表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白兎と始めるアポカリプス世界冒険譚(闘神と仙術スキルを携えて)  作者: クラント


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/55

閑話 サラヤ2


 ヒロの狙いが何なのか、それ分からない。


 マテリアルを稼ぎたいのなら、こんな困窮したチームには入らないだろう。

 女が欲しいなら、私に手を出してこないのはおかしい。


 私がヒロの好みではないという可能性はあるけれど。

 でも、彼は私の身体に分かりやすく欲情しているようだし……



 他に目的があるとして、彼の狙いはどこにあるのか?


 ボスを狙っているのか、

 それともジュードやザイードのような人材か?

 もしかして、単にお人よしなだけなのか………



 それを確かめるにはボスに会わせるのが一番だ。


 前に不審な人がチームに入ってきた時は、そのタイミングで行動を起こして、チームから叩きだされている。


 ヒロもボスが狙いだとしたら、ボスに会わせれば必ず何らかの行動を取るだろう。

 そうでなくても、長年稼働してきた経験からボスの目は鋭く人の素性を見抜く。


 ヒロがどのような人間なのか?

 ボスならばきっと見抜いてくれるはず。



 早速、その為の準備に取り掛かる。

 あまりに不自然にボスに会うように仕向ければ、ヒロも怪しむかもしれない。

 だからいくつかのステップを経る必要がある。


 まず、次に大きな獲物を取ってきた時。

 前回のようなハイエナで無くても構わない。

 俵虫くらいではダメだが、挟み虫か鎧虫くらいでもオッケーとすべきだろう。


 あと、期待されているということをアピールする為に銃を渡しておこう。

 ただし、いきなり撃たれては敵わないので、撃てないように細工をしておいた物を使う。

 もちろん、ボスに会ってもおかしな行動を取らなければ後で解除するつもりだ。






 その日はすぐやってきた………というか、その次の日だった。


 その日はデップ達が鎧虫に挑んで負傷して大変だった。


 そんな中、ヒロはデップ達が狩れなかった鎧虫を差し出してくる。

 それも、デップ達に配慮して応接間に移動してからという気の使いっぷりで。



 私はヒロが鎧虫を差し出してくる手を見ていた。


 傷一つない綺麗な手。

 労働なんてしたことがなさそうな上流階級の人の手のよう。

 それが、スラムチームに入って3日目で結果を出してきている。


 一度目のハイエナは運が良かっただけなのかもしれないが、鎧虫を狩ってきたということは、それなりの実力があるということなのだろう。

 


 よし、ボスへ会わせてみよう。



 すぐに3階へ上がり、事前に伝えてあったカランへ合図を送る。



 そして、4階に上がってボスへ連絡。


 ボスには最初はスリープしていてもらい、部屋に入ってすぐに蒼石でブルーオーダーされる危険を取り除く。

 私達が4階にあがって部屋に入った所で、カランが追いかけてきて扉の前で待機してもらうようになっている。

 私達が部屋に入って、カランが追いついてくるまでのタイムラグを回避する為の策だ。



 ボスは源種である為、そう簡単にはブルーオーダーされないと思うけど、等級の高いものを使われてしまう可能性があるので、用心の上に用心を重ねた結果だ。


 もし、スリープを解除した後、会談中にボスに蒼石を使われようとしたら、まず私が盾になり、その間にカランに取り押さえてもらうことになっている。



 さあ、ヒロはどんな行動を取るのかな。

 できればこうした準備が無駄になってほしいけど。






 結果は全くのシロ。


 特に怪しい素振りを見せることなく会談は終了。


 あるとすれば、ヒロは機械種に興味があるようで、ボスに色々と質問をしていたくらいか。

 でも普通、従属させている機械種に、機械種の奪い方を直接聞くかなあ………



 ボスはあれこれと情報を与えていたが、それには巧妙に真実と嘘を織り交ぜている。

 どこでおかしいと思うか、どこをそのまま信じてしまうのか。

 その情報を精査することで人の素性がある程度分かるという。

 ボスの持つスキル「心理学」の応用らしい。



 しかも、ついた嘘が後になってバレても、いい訳ができるように真実の中にほんの少しだけ混ぜていく方法。

 しかし、後で診断結果を聞いたところ、想定していた出身が全て当てはまらないという結果に落ち着いた。

 結局、ヒロについては何も分からなかったのだ。




 いや、ただ一つ分かったことがある。それはヒロは非常に頭が良いということだった。

 彼はこの短期間でチームトルネラとボスの関係を見抜いていた。


 このチームトルネラは初代トルネラがスラムで虐げられる女性の為に作ったチーム。

 その為にボスのマスターは女性限定と最初に決められてしまっている。

 これができるのも最初のマスターに絶対の忠誠を抱き続ける源種だからこそできる仕組みだ。



 10年ほど前まではスラムの中の、弱者の為の避難所のような存在だったらしい。

 でも、度重なる襲撃や新たなチームの台頭でチームトルネラの力が削がれていき、今ではとてもスラムの弱者全てを救えるようなチームではなくなった。

 初代トルネラが居た時は対等に近かった関係を築いていたバーナー商会とも、いつの間にか力関係がはっきりとしてしまい、下部組織扱いとなってしまっている。



 私がこのチームにいる間に、初代の時程とは言わないけど、もう少し力関係を有利にしておきたい。

 その為にはもっと力をつける必要がある。

 バーナー商会も一目を置くくらいの力が。

 チームの女の子を無条件に娼館へ送り出さなくてもよくなるように。



 ジュードには一度この話をしたことがあるけど、私の身を心配して、この件については積極的な協力はしてくれない。

 下手をするとバーナー商会を敵に回すかもしれないから。



 ヒロはどうなんだろう。

 もし、協力してくれるなら私は………









 その後に現れたパルデアとのやり取りを見て、

ヒロの優秀なところがさらに際立った。


 バーナー商会で半人前とはいえ狩猟班につくパルデア相手に一歩も引かず、見事な交渉で争いを回避した。


 ここまでくると、ヒロの優秀さゆえに不信が出てくる。

 腕っぷしと度胸があり、頭も良い。

 そんな人物がなぜスラムにいるのだろうか?


 もちろん、このスラムにも魔弾の射手のアデットや、あのいけ好かないチームブルーワのリーダー、ブルーワのような知勇に優れた人物はいることにはいる。

 しかし、いずれもチームのリーダーをやっているし、それぞれにスラムに来ざるを得なかった理由が存在している。



 でも、なぜヒロがこのチームトルネラに所属したのかが分からない。


 ここのスラムチームに条件を絞っても、もっと待遇が良いチームはあるだろう。


 チームトルネラの待遇は決して良いとは言えない。

 女子にとっての待遇は悪くはないが、男子にとっては色々我慢ならないことも多いということも分かっている。


 これはいくら私やナルが頑張っても解消しきれない問題だ。



 このスラムでは力さえあれば、スラム内限定ではあるが、やりたい放題ができる。

 あの黒爪団のリーダー、黒爪のように。



 ヒロもいずれは良い待遇を求めて他のチームへ移籍するかもしれない。


 一つのチームに長く所属した者の移籍が歓迎されることはない。

 なぜなら、一度移籍したものは次もまた移籍するかもしれないからだ。

 それぞれチームには秘匿事項があり、それを他のチームに漏らされると困ってしまうのはお互い様。

 だから、チームの古参メンバーの移籍は極端に例が少なくなる。


 しかし、ヒロは所属して1週間も経っていない。

 移籍しても誰も咎めるものはいないだろう。


 だからこそ、何とかして引き留めておかなくてはならない。

 それには女の体を使うが一番なんだけれど。




「それが上手くいかないのよねえ」



 思わず独り言が零れた。


 私は好みではないのだろうか。

 もっと年上がいいのか、それとも年下がいいのか。


 年上ならマリエル姉さんがいる。

 今は出張中だけど、帰ってきたらお願いしてみよう。


 年下ならイマリ、ピアンテ、テルネがいるけれど………



 ちょっと若すぎるかな? まだ体が出来上がっていないだろうし。

 あと、2、3年は経たないと。


 私の初めてはそれくらいだった。

 相手は思い出したくもない。


 でも会わせるだけでもいいかもしれない。

 ヒロの興味がどこにあるのか分かるし。






 と思ったら暴走したピアンテがヒロに突撃して撃沈した。


 3階の大部屋で喚き立てるピアンテを見て、年下は対象外なのか、それとも単にピアンテが好みではなかったのかを考える。


 多分高飛車なピアンテとは合わなかったと思うのだけれど。

 できればイマリとテルネにも会ってもらって、その好みを判断したいところ。








 その次の日の朝早くにトールが私を訪ねてくる。


 最近の私は応接間で寝起きしていることが多い。

 事務作業が深夜までかかって、そのまま寝落ちしてしまうことが良くあるからだ。


 いつもはナルが起こしてきてくれるが、その日はトールのノックで目が覚めることになった。



 ヒロが男子の皆に自分が持っていたシティの食料を配ったという報告だった。


 トールの報告は私からすれば、正直どうでもいいことだったけど、トールはそうではないようで、ヒロの振る舞ったシティの食料の危険性について訴えてくる。

 


「あれは僕が今まで食べたことが無いくらいの美味しさだった。あれをヒロが定期的に配るようだったら、ヒロに依存するメンバーが出かねない」



 そんな大げさなとは思う。

 でも、真剣な表情のトールを見るとそうも言えなくなる。



 そもそも、チームに入る前に持っていた物をチーム内で配らないという内容のルールは、昔、チームトルネラに富裕層のお嬢様が入ってきたことがあって、下手に財産を持ったままチームに所属したことから、その財産を巡ってチームで内紛が起こりかけたことが原因で作られたらしい。


 このチームが女性の避難場所であった時の出来事だそうだ。


 今回はトールの顔を立てて、形だけでもヒロに注意しておくことにした。


 最初は、ちょっと不満そうにしていたヒロだけど、理由を説明していくと納得してくれた様子だった。



 良かった。



 ヒロがチームのルールを順守してくれることに安堵する。

 ここで従ってくれないようなら、いずれこのチームを出ていくのは確実だっただろう。


 最後にヒロが皆にフルーツブロックを振る舞えるくらいに稼ぐと意気込みを言ってくれた。


 それはどこまで彼の本心なのだろう。このチームにいつまで所属してくれるつもりなのか。

 その期間ができるだけ長くなるよう、私も頑張らないと。








 その日の夜、ヒロがラビットを狩ってきた。


 ここ3日間、ヒロに驚かされっぱなしだ。


 銃を渡したのだから、挑むかもしれないとは思っていたけれど………

 あんなに危険を訴えてたのに、草原に行くなんて……と袋から取り出されたラビットの頭を見てそう考えていたけれど……



 おかしい。どう見ても頭がねじ切られている。

 胴体の方も見てみるとそれは明らかだ。



 ディックが狩ってきたラビットを何体も見ている。


 通常は銃を使って機動力を奪い、近接武器でとどめを刺すのがセオリーらしい。


 その場合は当然、銃弾による弾痕で穴だらけになっていることが多い。

 前にジュードが狩ってきたラビットのように。


 でもディックは銃は牽制程度で、大きなハンマーで一撃で仕留めるのが、最も確実な方法だそうだ。

 当然、獲物の頭や胴体の一部が陥没していることになる。



 でも、ヒロから見せられたラビットはどうみても素手で頭をねじ切ったようにしか見えない。


 もちろん、銃で仕留めた後、時間をかけて頭をねじ切るのは可能だろうが、ねじ切られた跡以外に全く無傷だ、いや、頭の部分に手で押さえたような凹みがあるくらいか。



 考えられるのは、ヒロが機械種を使って狩りをしていることだ。


 他にも、人間の能力を上昇させるブーステッドや、義手の代わりに機械種の腕をつけているとかもあるが、ヒロを見るにそうした様子は全く見られない。



 ヒロに質問しても明確な答えは得られず、最も可能性の高い機械種を使っているかという問いに対しては、誤魔化されてしまった。


 これ以上の問いかけは無意味だと判断して、それ以上の追及を差し止める。

 

 私の中ではヒロは機械種を使っているのだろうと予想をつける。

 それを隠したいのは、その機械種を他に奪われないようにする為かもしれない。

 おそらく、その機械種は廃墟の辺りに待機させているのだろう。



 ボスに従属させている機械種を奪う方法を聞いていたのは、自分の機械種が奪われる危険性に怯えていたからなのかも………



 ヒロの人物像が私の中でストンと型にはまった。



 ヒロは頭が良いが、単独で機械種に挑める程の腕も度胸も無い。

 機械種を使っているからこそ、獲物を狩ることができる。

 さらに、機械種を使って狩りをしているということすら皆に話せないほど臆病になっている。

 それゆえの自己主張の少なさ。

 周囲の人が危険を顧みない狩りをしている中、自分だけが安全な位置で獲物を獲得して、それを隠している。

 その申し訳の無さが、彼の欲求を押しとどめているのか。



 頭が良くて、お人よしの臆病な人。



 おかしいと思っていた。

 ヒロからは強者から感じる自分の経験に打ち立てられた自信のようなものが感じられない。


 彼自身にはそれほどの戦闘力はなく、狩りの成果は、全て従属している機械種が狩ってきたものなのだろう。

 それを隠して、自分の力で狩ったようにみせているだけ。



 前にパルデアにいちゃもんつけられていた時に張り合っていたのは、精一杯の虚勢だったのか。

 殴られていたようにも見えたけど、あれはパルデアが手加減してくれていたかもしれない。



 頭が良くて、育ちが良くて、腕っぷしがあって、度胸もあって……

 そんな人物なかなかいるわけがない。

 


 それでも、機械種を従属させている者は貴重だ。

 スラムでも何人かいるが、それだけで他者をねじ伏せる力と、一定の尊敬を得ることができる。



 機械種を従属させている割には、機械種への知識が乏しいというのがちょっと気になるけれど。



 ヒロをこのチームに囲い込む必要があるのは変わらない。

 それに機械種を使っているのなら、ラビットに挑んでも危険性は少ないだろう。

 生身で挑んでいるなら、止めるべきだが、機械種を使っているならその必要はない。



 ヒロにはどんどん獲物を狩ってきてもらおう。

 それでチームは益々安全になっていく。



 そうだ、ヒロにはもっと獲物が入る袋を渡さなくては。

 そういえば、倉庫に初代トルネラが使っていたナップサックがあったはず。

 あれをヒロに渡そう。きっと袋いっぱいに獲物を狩ってきてくれるだろう。



 ヒロへの報酬はどうしよう?



 このまま貰いっぱなしは良くない。

 良い関係度を継続する為には、少しでも返しておかなくては。

 かといって、支払えるようなマテリアルや品物には余裕が無いし。

 私の体を報酬にするのが一番安上がりなのだけれど。



 もう一度アピールしてみようかな?



 精一杯感謝を伝えて、彼が要求を言い出しやすいようにしてみよう。

 そしたら、遠慮せずに求めてくれるかも。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ