恩人との対面
「ついた」
久しぶりに来たこの町。
賑わっている桟橋。
「おお、七色の魔女じゃないか」
そう言って声をかけてくれた男はどこか見覚えのある顔。
「えーっと……」
「マーブルだよ!ほら、思い出爺さんと一緒にいた」
ああ、願いが思いつかなかった人か!
「お久しぶりね。」
「おお、本当にな。で、魔女さんは一体どうしたんだい?」
「フィリッフお爺さんに会いに来たのだけど……」
そう言って辺りを見回すがそれらしき人物はいない。
「ああ、爺さんなら今孤児院に行ってるよ」
「孤児院?」
「魔女さんがくれた薬、覚えてっか?」
確か、お爺さんにあげたのは孫の病気を治す薬、腰痛を治す薬、目を良くする薬、若返りの薬。
それぞれをマーブルに伝える。
「そう、それだよ」
「お孫さんは良くなったの?」
「バッチリさ、爺さんも腰痛と目も治って元気に過ごしてる」
「良かった。でもそれがどうして孤児院と繋がるの?」
全く話が別問題。
「ああ、実はな――」
そう言って話してくれたマーブルの話はこうだ。
幾つかの薬をもらったお爺さんはまず、自分で薬を飲み腰痛と目が良くなったのを確認した。
その後すぐに孫に薬をあげると、けろりと治った。
それに大喜びをしたあと、何かを思いついたかのようにすぐ旅路の準備を始めたと言う。
お爺さんの向かった先は西の王都。
西の王都には病に臥せた王様がいる。
その王様を治すために若返りの薬を持って旅立ったと言う。
王様の病気は先天的なものではなかったらしく、若返って健康な体を手に入れた。
謝礼として莫大な富を得たお爺さんは各孤児院へ寄付をした……らしい。
「つまり、その様子見として今は孤児院にいるのね?」
「そうさ、老い先短い自分がお金をもらっても仕方がない。ってさ。もったいねーな」
そう言って手を頭に乗せて悔しがる動作をする。
「なにがもったいないって?」
そう言ってマーブルの後ろから声をかけたのは……。
「爺さん!!」
フィリッフお爺さんだ。
「やあ、久しぶりだね。七色の魔女さん。」
にこやかに挨拶をしてくれる。
「ええ、お久しぶりです。なんでも王様を治されたとか?」
「ああ、マーブルにきいたんだね。その通りさ。
西の王様は病に流行病に倒れたと聞いてね。治せるものがいるのなら報奨金を出すときいていたんだよ。
お嬢さんには申し訳ないが、くれた薬は王様にあげたよ。
彼は人の上に立ち、これからも皆を先導するべき立場だ。あの薬は私よりも彼にあげた方が良いと思ってね」
「あの薬は貴方がもらったものだから、好きにするといいわ」
そう言ってにこりと笑う。
「おや、お嬢さん。良い顔で笑うようになりましたね」
「ええ、お陰さまで。」
「それに頼もしい中も出来たようだね」
そう言って肩に座るチリルに微笑む。
「見えるんですか?」
基本、人間には妖精が見えない。
海に住む生き物に海の妖精は見えても、陸にいる妖精は見えない。
陸に住む生き物は海の妖精が見えない。
なんか定義があいまいなんだけど、自分に近いものが見えるんだってきいた。
人間は雑多なものを取りこんだりしてるから見えないって。
極々稀に気配を感じれる人がいるくらいらしい。
「いいや、見えないよ。ただ、そこにいる気がしただけさ」
なんの話か分かららず首を捻っているマーブルを見て、私とお爺さんは顔を合わせて笑った。
「さて、お嬢さんはいつまでこちらに?」
「次の新月が来るまでは。」
「そうかい、次の新月は確か3日後だったかな?」
「ええ」
「そうかい、ゆっくり楽しんで行っておくれ」
そう言ってゆっくり立ちあがり、孫とあいすくりーむを食べに行く約束をしているんでね。といって去っていった。
「魔女さんよ、もし町中を歩くなら気を付けた方が良いぜ」
そういってマーブルがちらりとこちらを見る。
「魔女さんをずっと探してる女がいるって話だ」
「ああ、検討はつくわ。ありがとう。」
元々その女を見に来たのだ。
「その人、どんな感じ?」
血眼になって捜していたり、ずっと怒ってるなら無理難題を言われそうだから遠目で見るだけにしよう。
「ずっと塞ぎ込んでて一目見ても誰かわからないくらいに変貌しちまった……らしい」
「らしい?」
「ずっと部屋に籠ってて出てきた姿を全然みねえんだ。だから噂。見たって奴が言ってた話だ」
「そう……」
とりあえず最初は遠目から見る、しかないか。
「ありがとう、じゃあまた3日後に会えたら会いましょう」
そう言ってくるりと海へと潜りこむ。
「チリル、陸にあがったら美味しいものを食べましょう」
「うん。楽しみね」
そう言って3日後に何をするか2人で話し合いながら、海底のさらさらに砂に潜り眠る。
砂と海藻を使い小さな隠家のようにして眠ると気持ちが良い。




