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消えたカラアゲの行方  作者: みりん
新しい『いばしょ』
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ぐぅ


 私の衰弱への対抗策が油という何とも言えないことが分かってから1週間が過ぎた。

私はあの恐怖の脂と戦いつつ、少しずつ体力を増やしている。

7日という短い間にも、モニアとフルゥは新なメニューを色々と考えてくれている。


 この世界でも料理に油を使うようだが、この国では一般的に液体油ではなく、すき焼きで使う牛脂のような獣の脂身を鍋などに塗っているらしかった。

液体油は大量調理施設――例えば食堂やレストランなど――で使われていて、一度に大量の油を鍋に敷かなければならないときに使うらしい。


 話を聞いて、油というものは一般的に鍋に塗るものとして使われているということはわかった。

この国以外ではどうしているのか分からないし、この村は田舎過ぎて街の食文化もわからないが、私たちが毎日食べている食事は街中のものと同じか、それより高い水準のもののはずだ。

それでも油の利用法がそれしかないところから考えても、世界的にもあまり油を料理に使わないと思われる。

そんな状態で一体どうやってあんなに美味しい料理を作っているのかさっぱりわからないが。


私たちの食事の水準が高いと言い切れるのはお母様とメイドさんの存在があるからだ。

そもそもお母様は色々怪しい香りがする。

村の中でも飛び抜けて言葉遣いが丁寧で、狩りや採集をしている様子は見たことがないが普段の動作もひとつひとつが繊細で美しさがあって無駄がない。

モニアとフルゥは正真正銘のメイドだろう。

礼儀作法もお母様に負けない位で、纏う空気もちがう。

料理の繊細さも学んでいなければ出来ないと感じるほどだ。



 そんな感じで食文化と我が家の謎にすこし触れたりしながら私は元気に生きていくための料理を考えている。

最近食卓には肉料理が並ぶ頻度が増えた。

市場で買ってきたりするわけではないから食費の心配はないが、お母様が狩りに出掛ける頻度が高くなり、更に普段はあまり行かないお父様まで行っていたりして正直心配だ。

普段の村の人たちと行く狩りだけでなく、私のための獲物を狩りに行っている。

本来なら獣を一頭狩れば数日は狩る必要がなくなるはずだが、私が色々な種類の肉を食べ比べられるように違う獣を探しに狩りに行っているのだ。

お母様の場合、纏う気配から考えて技術的にも能力的にも問題ないと思うが、二人とも疲れて体調を崩したり怪我をしてしまうかもしれない。


だからといって、私が止めることなどできない。

止めてしまえば衰弱への一直線を辿るのが運命みたいなものだし、それを食い止めるためにしてくれていることなのだから。

私はただでさえ食が細く一度に食べられる量も少ない。

だからこそより効果のある食材や料理法を見つけるために試行錯誤してくれている。


感謝こそすれ、止めることなぞできない。




 ただ、負担を軽減することが出来ないわけではない。

長々とこの世界の油文化を語ったのにも訳があるのだ。


油や肉の使い方を多様にする。


それは前世の記憶を持つ私だからこそ出来ること。

高度な料理の知識やこの世界の肉や油の知識が無くても、家庭料理を知っていれば伝えることができる。

それにモニアとフルゥに伝われば、後はハイスペックな二人が素晴らしく美味しくしてくれるだろう。




 というわけで、アルフィの世界を越えた料理教室~!


「ぃぇーぃ!」


……とか直ぐに出来るわけがないので、まず料理のことを思い出してみることにする。


 油を使うと言えば、炒めものや揚げ物がある。

普段の食事に出てくるものとしては、炒めものだ。

ならば提案すべきは揚げ物だろう。

たっぷりの油でしっかり揚げれば吸った分の油も摂取できるし、素揚げだけでなく、唐揚げのように衣もつければ吸油率もアップする…かもしれない。

正直あまり詳しくないからなんとも言えないが。

それに揚げ物なら、同じ食材で私のものだけ揚げるということも可能になる。

私は油がないと生きていけなくても、皆は摂取し過ぎたら病気になってしまう。

同じ材料でひとり分を分けて料理ができるのは結構重要だろう。


そんな感じに利点も沢山だ。

掃除が大変なのが難点だが。


あと不安なのは、個人的に前世では天ぷらと相性が悪かったようで、好きだったのによくお腹を壊していたことだ。

…今世でお腹を壊すのは致命的。

様子を見ながら食べるしかなさそう。



 揚げ物…考えてみると、大抵の食材は揚げても問題ないし、失敗も少ないと思う。

野菜も肉も関係ない。

きっと最適だ!



 じゅるり…


 思い出すだけで食欲が湧いてくる。


ぱっと思い浮かんだのはさつまいもの天ぷら。

私の大好物だった。

あの、ホクホクのお芋がサクサクの衣に包まれて、甘味と香りがぎゅっと凝縮された奇跡の揚げ物……。

おうどん屋さんでは、必ずと言っていいほど付け合わせとして選んでいた。

そのまま食べても、お汁に浸しても美味しい…。


「あぁ…たべたいです…」


よだれがやばい。

か、顔がにやける!

私の可愛い顔が!


ん、ごほんっ!


取り乱してしまった。

っていうか、さつまいもの天ぷらは天ぷらだ。

お腹を壊すかもしれないと思い出したばかりなのに…。

いや、あれはお腹を壊したことがないからいけるかもしれない。

よく考えてみれば、私がお腹を壊していたのは殆どがえびの天ぷらだった。


さつまいもはえびではない。

さつまいもだ。

きっと大丈夫。


私は諦めない。




 冗談は(冗談ではないけど)置いておいて、天ぷら以外の揚げ物を考えなければ前に進めない。


私が聞いたことのある揚げ物は、素揚げ、唐揚げ、竜田揚げ、揚げ茄子、エビフライ、コロッケ、ドーナツ、かしわ、、さつま揚げ、釜揚げ………あれ?何か違うのが混ざった気がする。


指折り数えると以外に少ない。

私の前世の料理のレパートリーがばれてしまう。

まあ、それは仕方ない。

それに名前を知らないだけで色んな揚げ物を食べてきた筈だ。


……と、そんな感じなのだが、如何せん違いがいまいち分からない。


素揚げはそのまま揚げるものだったはずだ。

唐揚げは…衣をつける。

片栗粉に卵?

パン粉は…フライ?

フライと揚げって一緒ではないのか?


悩みだしたらきりがない。

ここには日本の料理本や便利なネットなんてない。

料理をしっかりやってきたわけではない私には思い出す前に知識が足りない。

考えたら負けな気がしてきた。


「…かんがえずに、なんとなくで、つたえた、ほうが…ふぅ…はやいきが、します…」



 せっかくここまで考えたが、頭を使うだけでもしんどくなってきてしまった。

嘗て聞いた、頭を使うと痩せるとか言うのは本当かもしれない。



もうどうしようもなくなってきたので、私は誰かに起こされるまでふて寝することにした。



「ぐぅ…」

やっと揚げ物の気配が……

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