【第2話】団欒①
この物語は現実に存在する国や団体等と関わりがないことを断らせていただきます。
「おとーさんの作るご飯はおいしいね!」
「そう言って貰えると作り甲斐があって嬉しいわ。」
「俺も作れればいいんですけどね…。」
「徐々に慣れていけばいいんですよ。それに作れない訳ではないのですから大丈夫だと思いますよ。」
「ソラはお菓子作りが得意なんだしいいんじゃないか?レイリスもソラの作るお菓子が好きみたいだし。」
「ぼくも好きだよ。料理ができなくてもおかーさんのこと好きだよ。」
「■■■、ありがとう。」
「ソラ様ばかりずるいです。」
「おとーさんのことも好きだよ。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、お兄さんのことは?」
「えっと…好きだよ。」
「なんだい、そのはっきりしない答えは。」
「最初の印象が良くなかったんじゃないか。」
「俺はいつでも爽やか青年だぞ。」
「どの口が言ってるのか気になりますね。」
「おかーさんってお兄さんと話す時、話し方とか態度が変わってたりしない?」
「ヴィーチェと話してると向こうにいる親友を思い出すからかもしれないね。」
「確か、ソラ様のいた世界では『気の置けない仲』というのでしたよね?」
「そうだね。楓元気にしてるかな…。」
(おかーさんの顔が少し赤くなってる。かわいい。)
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「「「「ごちそうさまでした」」」」
「じゃあ、お皿片付けますよ。」
「いつもありがとうございます。」
「いえいえ、いつも美味しいご飯を作って頂いてますし、片付けぐらいはさしていただかないと。それに、魔法を使うだけですので、すぐ終わりますよ。」
「ぼくも手伝う。」
「ありがとう。そしたら、自分の分をしてもらえる?」
「うん!」
「微笑ましいな。」
「ええ、可愛らしいですよね。」
「できたよ!」
「ありがとう。そしたら、おかーさんにお皿を渡して、おかーさんが棚にお皿を戻したら片付け終わり。」
「うん!」
「じゃあ、■■■ご飯も食べ終わったことだし、遊ぶか?」
「何するの?」
「じゃ〜ん!チェスを持ってきたんだ。どうだ?」
「でも、誰もやり方分からないよ。」
「………なぁ、将棋って知ってるか?」
「うん、何となく。確か駒を動かして王将をとるんだよね、やり方は知らないけど。」
「将棋の仕方を知らない人でも、将棋の駒と盤を使って遊べる遊びがあるのは知ってるか?」
「うん、見たことあるよ。音を立てずにくずすやつでしょ。」
「それをチェスでやろう。ただ、そこに少しルールを加える。1つ目は、魔法の使用を可能にする。これで格段にやりやすくなるはずだ。2つ目は、先手が白の駒、後手が黒の駒をとったらポイントとする。3つ目は、音が鳴ったら分かるように結界を張る。音が鳴った時に視覚的にも聴覚的にも分かるやつにしておこう。4つ目は、黒か白どちらかの駒か分からないようにしておくこと。5つ目は、全ての駒がなくなったら終わりとすること。そして、手元にポイントとなる駒を多持っていた方の勝ちとする。因みに、駒は1ターンで1個まで取れるものとする。勿論音が鳴ったらターン終了。駒の数は時間短縮の為に今回は8個にしよう。」
「けっこう多いね。」
「やってみればそんなに多く感じないと思うから大丈夫だと思うぞ。ついでに、賭け要素を入れよう。俺が勝ったら■■■に俺の頼みを聞いてもらう。■■■が勝ったら俺に何でも1つ質問していい。俺が知り得る限り何でも答えよう。3回勝負で1回の勝負毎にこのルールを適用するものとしよう。」
「勝利ほうしゅうに大分差がある気がするんだけど…」
「無問題丁度君のニーズにはマッチしてるはずだよ。」
「…そういえば聞きたいことがあるんだった。」
「ふふん、どうだい?悪くない話だろう?」
「う〜ん、たしかに…。でも、何を要求されるか分からないからな〜。それに1回も勝てない可能性もあるでしょ?」
「安心してもらう為に言っておくけど、■■■にできることだし難しい話でもない。それに、最低1回は勝つ。」
「それならだいじょうぶかな。」
「じゃあ、やろうか?」
「俺の勝ちだな。」
「むむむ、さすがに大人気ないと思います。こんな事してるから、未だにひとり身なんですよ。」
「負けたからって僻むなよ。それに、独り身は余計だ。」
「ぼくが、駒をとろうとする度に音が鳴るようにするのはさすがにずるいよ!」
「ルールはルールだ。それに、ルールは破ってない。ちゃんと、駒も8個だっただろう?」
「むむむ…。」
「次はもうしないから…な!」
「…次やろ!次!」
「まぁ、そう焦るなって。先に俺の頼みを聞いて貰おうか。」
「何?…まさか体目的だったの!だからあんな必死に…けだもの!」
「ヴィーチェ!見損なったぞ!」
「ちっ、違いますよね、ヴィーチェ様。私達には到底辿り着けない様な崇高な考えの元での行動ですよね?!」
「おい待て!お前ら、誤解だ!誤解だから。■■■の体なんて見る気もないし、何ならまだ小さい頃に見たこともあるから。な!落ち着いてくれ!」
「1番落ち着くのはおjお兄さんですよ。(人のはだかを見て何が楽しいのやら…)」
「おい、そこ聞こえてるぞ。……まぁ、良い。俺の■■■への頼みというのは、これを貰って欲しいというものだ。」
「…これって、その首に付けてるネックレスみたいなもののこと?」
「あぁ、そうだ。嫌なら無理にとは言わない。ただ付けて貰えると助かる。俺が頼みたいのはこの選択をすることだ。」
「ヴィーチェ様、良いのですか?!それは、ヴィーチェ様のどうて…」
「レイリスさん!何を口走ろうとしているのですか!」
「?ですので、あれは以前ヴィーチェ様が『どうしても手放せないアイテム』と仰っていたものでしたので…。少しお名前が長く感じられまして、略称で呼ぼうかなと思い、それで『どうて…」
「わ、わ、わ分かりましたので、どうかその略し方はやめてください。(童貞なんて略称良い訳無いじゃないですか…)」
「ふむ、道程か…。案外悪くない略称かもしれないな、あながち間違ってはいないしな。」
「おい、ヴィーチェ■■■が童貞なんて言葉を覚えてしまったらどうするんだ!」
(どうていって何の話だろ…)
「あぁ、■■■、道程って言うのは過程と同じ意味だよ。」
「へぇ、そうなんだ。勝手に聞かないで欲しいなぁ。おじさん。」
「お兄さんは〜、子どもの悩みにはしんしに付き合うって決めてるから。ね?」
「へぇ〜、そうなんだ〜。」
「よし、話を戻そう。それでこれは貰ってくれるかい?もし貰ったとしてもデバフとかは無いし、危険なものっていう訳でもない。変わってる所と言えば、ただ石が光ってるってくらいだな。」
「…何でぼくに渡そうとしてるのか聞いても良い?だっておj…お兄さんにはメリット?がないでしょ?」
「えっ、■■■が付けたら可愛さが増すだろ?」
(えっ、何言ってんのこのおj…お兄さん)
「さて返事を聞かせて貰おうか。」
「………ありがたくいただきます。」
「そうかそうか。それは良かった。」
(わぁ、表情があじさいの花言葉のようで…)
続いて、2回戦目が始まった。今度は■■■が先手であった。今回、試しに■■■はヴィーチェの視覚を魔法で奪ってみた。ヴィーチェはそれを解かなかった。2回目のゲームが終わった。今回は、■■■の勝ちだった。因みに、駒の色が全て白で、お互いに駒を4個ずつ取って試合は終わった。ヴィーチェに目隠しは無意味なのだと身を持って感じた■■■は、諦めて普通に遊ぼうと思った。報酬ということで、質問をしようとした■■■だったが、ヴィーチェが3回戦目を先にしようと言った。有耶無耶にするつもりだろうか。
3回戦目に入った。結果は、■■■の勝ちであった。■■■が白の駒を3個黒の駒を1個、ヴィーチェが白の駒を2個黒の駒を2個という結果になった。ヴィーチェは微笑みを浮かべていた。
「では、お兄さん質問の時間です。」
「うん…。(嫌な感じがするけど気の所為かな)」
「ぼくの魔力をうながしたのってお兄さん?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言える。俺が■■■と初めて会った時にはもう魔力が綺麗に循環していたからそのことに関しては俺は無関係だな。ただ、当時の■■■は体内の魔力を持て余してた所為で外に魔力を気体として放出してたから、その余分な魔力を現在進行形で俺が利用してるって感じだな。■■■も魔法を使うようになったからもう辞めても良いかなって思ってるけど、どうする?」
「ヴィーチェ、初めて聞いたんだけど。」
「だって、その時ソラが居なかったからな。」
「…因みに1日当たりどれぐらいの魔力が余分にできてるんだ?」
「う〜ん、多分ソラ4人分じゃないか?レイリス1人分位だし。」
「私1人分と言いますと1万2000位ということですか?」
「そういうことになるな。」
「…やめておくね。このままお願いします。お兄さん。」
「そっか。分かった。」
「えっと…気を取り直して、次の質問するね。え〜っと、何だったけ?あっ!ぼくがうまれた場所ってどこ?」
「俺は君の母親じゃないからその質問はおかしなものだけど、質問の意図が分かるから誠実に答えよう。■■■の身体と精神はこの国で生まれて育てられた。君が持つその記憶は、他者のもので君自身のものでは無い。でも、その体も心も記憶も君のものであることに変わり無いから安心して。」
「?つまり、ぼくはおかーさんたちとはちがうってこと?」
「そうだよ。」
(■■■が日本出身じゃないとなるともしかしたら■■■が見る夢が魔法に影響してるのかもしれない…)
和気藹々とした雰囲気に憧れるお年頃