば少ないよ」


「入る穴によってルートが違うってこと? あと、ルートによっても難易度が違うのかな?」


「そうだよ、入る穴でルートが決まるんだ。でも、穴によっては中でつながっている場合もあるから注意が必要だね。難易度については、ルートによって偏りがあるかなってところ。ほとんど経験則だから確証ではないけれど」







 そういった質問をしながら、しばらく歩いていると、突然、ジュードが立ち止まる。



 え、何?



 ジュードの目線を追うと、目指していた穴のそばに3人の人影が見える。


 20歳くらいの青年に、

 30代くらいの筋骨隆々の大男。

 そして、俺と同年代の小柄な少年。


 どう見てもこちらを待ち構えているような雰囲気。

 けれど、敵対的には見えず、まるで待ち合わせしていたような立ち位置。


 知り合いなのか? 

 ジュードの顔を見ると、若干強張っているようだ。


 まだ、銃に手をかけていないだけ、完全に敵対関係というわけではなさそうだけど。



 ふむ…………

 知り合い以上、敵未満ってとこか。

 ちょっと表現が変かな?







 立ち止まっていたジュードが歩き出す。

 小声で俺に『いつでも銃を抜けるように』と声をかけてから。


 一応、銃は貰った袋の中に入れてある。

 黒爪チンピラリーダーから奪った銃だ。

 袋の口を右手近くに寄せて、俺もジュードの後についていく。






「やあ、ジュードさん。偶然ですね。こんなところでお会いできるなんて」



 3人のうち、こちらに声をかけてきたのは、眼鏡をかけた優男だった。

 年齢は俺より2,3歳は上、ジュードと同じくらいだろうか?

 古びた灰色のコートを着ており、手には武器を持っていない。


 スラリとした体形で、モデル並みの足の長さ。

 それに、最初に声を聴いてなければ、女性かと思ってしまう程の女顔。

 ジュードもハンサムだが、こいつは中性的な美青年といった感じか。


 本人もそれを意識しているのか、やや色の薄い茶色の髪を肩の辺りまで伸ばしており、後ろから見たら性別の判断に迷うだろう。


 立ち振る舞いに華があり、美人ともなれば、

 その一挙一動が注目される類の人間であろう。



 絶対コイツ、モテそうだ。

 いかにも少女漫画に出てきそうな美形キャラっぽい。


 だとしたら、絶対に有能なタイプ。

 頭脳明晰な天才にして、喧嘩も強いという、いかにも女の子の理想を集めたようなキャラクターに違いない……と、勝手に想像。






「アデット。俺がいつも潜る穴の前で張っていたくせに、偶然も何もないだろう」



 ジュードが機嫌の悪そうな声で指摘する。

 指摘された青年はフフッという感じの笑みを浮かべながらこちらに近づいてくる。



「そうですね。おっしゃるようにこれは偶然ではない。必然というやつですね。正しく運命かもしれません」



 大きく両手を広げながら大層なセリフで返してくる。

 派手な動きに伴って、着ている灰色のコートが翻る。



 あんまり似合ってない地味なコートだな。

 折角のハンサムなのに色々台無しじゃないか?



 ジュードに話しかける青年……アデットを眺めながら、

 失礼な感想を心の中だけで呟く。


 色合いがちょっと不自然で、古ぼけたよう見える。

 髪型も立ち振る舞いもバッチリ決まっているのに、

 羽織っているコートだけが異色でやや浮いている模様。



 

 コートのことはともかく、その馴れ馴れしい態度から、

 やはり、ジュードの知り合いであるのは間違いないようだ。


 しかし、当のジュードはあまり関わり合いになりたくなさそうな表情。

 一体どのような関係なのであろうか?

 


 俺が疑問に思う中、ジュードとアデットの会話は続く。




「しつこいな。お前のチームには入らないって何回も言っているだろう」


「ジュードさん、貴方の実力はあのチームにはもったいない。我がチームに来てこそ、貴方の真の実力が発揮できるはずです」


「くどい。どれだけ良い条件を重ねても俺の気持ちは変わらない」


「サラヤさんですか。貴方の思い人の。であれば、お二人で我がチームに入れば良いのでは。皆も歓迎するでしょう。リーダーの私が言えば、逆らう者はいませんからね」


「サラヤはチームトルネラを離れるつもりはない。それははっきりしている」


「あのチームにいても将来はありませんよ。貴方とサラヤさんの未来を考えるのでしたら、早いうちにチームを離れた方が良いと思います」


「……それは情報が古いな。チームトルネラはもう持ち直している。心配は無用だ」


「ん。あの、バーナー商会に持ち込んだというハイエナですか?正直、バーナー商会に頼んでガセネタを流してもらったと考えていたのですが。そうですか、それが事実なら……」




 アデットが考え込んでいる間に、ジュードが俺の方に向き直り、



「ヒロ。こいつは放って置いて、先を急ごう」



 アデットを放置し、先へ行こうと促してくる。



「いいの?」


「いいよ。時間の無駄だから」



 ジュードはうんざりした様子でバッサリ。




 二人の会話を聞いてだいたい事情は分かった。

 おそらく、このアデットは別のスラムチームのリーダーで、

 いつもジュードを引き抜こうとしているのであろう。


 ジュードにはサラヤがいるのだから、

 チームトルネラを抜けるわけがない。

 だから、時間の無駄なのは間違いない。



 しかし、このアデットという青年。

 抗争に明け暮れているスラムチームを率いているという割に、全然強そうには見えない。

 随員っぽい後ろの筋肉モリモリの大男の方がずっと強そう。


 何かリーダーを張るだけの能力を持っているのだろうか。




「ほら、ヒロ、行くよ」


「ああ……」



 アデットを置き去りにして、先へ進もうとする俺とジュード。

 しかし、我に返ったアデットが慌てた様に声をかけてくる。



「待ちなさい、ジュードさん。まだ話は終わっていませんよ!」


「もう話すことなんてないさ」


「いえ、最近のダンジョンの状況についてです」



 聞き捨てならないことを言い出したので、一旦立ち止まる俺達。

 その様子を見て、ほっとした様子でアデットが話を続けてくる。



「貴方も気づいているでしょう。昨日から、やたらコボルトが増えてきていることに」


「それは知っている。だから今日は二人で来たんだ」


「ほう? いつものディックさんではなくて?」



 アデットの指摘に、忌々しそうに顔を歪ませるジュード。


 おい、分かりやすいぞ。

 もうちょっと感情を表に出すのを控えろよ。



 案の定、ジュードの顔色を見て、

 アデットは即座にこちらの事情を把握。



「なるほど。ディックさんが大怪我したというのは本当だったようですね」


「うるさい。………で、コボルトが増えてきたという原因に心当たりがあるのか?」


「高いですよ。まあ、貸しにしておきましょう。ダンジョンに発生する機械種の数が増えたり、上位の機械種が出現するようになったりした場合、原因と考えられるのはたった一つ、ダンジョンの奥に新たな巣が発生したのでしょう」


「巣が増えた? どういうことだ。ダンジョンは地下深くの巣が継続的に機械種を生み出している現象なのだろう。その巣が増えたって、分裂でもしたのか?」


「いえ、通常の巣でも、たまたま別の巣が近くにあった場合、巣の拡大とともに統合されることがあるんです。複数の巣が合わさったものを『塞』と呼ぶのですが、おそらくこれと同じようなことがダンジョンの地下で起こったのではないかというのが、私の推察です」


「『塞』か。聞いたことがあるな。本来巣に1体しかいない紅姫が複数存在するんだったな。それを攻略した狩人達100人の話は有名だが」


「その話は『塞』ではなくて、塞が成長して地上に出てしまった『城』ですよ。百を超える狩人達が半分以上損耗しながら攻略した伝説ですね。聞くところによると、『城』の中ではレジェンドタイプの機械種が押し寄せてきたそうです。一体でも街を壊滅させかねない化け物達がね。まあ、大分誇張されていると思いますけど」



 うわ、話を聞いているだけで情報が増えていく。



 巣:地下にある機械種の基地

 砦:巣が成長して地上に出たもの。白鐘の効果を減ずる。

 塞:地下にある複数の巣が統合したもの

 城:塞が成長して地上に出たもの。同じく白鐘の効果を減ずると思われる。


 紅姫:巣、砦、塞、城のコア。これを破壊することで巣等を完全に壊すことができる。あと、紅姫からは紅石という非常に高価な宝を得ることができる。



 こんなものか。思ったより情報が集まったな。

 やはり、ジュードと一緒にいると情報の集まりが早い。

 もっと早くからジュードについていくべきだったかな。






 俺が考えをまとめている間に、二人の会話は進んでいく。



「アデット、このままだとどうなるんだ」


「おそらく、もっと上位の機械種が出現するようになるでしょう。今はコボルトで済んでいますが、オークやオーガなんかも出てくる可能性がありますね」


「オーク! オーガ! そんな奴ら俺等ではどうしようもないな。熟練の狩人で無いと対抗できないだろう」


「このダンジョンをスラムのチームが独占できているのは、狩人達にとっては価値が薄い機械種しか出現しないからです。オーク、オーガクラスが出るようになったら、他の街のダンジョンのように狩人達が入り込んでくるでしょう」


「そうなったら俺達の稼ぎ場所が無くなってしまう。そうなったら……」




 アデットは淡々と語るだけだが、

 ジュードの顔色はどんどん悪くなっていく。


 それだけダンジョンの敵が強くなっていくという流れが、

 チームトルネラにとっては悪い方向だということ。



 しかし、オークに、オーガか。

 これもファンタジーの名前がそのまま使われているな。


 どちらもコボルトよりは強いモンスター。

 となれば、その名を模した機械種が弱いわけがない。



 どうやら危機的な状況のようだ。

 ネット小説でも、主人公が来た街になぜか、何十年、何百年振りの災害が襲ってくるというのは良くある話。


 これもその類なのであろう。

 ならば、皆の危機を解決するのも俺の役目なのかもしれない………



 と言っても、何をすればよいのか全く分からない状況。

 これも白兎に相談しなくてはならない事柄であろう。

 できればその前に、もう少しこの2人から情報を仕入れておきたい所だが……




「困ったなあ。これはサラヤに相談して対策を考えないと……、ダンジョンが使えないとなると、他に稼ぎ所が………」


「野にいるレッドオーダーを探すのは効率が悪いですからね。車が無いと厳しいでしょう」


「昔はウチにもあったみたいだけど………、流石に車を新しく用意するのは無理だな」


「良かったら貸しましょうか? もちろんレンタル費用は安くしておきますよ」


「お前から借りると後が怖い」


「アハハハ、善意の申し出なのに、信用してくれないというのは悲しいですね」



 2人の会話ではこれ以上の進展がなさそうだ。

 ダンジョンをどうにかすることより、この狩場が使えなくなったらどうするかに話が進んでしまっている。


 当然、スラムのチームではどうしようもないのは分かる。

 しかし、俺の知りたい情報はそういったことではない。


 ただ聞いているだけでは必要な情報は得られない。

 ここは俺が口を挟んで切り込むしかないか。






「あの~、ちょっといい?」



 空気を読まないフリをして、二人の会話に割り込む俺。



「あ、ごめん。ヒロ、ほったらかしにして」


「大事な話をしているんです。割り込まないでくれますか」



 ジュードは振り返ってすまなそうな顔。

 しかし、アデットは会話を邪魔した俺に対し、

 びっくりするほど冷たい目を向けてくる。



 ジュードとの会話では優し気な笑みを浮かべていたが、今の俺に向ける表情は道端に落ちている石ころでも見ているかのように無味乾燥。

 どうやら興味の無いモノにはトコトン興味が無い人間なのだろう。



 アデットだったか……コイツ。

 俺には塩対応だな。

 とりあえずこっちも無視しておこう。



「ジュード、ダンジョンを元に戻すにはその増えた巣って奴をどうにかすればいいんじゃない?」



 気軽に思ったことを提案してみると、

 ジュードは面を食らったような顔を見せる。


 多分、『コイツ……何言っているんだ?』っと、思っていそう。



 それでも俺に対して真剣に答えてくれるのがジュードの良い所。



「ヒロ、説明したと思うけど、ダンジョンの踏破は誰も成功したことが無いんだ。確かにヒロの言うように、巣が増えたのなら、その巣を壊せば、問題は解決するだろうけど………、どう考えても僕達がどうこうできるような話じゃない」


「ジュードさん、チームに入れるにも、条件は絞った方が良いと思いますよ」



 皮肉気に嫌味を言ってくるアデット。

 俺に向ける目がすでに虫けらを見るようだ。



「アデット! ヒロは僕らのチームの希望なんだ。そんな言い方するな。それに、最近は僕よりも成果を上げているんだぞ」


「へえ、コイツがですか? ……いや、ジュードさんは嘘や誇張を言う人ではなかったですね」



 ジュードの俺を庇ったセリフを受けて、

 俺に向けるアデットの目の色の質が変わる。

 

 眼鏡の奥の藍色の瞳がこちらを射抜く。


 俺の正体を見抜こうとする冷たい目。

 まるで一切の感情を排した機械であるかのように。


 これは人を数値で判断する目だな。

 事実だけを客観的に分析し、能力だけで人を判断するタイプ。

 

 おそらく自分にも他人にも厳しい人間なのであろう。

 こういった人間がリーダーを張るグループは大抵ブラック化するから注意が必要。


 早急な成果を求めるなら必要な人材かもしれないが……… 



「ふむ。別に戦闘訓練を受けた様子もなく、肉体が鍛えられている訳でもない。しかし、ジュードさん以上の成果を上げて、チームトルネラの希望とまで呼ばれている。それに私を前にしても全く怯まない超然とした態度。なるほど……」



 俺を見つめるアデットの目が鋭さを増す。

 そして、全てを見透かしたというような表情で俺に向かって言い放つ。



「貴方は……感応士ですね」


「はあ? ………違う。何言っているんだ、お前?」



 ドヤ顔で宣ったアデットの決めつけを否定する俺。

 散々邪険されてきたこともあり、苛ついた態度で返事。



「む!」



 苦々し気に睨んでくるアデット。

 俺の無礼な態度にカチンときた様子。


 う~ん……

 コイツとは多分相性が良くないな。


 だいたい『感応士』ってなんだよ!

 勝手に俺を変な職業に認定すんな!



 今までのやり取りの中で、俺の好感度は最低辺。

 やや悪感情を滲ませた目でジロリと睨む。



 すると、アデットの方も機嫌を損ねたようで、

 鼻を一つ鳴らして、俺に対して口撃してくる。



「ふん。ではチームトルネラの希望とやらに聞きましょう。貴方はどうやってジュードさん以上の機械種を狩ったのですか? 戦闘訓練も受けていない、体も鍛えていない、気迫もない、顔も悪い、服のセンスもない、そして、感応士でもない貴方がどうやって?」


「誰の顔が悪いだとおおおお!! さり気なく悪口を混ぜるんじゃねえ!」


「おや、失礼。つい思っていたことが口に出てしまいましたね」


「この野郎………」



 アデットは涼しい顔で俺の異議を受け流す。

 俺を挑発するかのように、自分の眼鏡を中指でクイッと押し上げながら。


 それが妙に格好良く決まっていて余計に腹が立ってくる。


 ちょっとばかり顔がハンサムだからって、

 普通顔の俺を馬鹿にしやがって………


 何か言い返してやらないと俺の気が済まない。

 けれど、向こうは非の打ちどころが見えない完璧超人っぽい人間。

 よく知りもしない人間の弱みなんて分かるはずもなく………




 あ、待てよ。

 このアデットとかいう奴。

 俺の服のセンスがどうこう言っていた割に、

 本人が着ているコートは、中年おじさんが着るような古臭いコート。


 まだ二十歳前と思われるアデットには似合っていない。

 決してセンスが良いとは言えまい。

 

 ならば、コレを………

 


「俺の服のセンスをどうこう言う前に、お前もその古臭いコートをどうにかしろよ! 全然似合ってねえぞ!」



 そう俺が言い放った瞬間、



「………………」



 アデットは無言で俺へと鋭い目を向け、

 その瞳にギラリと危険な光を宿した。




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― 新着の感想 ―
………いや、でもこれヒロ悪くないですよね。客観的に見て先に口撃して喧嘩売ったのアデットですし、言い返されたら武力行使って完全に野蛮人では……?
すんごい思いっきり地雷踏んじゃった。 この後どうなるのやら
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