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白兎と始めるアポカリプス世界冒険譚(闘神と仙術スキルを携えて)  作者: クラント


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15/25

15話 戦闘

 

 能力を使用しての検証については今日のところはこれくらいにする。

 もちろん課題は山積みだ。まだまだ検討したりないくらいだ。



 明日以降、再度この能力を使うことができるか。

 ⇒時間でリセットされない回数限定でないことを祈るばかりだ。


 何かを召喚する際に対価を消費しているか。

 ⇒こっそり、体力や寿命、運なんかが減っていないだろうか。


 いくつかの物品が2つ以上でないことについて、どのような条件になっているのか。

 ⇒基本的に1個限定が多かった。ヤク○トは10本出てきたが。



 これらについては明日以降検証したいと思う。


 さて、次に考えないといけないのは、この能力をどの程度までチーム「トルネラ」の為に使うかだ。


 この能力を使えば、チームの生活環境、特に食糧事情を大きく改善することができるだろう。

 しかし、当然、厄介事に巻き込まれるリスクも跳ね上がる。


 まあ、このチームに入ってまだ1日しか経っていない。

 正直、情もほとんど湧いておらず、そこまでの恩を感じている訳ではない。精々一宿一飯の恩といったところだ。


 この能力をチームの為に使えば最後、チームはこの能力に頼りきりとなってしまい、必然的に俺がチームの大黒柱的存在になってしまうだろう。


 その場合のメリットは、チーム内では俺が偉そうにできること。

 チーム内の女子を侍らせることくらいはできるな。


 デメリットは俺がチームから離れられなくなることと、もし能力バレした場合、間違いなく周りから襲われることになることか。



 うーん。

 デメリットを受け入れるほど、このチームに価値を感じないな。


 もし、サラヤがヒロインとして、俺に好意を持ってくれていれば、サラヤの為にある程度のリスクまでは許容できただろうし、俺がサラヤに惚れてしまっていたら、それこそ自分の力の全てを使ってチームに尽くしていたかもしれない。


 しかし、そのルートは俺の選択肢にはない。



 結論。能力を使ってのチームへの干渉は最小限にとどめる。

 ただし、俺への大きな利益になる場合はリスクを比較した上で検討する。



 よし決定。

 長かった検証作業と今後の方向性の検討がようやく一段落した。



 ふう、と息をつき、周りを見ると、すでに昼から夕方に近くなっており、辺りは薄暗くなり始めていた。



 あ、少しマズイな。

 サラヤにはもう一度虫取りをしてくるっていったのに、このままではボウズ(釣果無し)になってしまう。

 せっかく挟み虫を狩って上がった好感度が下がってしまうかもしれない。



「これくらいの明るさなら大丈夫か……」



 灯りが少ない街の外縁であれば、

 傷だらけの白兎も目立たないであろう。



「白兎! 虫取りに行くぞ!」


 パタッ!

『は-い!』






 勇んで街の外縁を探してみる。

 しかし、どれだけ歩き回っても一向に虫が見つからない。


 そういえば、あの3人、朝は虫が多いと言っていた。

 ということは昼以降は虫が少ないということか。



 白兎が一生懸命辺りの石をひっくり返しているが、

 未だ1機も見つけることができないでいる。



 しまったなあ。

 見つからないものはどうしようもない。



 いっそ夜を待ってみようかとも思うが、

 サラヤからは遅くならないようにって言われている。


 だけど、このまま成果無しでは終われない。

 せめて虫の1機くらいは狩っておかないと格好がつかない。



 捜索範囲を広げ、白兎と一緒に虫を探して歩き回る。

 それでも見つからないので、狩場から少し離れた草原まで足を伸ばす。




 パタパタ

『マスター。そろそろ帰らないと危ないよ』



 白兎がそう言いだしたのは、草原に入って20分くらい経った後。

 辺りは暗くなり始めており、流石にこれ以上出歩くの危険だと分かる。



「仕方ないか……」



 白兎の進言に、諦めて街に帰ることを決断。

 サラヤの関心を買うことは重要だが、命には代えられない。


 それに、昨日みたいに虫の大群に囲まれるのは御免。

 前回は何とか切り抜けられたが、そう何度も幸運が訪れるとは思えない。



「白兎、帰り道は分かるな?」


 フリッ!

『大丈夫! 僕についてきて』



 元々俺は方向音痴。

 この世界にナビマップはないから、迷ったら大変なことになる。


 けれども、俺には頼もしい相棒、白兎がいる。

 ロボットの記憶力を持ってすれば帰り道を覚えておくぐらい簡単。




 白兎に先導され元来た道を戻る。

 夜も近いことから速足で。


 ペース的に余裕で虫が出てくる前に戻ることはできるだろう。


 街に着いたら白兎をいつもの場所に隠して、

 サラヤへの言い訳を考えながら帰途につくだけ……




 ピコッ!

『マスター! 止まって!』


「な、なんだ?」



 突然、白兎が立ち止まり、俺を振り返って制止の声を上げた。



フルフル

『敵がいる!』


「敵?」



 白兎は警戒状態で前方の草むらを睨む。

 俺も習うように草むらへと視線を向ける。

 

 青々と茂る一面の草むら。

 草の丈は俺の腰くらいまである。

 あの草むらに潜んでいるとしたら、

 その体格は決して大きいモノではないはず………



 ガサッ



「あ、あれは………」



 思わず声が出る。

 草むら出てきたのは黒い物体。

 大きさは一抱え程度。

 全長にして50cmあるまい。

 四足で動き、頭には長い耳のようなアンテナ。

 それが何かを感知しているかのように左右に揺れている。


 見た目を無理やり当て嵌めれば耳の長いまるまる太った中型犬だろうか。

 しかし、その顔は禍々しいまでの狂相。

 一目でも見たら忘れられないようなインパクト。

 そして、俺がこの姿を目にしたのはおそらく2度目。



 あれは、昨日ジュードが倒したという機械種ラビット。

 白兎とは似ても似つかないが、同じ機種であるのは間違いない。




 思わず後ろに2,3歩後ずさる。


 その動きに反応するようにラビットがこちらを向いた。

 


 赤く光る目、愛らしさなど全くない敵意に満ちた顔つき。

 まるで小悪魔のような印象を受ける。口元から見えるのはそこだけ白く光る前歯。

 柳の葉のように尖っており、元祖迷宮RPGの首狩り兎を彷彿とさせる。



 ラビットから視線は反らさず、ジーパンの後ろポケットに差し込んでいたナイフにゆっくり手をやる。



 機械種ラビットがこちらへと近づいてくる。

 兎の癖に威圧感が凄い。

 おそらくボディの色が黒いということもあって、実物以上に大きく見えている。




 どうする?

 コイツは明らかに『虫』よりも格上。

 数は1機だけだが、白兎と同等の身体能力を持つのなら、決して油断できない相手。


 いつかは戦わないといけない敵だというのは分かっていたが、

 いきなり目の前に出てこられると心の準備が追いつかない。



 冷静に考えれば、俺には相棒の白兎がいる。

 白兎と俺の二人がかりなら戦力はこちらが確実に上。


 だが、実戦ともなるとそんな簡単な計算式で勝率は割り出せない。

 特に俺が戦いにおいては全くの素人となると、逆に足手纏いになってしまうことも考えられる。



 戦うか?

 それとも逃げるか?


 逃げると言っても、機械種ラビットの速度は侮れない。

 白兎は逃げ切れても、俺が逃げ切れるかどうか不明。


 戦うと言っても、俺の武装はナイフ1本。

 しかも、今回は壮絶な殺し合い。

 果たして今の俺は強敵を前に、一体どこまで戦えるのか………


 虫の大群に突っ込んだ時とは違う。

 あれはもう破れかぶれの特攻だった。

 幸運にも勝手に虫達が自爆して、たまたま空いた風穴を通り抜けることができただけ。


 挟み虫の時とは違う。

 あの時は最悪指で済むはずだったが、今回賭けるのは自分の命だ。


 『俺は命を賭ける』というセリフを漫画なんかでよく見るが、現実では本当に命の危機を感じている時にそんなことができる奴なんているわけがない。

 何せ文字通り命がかかっているのだから。

 


「ハア……、ハア……」



 何度大きく息を吸う。

 心臓の音がバクバク聞こえる。

 息苦しくなり、何度もつばを飲み込む。


 向かい合っての初めての戦闘に、

 体中が緊張で強張り、最初の一歩が踏み出せない。

 

 全く情けないったらありゃしない。

 自分より小さな敵相手にびびってしまっているなんて。


 だが、いつまでもこうやってにらみ合っているわけにはいかない。

 時間が遅くなれば、また虫達の大群に襲われかねない。


 けれども、足が動かない。

 闘神スキルがあるとはいえ、あの鋭い牙で噛みつかれたら穴が開くだろうし、爪で切られたら血が噴き出て肉が裂かれる。


 怖い。

 でも、戦わないといけない。

 だけど、未だに立ち向かう勇気が湧いてこない。



 そして、俺が恐怖に怯え、足を踏み出せない、そんな時、


 頼りになるのは、白くて丸くて可愛らしい……、

 仲間してから間もないのに、何度も俺を助けてくれた……




「は、白兎?」


 パタパタ



 俺とラビットの視線を断つように、白兎が俺の前に立った。


 その青く光る目は敵、ラビットを見据え、俺に背を向けながら耳をパタパタ。

 俺を守るべく、白兎は機械種ラビットへと立ち向かう姿勢を見せる。



「勝てるのか?」


 ピコピコ



 俺の問いに、白兎はただ短く耳を振って『任せて』と返事。

 敵、機械種ラビットの赤く光る目を真正面から見返している。

 


 夕闇迫る草原。

 冷たく乾いた風が通り抜ける中、

 白ウサギと黒のウサギが対峙する……



 奇しくも目の前の敵は白兎と同型機。

 見た目は全く異なるが、同型であるなら性能・仕様は同じ、若しくは、近しいであろう。


 性能が同じなら勝率は50%。

 どこまでできるか分からないが俺の援護が加算すれば、

 五分以上の戦いができるはず。



「前衛は任せたぞ、白兎!」



 俺が白兎へと指示を飛ばすと、

 それが切っ掛けとなり戦闘開始。



 ダダッ!

 ダダッ!



 地面を駆ける音が響き渡り、

 黒と白のウサギが激しくぶつかり合った。




 ガキンッ!!


 甲高い金属音が鳴る。


 白兎と敵の肩と肩がぶつかり合った模様。

 共に有効打は与えられず、一端互いに距離を取る。


 そして、向かい合い、相手の出方を伺うこと数秒、


 先に動いたのは敵、黒のラビット。

 消えたかと思うほどのスピードで猛ダッシュ。

 頭を低く下げた頭突きの体勢で突っ込む。


 白兎はじっくりと待ちの姿勢で迎え撃つ。

 カウンターを決めるべく、その脚を後ろへと下げて蹴りを放つ構え。



 ギュッ!!



 ラビットが白兎に到達する目前で急制動。

 クルンと機体を横に回転させての蹴りを放つ。


 この急変化攻撃にも白兎は即座に対応。

 反射的に身体を捻りながら、溜めていた蹴りをお見舞い。



 ガシャンッ!!!



 先ほどより数倍大きい音が響く。

 白兎と敵の後ろ脚での蹴りが交差。

 一瞬、火花が散ったかと思うくらいの激しい衝突。



 ガンッ! ガンッ! ガンッ!



 その後、両者の間で、噛みつき、前脚の爪、後ろ脚の蹴りが飛び交う。

 目まぐるしく動きながら、まるで剣劇のような打ち合いが始める。



 白兎の鼻先を掠めるように、ラビットの後ろ脚が振り抜かれたと思えば、

 白兎の爪がお返しとばかりに敵の背中を薄く傷つける。


 敵が牙を剥きだしに噛みつきを迫り、

 白兎は危ういながらもバックステップで回避。


 一瞬、後ろに下がった白兎は、すぐに前へと一歩踏み出しての頭突きを敢行。

 敵、ラビットの右肩を掠めて乾いた音が鳴った。



 凄まじい攻防。

 白兎もそうだが、敵、ラビットの動きも、完全に戦闘機械のソレ。


 機械なのだから当たり前なのかもしれないが、

 体系的に格闘戦を学んだとしか思えない技のキレ。


 もしかしたら機械種の頭脳と呼ばれるモノの中に、

 格闘技の知識がダウンロードされているのではないだろうか。


 特に白兎の動きは中国拳法のような体捌きにも見える。

 俺が名前を付けるとすれば『天兎流舞蹴術』(適当)とも言うべきか……




「く…………」




 白兎と敵、ラビットの戦いを前に、

 俺は歯を食いしばりながら見ているだけ。


 やや白兎が有利なようではあるが、少しでも助けにならないかと、

 ナイフを右手に持ち、隙を見て敵を攻撃しようかと思うも、



 あかん。

 あの速度についていけそうにない………



 数秒で諦めざるを得なかった。

 

 目で動きを追うことはできても、

 攻撃を命中させるのはほぼ不可能。


 なにせ、敵は素早く動き回っている上、的が小さすぎる。

 下手をすれば肉薄している白兎に当たってしまうかもしれない。

 

 

「白兎、がんばれ!」



 俺ができるのは声援を贈るぐらい。



「お前の『天兎流舞蹴術』を見せてやれ!」


 パタッ?

『え? 何ソレ?』



 俺の言葉に、白兎は一瞬困惑したように耳をパタッと動かし、

 


 フリフリッ!

『………分かった! 僕の『天兎流舞蹴術』の奥義をお見舞いするよ!』



 なぜか俺が適当に命名した武術をそのまま受け入れ、



 フルッ!

『あちょー!』



 後ろ脚で立ち上がり、本当に中国拳法のようなポーズで敵、ラビットを攻撃し始めた。



 滑るような足取りで近づき掌底。

 流れるような動きで肘打ち。

 クルンと腰を捻って回し蹴り。

 サッと敵の懐に入って背中から当たっていく体当たり。


 全てが計算されたお手本のような連続攻撃。

 これには堪らず敵、ラビットは後方へと吹っ飛ばされる。



 だが、これだけで白兎の攻撃は終わらない。


 吹っ飛ぶ敵をすぐさま追撃。

 宙に浮かせたまま、両前脚を拳のように握りしめ、

 目にも止まらぬ速さで連続パンチをお見舞い。



 ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコッ!!

『あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたっ!』




 拳(前脚)が分裂して見えるほどの突きの速さ。


 しかも、かなりの威力があるようで、

 みるみるうちに敵の機体がボコボコに凹んでいく。

 

 

 そして、


 ピコッ! 

『あたぁぁ!』



 最後の駄目押しとばかりの突き上げるような一撃を以って、

 敵の機体は見事に粉砕。


 ボロボロと崩れ去りながら、

 辺りに破片や部品を散らばらせることとなった。



 フルフル

『天兎流舞蹴術、【天兎百裂拳】………、お前はもう破壊されている』



 白兎は破壊された敵を前にポーズを取り、決め台詞を口にした。

 明らかに北斗的な伝承者っぽい人をイメージしたセリフ。



「それは見たらわかる」



 とりあえず、俺は白兎へとツッコミを入れる。

 もう原型を留めていないくらいにボロボロなのだ。

 残骸というより、鉄屑の集まりに近い。


 だが、厄介な敵を白兎が倒してくれたのは事実。

 頭の部分は無事なようだから、晶石だけ回収できれば良いだろう。



「ふう………、白兎。お疲れさん。見事な勝利だったな」


 パタッ!

『マスターの応援のおかげだよ。なんか新しい技を閃いちゃったもの』


「新しい技? それはさっきの……」



 白兎に慰労の言葉をかけると、返ってきたのは妙に気になる内容。

 詳しく聞こうと白兎へと足を進めようとした時、



 ピコッ!!


『マスター! 後ろ!』



 突然、白兎が大声(?)を叫び、



「へ?」



 俺は驚きながらも後ろを振り返ろうとすると、




 ガブッ!!




 誰かに後ろから右足を掴まれる感触。




「ぎゃあああああああ!!!」




 突然の不意打ちに俺は驚きの声を上げる。


 そして、掴まれた感触を感じる足元を見ると、

 黒い生き物が右足に噛みついていた。


 目の部分から漏れる赤い光が俺を睨みつけ、

 俺の右足に喰らいつきながらも笑っているのかのように見えた。



「だあああああああ!!!」



 思わず、反射的に右手を黒い生き物に力一杯振り下ろす。




 ゴスゥッ!!    ドスン!!




 聞こえてきたのは金属を断ち切ったかのような鈍い音と重い物が落ちた音。


 右足に加えられていた左右からの圧力がなくなり、何かが足元にゴトッと落ちる。



「え? な、何?」



 しばらく何が起こったのか分からず、

 呆然と立ち尽くす俺。



 パタパタッ!

『マスター、大丈夫?』



 慌てて白兎が駆けつけてきて、ようやく事態が飲み込めるようになった。



 俺の右足に噛みついてきた黒い生き物。

 もちろんそれは生き物ではなく機械種。

 じっと目を凝らしてよく見れば、それはどうやら犬型の機械種のように思える。


 ざっと見て体長は1.7m以上。

 中型の肉食獣並みの大きさ。

 それが全身金属で構成されたロボットなのであれば、

 一体どれほどの戦闘力を有するのか?



 しかし、今は無残にも首を断たれて転がっている。


 頭の部分は足元に、少し離れたところに胴体が。

 俺の右手の振り下ろしによって、首を一撃で跳ね飛ばしてしまったのだ。



「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」



 少しの間、大きく息を吸って深呼吸。

 体力的にというより、精神的な疲労を癒す為。

 


 フリフリ

『マスター………、ごめんね、気づくのが遅くて』



 白兎が俺の足元にピタリと寄り添い、

 申し訳なさそうに耳をフリフリ。



「…………いや、お前はあのラビットと死闘を演じていたんだ。気づかなくて当たり前。逆に俺が周りを見張ってないといけなかったのに………、全く、俺はマスター失格だな」


 パタパタッ!

『そんなことないよ! マスターは頑張ってくれているよ!』


「ハハハハ、ありがとう。ずっと白兎にそう思ってもらえるよう精進するさ」




 少しばかり白兎と会話を交わす。

 それだけで気持ちが落ち着いてくるから不思議。


 誰にも邪魔されない相棒とのやり取り。

 この異世界に来て、一番運が良かったことは、

 きっとこの白兎を仲間にできたことであろう。



 しばらくそうしているうちに、ふと、さっき足を噛まれていたことを思い出し、



「……あっ! 噛まれたところは大丈夫だろうか?」



 右足を確認するため、ジーパンの裾をめくり上げる。



「良かった! 怪我してない!」



 血が出ていないことを確認。

 痛みはなかったけど、目で確認出来て一安心。


 手で触ってみても特に傷ついている様子は見られない。

 さらに靴下もめくってみるも、痣一つできていなかった。



「………つーか、ジーパンも穴は開いていないみたいだし、この機械種、大きいのに、噛む力が全然無いのか?」



 特に被害が無いと分かって、安心したところで、

 改めて襲ってきた機械種を調べてみる。




 地面に落ちている頭部を靴の先で何度かつついて、

 反応がないことを確認してから拾い上げる。



 意外に軽いな。

 機械だが、全身鉄の塊という訳でもなさそうだ。

 そういえば、ジュードも兎を持ち上げていたし。



 両手で頭部を掴みながら、回転させて詳しく調べてみる。


 犬を凶暴化させたような顔つき、目からは光が消え、今はただのガラス玉だ。


 意外にも口からは鋭い牙のようなものは生えていない。磨り潰す臼歯のような歯が並んでいる。

 だから噛まれても怪我をしなかったのかもしれない。


 胴体の方も見てみる。体格は当然先ほどの兎よりも大きい。

 あんまり詳しくないがライオンくらいの大きさはありそうだ。


 黒い体と相まって、夜に襲いかかってきたら人間が気づくのは困難だろう。

 白兎が倒した機械種ラビットよりも強い機種なのは間違いない。




 ということは相対的に俺って結構強いのかもしれない。



 コイツの首を断ち切った右手を見る。


 普通金属に思い切り手を叩きつければ、骨折は免れないであろう。

 しかし、右手には全く怪我一つない。



 犬型機械種の頭部の切断面を見る。


 強い力で叩き切ったような跡が残っている。

 蹴りで岩を砕くことができるのだから、拳でもこれぐらいできてもおかしくないか。

 

 大木を殴りつけた時は、拳を痛めるのが怖かったから無意識に手加減していたのかもしれない。

 本気で殴れば一撃で大穴を開けることができただろう。

 



 素手で機械種を倒すことができる。

 それはこの世界ではどれくらいの強さのレベルなのか?


 少なくともスラムのチームではトップレベルであろう。

 俺TUEEEEできる日も近い! さすが「闘神」スキル!



 ……いやいや慢心は禁物だ!

 いくら呂布でも銃で撃たれれば死ぬ。

 それにちょっとしたトゲでも俺は傷つくんだ。

 刃物で刺されたら普通に死んでしまうぞ。


 いくら攻撃力が高くても、防御力がいささか頼りない状態だ。

 先ほどの犬型機械種だって、ジーパンの上から噛まれたから怪我がなかったが、服が無い部分を噛まれたら大怪我をしていたかもしれない。


 結局、地道に自分の能力を検証していくしかないか。





 さて、これからどうしよう。




 今、俺の手持ちにあるのは、

 白兎が倒した機械種ラビットが1機。

 そして、俺が今倒したばかりの犬型機械種。


 両方の残骸を持って帰れば、昨日のジュード以上の歓声が俺を迎えてくれるだろう。

 しかし、機械種ラビットの方がともかく、犬型機械種を持って帰ってしまうと、俺にコレを狩る程の実力があるとバレてしまう。


 ずっとチームでやっていくつもりならともかく、

 今のところはある程度常識が身に着いたらチームを離れて、

 サラヤが言っていた狩人とかになろうを思っている状態だ。


 でも、これだけ夜遅くなってしまったのだから何か成果は持って帰りたい。


 サラヤがっかりさせるのは嫌だしなあ。





 ………うーん。

 犬型機械種の頭だけ持って帰ろう。


 倒したとは言わず、拾ったことにしておくか。

 胴体と、機械種ラビットはどっかに隠しておこう。

 どうせ、一度に全部持って帰るのは無理なのだし。




 パーカーを脱いで、犬型機械種の頭部を包む。

 残りは白兎に草むらを掘り返しもらい、埋めておく。

 その上から目印の石を並べる。

 


 ふう、これで終了。

 さあ、急いで帰るか。

 でないとそろそろ虫が出てきそう。




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