声の矛盾
「ねえ、いいの?本当に」
ゆらゆらと泳ぎながらチリルにきく。
「いいの、私はルーサと一緒にいるって言ったでしょ?」
チリルは街に残ってもいいと言ったけれど、頑なに拒否されてしまった。
「それに、一緒に旅をする妖精だっているんだから。
あの街に拘る必要はないわ」
そう言ってひらひらと私の周りを飛び回る。
「そう……、チリルがいいならいいけれど」
正直、チリルがいるだけで全然違う。
人魚で身付きの私はそれなりに優遇はされるけれど、それよりも海の妖精の方がはるかに格上だ。
以前、市場で大勢の人を黙らせたこともあったし普段は入れない場所もチリルと一緒なら特別待遇でいれてもらえる。
そのおかげで変わった食材やお店に入れたりしたっけ。
「ねえ、そう言えば前にチリルに飴もらったでしょ?あれで私はチリルと話せるようになったじゃない?
けれど、市場だったりお店の中だったり他の人と喋れたのはどうして?」
そうだ、あまりにも自然に他の人と話をしているから気にもしなかった。
「ああ、あれはね一日に少しの間だけは飴を舐めていない人にも喋れるの」
「じゃあ、どうして私にも初めそうやって話さなかったの?」
確か初めはキィーキィーと声を出していて何を話しているのか分からなかったはず。
「通常の言葉で聞き取れれば、あなたに他の妖精がついているってわかるじゃない」
飴を舐めていれば聞き取れるから、諦めなければいけなかったんだもの。
そう教えてくれた。
「それに……、あの飴は信頼の証。2人の契約の証。話せるようになるのももちろんだけれど、それを食べただけで私たちからの信頼を得たのと同じなの。」
「あんな短時間でわかるの?」
「私たちは仮にも妖精よ。人を見る目くらいあるわ」
そういってくすくす笑う。
「そうね、裏切らないようにしなくっちゃね」
そう言いながら一緒に笑う。
「ねえ、ルーサ。それよりも、本当にいいの?それをつけていて」
チリルは私の耳を指差す。
「いいの。いつまでも親に頼ってちゃいけないでしょ?」
両耳につけているピアスは隠れピアス。
千里眼や遠視されるのを阻止する道具。
正直今回は助かったけれど、ちょこちょこ知らない間に見られているのは困る。
恥ずかしいしね。
だから、暇な時にクリオネのマルネルトがいる質屋に行ってきた。
「でも、すごいね。あの質屋。本当に店に入った瞬間ピアスが私の方にきたんだもん。
曖昧な気持ちでいったのに、的確なものが来てビックリしたよ」
監視って程じゃないけれど、やっぱり今回は迷惑をかけすぎた気がする。
別に絶縁とかそんなのしたわけじゃないから、会いたければ会いに行けばいいだけだし。
「さあて、これかだどうするの?」
「ん~?どうしよっか、チリル。」
「ルーサに任せるわ」
「そう?じゃあ、あたしフィリッフお爺さんの所に行きたいわ」
「フィリッフ?」
「うん、皆に思い出爺さんって呼ばれてるらしいんだけど。
私の恩人のような人。会ってもう一度お礼が言いたいと思って。
それから、様子の気になる人もいるし……」
「じゃあ、そこに行きましょう」
行く先を決めて私たちは海を泳ぐ。
ときには海藻をベッドにして眠り、髪の毛に卵を付けられて笑ったり
岩の隙間でくるまっていれば、ウツボと仲良くなったり。
イルカが背中に乗りなよ、と言ってくれてハイスピードで移動したり。
楽しい時間が過ぎていく。
今気付いたんですけど、チリルの声って飴を食べないと聞こえない設定でしたよね。
普通に喋ってるのに気付いて焦りました……(笑)




