↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/21

真昼の月

これは化物と僕の、ほんの一週間程の物語。

放課後。夕日の差し込む教室に、ひとりの少女の声が響いている。


「真昼の月を見たことがあるかしら。太陽が昇っている時でも、月は私達を見降ろしている。普段、それは目に見えないもの。否、見ようとしないだけなのかも知れないわね。」


物静かで優しい声。音の残響は耳に残ることなく、さながら花火のように一瞬の華夏焼きとともに消えていく。

 教室には、僕と彼女の二人きり。

 僕は自身の椅子に腰掛けて、彼女の声に耳を傾ける。作業用の音源という訳では無いが、彼女の声を聴いている時が僕にとって一番心が落ち着く時間だ。

 妓詠(こよみ)真(まこと)。僕の隣で話している女の子の名だ。

 私立青代高校の一年生であり、僕のクラスメイト。部活動には所属していないが、学業の成績は優良そのもの。おまけに人当たりも良い。透き通る様な白い肌に、艶やかな黒髪がよく似合う女の子だ。

 漫画や小説などでありがちな、お嬢様の様な女の子。僕含め、周囲の人間は皆そう思っていた。彼女を見る目が変わったのは、少しだけ前の事だった。


「今まで何とも思っていなかったけれど、一度味を覚えてしまってはダメね。病みつきになってしまいそう。」


妓詠はそう話しつつ、僕の首筋に手を伸ばす。

 彼女の細い指先が、僕の首をそっと触れる。少し伸びた爪が、優しく撫でる様にして首の付け根から喉元まで伝って行く。

 首筋に感じるくすぐったさと異物感に、思わずぞくりとしてしまう。相手が彼女でなければ、直ぐにでも振り払ってしまうだろう。


「さて、もう直ぐ日が暮れる。お喋りはこのくらいにして、早いところ済ませましょう。」


妓詠は、僕の耳元に顔を近づける。


「ふふ、貴方で良かったと、心から思っているのよ。それじゃあ……。」


 頂きます。


 そう言って、彼女は僕の首筋に噛み付いた。

 頭が痺れ、身体中の力が抜けていく感覚。意識が徐々に離れて、眠りに着く直前の様な心地良さの中、少し前の事を思い出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。