表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/34

15.2024年のマリア3

すみません。切りどころを間違ってすごく短くなりました。

今回連続投稿します。1/2

「おはようございます」

 翌朝マリアはサイの家に訪れた。昨日と同じ部屋で同じように座る。キリエはまだ寝ているらしい。

「あの……昨日は『記憶を消去する』と言いましたが、今回それは行いません」

「え……?」

「キリエさんは覚えたままの状態でも回復できると判断いたしました。……昨日サイさん、おっしゃいましたよね? 『妻に会ってから変わった』と。キリエさんは貴方たちに愛されています。御両親である貴方たちが支えているのなら、キリエさんは回復していくでしょう。余計なケアは返って負担になります。私ができるのは夢をみせることだけです」

「夢……ですか?」

 母親のキミコは不思議そうだ。

「はい。希望、と似ているかもしれません」

「希望……」

 父親のサイは口の中で響きを確かめるようにつぶやいた。

「そうです。では、さっそくとりかかります」

 マリアはキリエの部屋に行った。

 キリエのアダマスにマシンからコードを接続する。まずは昨日かけた『仮封印』を解除する。キリエの表情が少しずつ辛そうなものに変わっていく。マリアは昨日作った『夢』をキリエに送り始めた。キリエの両親との楽しい想い出を思い出させる『夢』。ゆっくりとキリエの表情が優しくなっていった。マリアはほっとした。

 もちろんこれですべてが解決したわけではない。何年も時間をかけて徐々に回復していくのだ。そのためのきっかけを与えただけにすぎない。

「効果が見られます。続けていきましょう。私はしばらく毎日来ます。あなた方の愛があれば、ゆっくりとですが回復します。もしもなにかありましたらすぐに連絡下さい」

 『ブラウン・マリア』の連絡先を書いたメモをキミコに渡す。

 マリアの対処法に不満そうだったサイも、キリエの表情を見てほっとしたようだ。そんなサイにマリアは静かに言った。

「サイさん……。あなたの二つ目の依頼、引き受けました。今回のような事件を無くすよう全力を尽くします」

「あ、ありがとうございます」

 深々と頭を下げるサイ。

(御礼を言わなくてはいけないのは私だわ。私の気づかなかったことを気づかせてくれてありがとう)

 マリアはただ微笑むと自分の部屋に戻った。

(私が『ブラウン・マリア』としてできることはもっとあるはずよ! 今までデータの収集に重点を置きすぎていたのかもしれないわ。サイの方が大人になっているなんて……考えなきゃ。私はなにができる? 私はなにがやれるの?)

「もしかして……ミスズはこのために私を『外』に出したの?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ