第十一話「蒼穹の誓い」
1
それから、一年。
俺は必死に生きた。
竜騎士を育て、王国を守り、シェリルと共に——
そして、気づいた。
体調不良がない。
異世界適応不全の症状が、出ていない。
「なぜだ......?」
エリスが調査した結果——
「303との共鳴、だと思う」
「共鳴......?」
「あなたは303と、深く繋がっている。機械だった303が竜になり、あなたと一体化——それが、あなたの体を守っているのかもしれない」
「つまり、303がいる限り——」
「生き続けられる。多分」
多分——だが、希望だ。
「303......お前のおかげか」
竜が嬉しそうに鳴く。
2
ある日、『世界の果て』から使者が来た。
「ローゼンベルクの部下たちです」
20人の元魔族パイロット。
「我々は——帰れませんでした」
「なぜ?」
「時空の歪みは——消えていました」
「......」
「だから——この世界で、生きていきます」
彼らは跪く。
「罪を償いながら」
俺は彼らを立たせる。
「来い。共に、この世界を守ろう」
「......ありがとうございます」
こうして、元敵も——仲間になった。
3
数年後。
王都には、異世界パイロットの記念碑が建っていた。
ゴースト、ローゼンベルク、タイガ——
そして、名もなき転移者たちの名が刻まれている。
「彼らが、道を作ってくれた」
俺はシェリルの手を握る。
彼女は妊娠していた。
俺たちの子供——
「この子に、何て名前をつける?」
「ソラ——空、がいい」
「いい名前ね」
俺たちは空を見上げる。
青い空。
守るべき、美しい空。
「303」
竜が近づいてくる。
今では、王国の守護竜として尊敬されている。
「これからも、よろしく頼む」
竜は力強く鳴いた。
4
その日、新しい転移者が来た。
若い男性パイロット——F-2に乗っていた。
「助けてください......!」
「落ち着け。ここは安全だ」
俺は彼を迎える。
「君は......航空自衛隊?」
「そうです!こんな所に日本人が......!」
「ああ、いる。そして——」
俺は王都を指差す。
「君の新しい居場所も、ある」
「......」
「怖いだろう。不安だろう。でも——」
俺は微笑む。
「俺たちがいる。大丈夫だ」
彼は泣き出した。
俺も、最初はそうだった。
だが、今は——
仲間がいる。
家族がいる。
守るべきものがある。
エピローグ
10年後。
俺とシェリルの息子——ソラは、10歳になった。
彼は竜騎士を目指している。
「父さん、教えて!空戦戦術!」
「おう、いいぞ」
俺は息子に、空の戦い方を教える。
かつて、アグレス隊員として教えたように——
王国の空には、今日も竜が飛んでいる。
元F-15、元F-2、元Me262——
すべて、異世界からの転移機。
だが、今では——
この世界の守護者だ。
「父さん、僕も強くなる!」
「ああ、なれる。お前は——俺の息子だからな」
そして——
303が空を舞う。
あの日、墜落した戦闘機は——
今では、伝説の竜として語り継がれている。
俺は、この世界で生きていく。
仲間たちの分まで——
そして、未来へ——
空を、守り続ける。
---
完
---
あとがき
異世界に来て、多くを失った。
故郷、仲間、日常——
だが、多くを得た。
新しい仲間、家族、そして——生きる意味。
ローゼンベルクが言った。
「この空は、美しい」
本当にそうだ。
だから、守る。
最期まで——
この蒼穹を。
珍しく最終話になりました




