カドニ村到着
翌朝。朝早くその村を出発する。情勢が不安定な国だと、宿の支払いや補給に金や銀などが使われるが、レオン王国は至って安定している。王国通貨で支払いができた。
レーンを先頭に歩くこと数時間、ようやくカドニ村に到着したのは、お昼前のことだった。
カドニ村は人口1000人くらいの村だろうか。村では畑が耕され牛や豚、馬などが飼われていた。
村人から連絡があったのだろう、モニカの父、ラグトが出迎えてくれる。
「皆さん、ようこそカドニ村へ。依頼を出してから、随分早いご到着ですね」
「恐らく最短で来ましたからね。では早速ですが、先代の残した……その水晶球とやらを拝見したいのですが」
「村から出て少し行くと神殿があるのですが、例の水晶球はそこにあります。皆さん、まずは荷物を降ろしていかれては」
「そうですね、そうしましょう。……神殿とは?」
「『ロンリー・アッシュ』が形式上は宗教団体という話はご存じですかな? ここの村人も半分は信者です。そしてその、アッシュ関連の色々なものを展示・保管しておく場所が神殿です。今は立ち入り禁止にしておりますが」
「宿はありますか?」
「あります。かつてアッシュが滞在したという由緒正しい宿です」
「ではそこで荷を降ろしてから、その神殿とやらに向かいます」
ウェインの言葉に、モニカが言った。
「神殿までの案内は私がしますね」
レーンが言う。
「あと一休みしてからのほうがいいな。モニカが施した封印とやらが破れていれば、悪魔か何かとの戦闘は十分考えられる。できれば軽く昼寝でもしたほうがいい」
「昼食は?」
「帰ってきてからのほうがいいだろう。もし戦闘で重傷になった場合、食後だと死にやすいんだ」
ディアが言った。
「お風呂はどうする?」
ウェインは不思議がる。
「お風呂?」
「私たち、もう鼻が慣れちゃってるけど、今でも昨夜のお風呂での石鹸の残り香があるはず。それを落としたほうが風上に立った時にも敵に気づかれにくい」
「へぇ。スカウトはそこまでやるのか」
「戦場ではね。それで迷彩を兼ねて泥を顔とかに塗ったりするよ」
「ま、もし悪魔が相手なら、相手は匂いでは反応しないだろう。視覚や魔力に反応する悪魔がほとんどだ」
「じゃあそこまでする必要はない?」
「そう思う。それより悪魔の習性として、ヤツらは眠っているように動かない時は魔力を貯めて、それで自己分裂して増殖したり、他の悪魔を召喚したりして増える。その速度はまちまちだが、あんまりのんびりしていたくはないってのが俺の本音だな」
レーンがまとめた。
「まあモニカが封印してからざっくり一週間は経ってるんだ、今更少し急ぐよりは、旅路で疲れた体力の回復が優先だろう。そうだな……出発は二時間後にしよう。それまで各自で、休んだり装備を整えたりしてほしい」
宿は3部屋取れた。男二人と、ディア・モニカ組、エル・アヤナ組に分かれる。
考えたらモニカは実家に帰ってもいい気もするが、ともあれいつもの組み分けで部屋を取った。ウェインは余分な荷物を降ろし装備を点検すると、薦められた通り軽く昼寝をすることにした。だが、色々考えてしまいなかなか眠れない。
まあいいだろう。要は疲労さえ抜ければいいのだ。
お昼ご飯の後なら、結構すぐ寝られたろうに……ぼんやりそんなことを考えているうちに、ウトウトしてきた。
浅く、短く眠った。30分くらいだろうか。旅の疲れはもう吹き飛んでいた。




