秘蔵の写真
「ふーん、情報ね」
「なに? 含みがある言い方ー。そんな言い方するなら部屋片づけろーご飯食べさせろー」
「しょうがないわね。掃除って火炎放射器とか必要だったかしら」
「汚物は消毒!? 凶暴すぎるよー」
「……で、何が狙い?」
「とりあえず晩御飯狙うねー。めんどくさくて朝から何も食べてないんだよね」
「確かに雷門とミスマラドンナに勝ったとすればランキングは大きく跳ね上がる。でも、普段のあなたなら当然裏を取るはずよね」
「あ、やっぱり勝ってなかったんだ。やっぱりねー」
「わかってたのに順位を上げたの。……さては誰かに吹き込まれた?」
「ノーコメントー」
ぷいとサリユリが顔をそらした。
「……基本的にサリユリがランキングの主催者だってわかる人は少ないわ。私と上位ランク数人くらいね」
「私、秘密主義だからねー。というか、たんぽぽもよく私のこと見つけたよねー」
「つまり容疑者は数人ってこと。そうでしょ?」
「容疑者って大げさー」
サリユリはまだ余裕を保ったままだ。
さすがお姉さまの友達だけある。
全然、真意がつかめない。
「で、誰なの?」
「秘密だって」
「とっと吐けよ。オレだって気が長いほうじゃねぇんだ」
「困ったなー。依頼者の秘密は絶対なんだけどなー」
「いいから――」
オレの声と同時にドアが開く音が背後から聞こえた。
「おいこらぁ! ランキングを下げやがって!」
この声は――。
「雷門!」
振り向くとそこには怒った顔の雷門がいた。
「あー、また来たの?」
「ふざけんな! 俺は負けてねぇぞ!」
「でも、実質負けたようなもんだって聞いたけど」
「誰だ! んなこと言ったのは!」
「だから秘密だってしつこいなぁ」
「ランキングを元に戻すまでぜってぇここを動かねぇ!」
雷門が座り込んだ。
「落ち着いて。雷門。あなた、そんなにランキングにだわりなかったじゃない」
「ああん? ランキングってよりも負けたことが――って、たんぽぽじゃねぇか! それにえっと、誰だっけ?」
この間、会ったばかりなのに。
「ほんとに鳥頭ね。でも、それも面白いわね」
「へへ、だろ!?」
褒められてない。
「頑張れば自分の名前すら忘れられるぜ!」
それ若年性認知症ってレベルじゃ……。
「お姉さま、こいつもここを知ってんかよ」
「ええ、一応ランキング上位だからね」
「へぇー、意外と知ってるもんなんだな」
「あなたくらいよ。ランキングの上位でありながら全く知らなかったの」
そんなこと言われてもオレの周りでそんなこと言うやつは誰もいなかった。
「だからこそ、私が目を付けたんだけどね」
逆にランキングに固執してたら目を付けらなかったのか。
なんともいえない気持ちが胸中をよぎった。
「……そうだ。ねぇ、ランキング九位さん」
サリユリがオレに向き直った。
「名前で呼べよ」
「……この男を倒してくれたらなんで義則って人のランキング入りを取り消すわよ」
この男……もちろん、雷門のことか。
「それは……」
なぜか躊躇ってしまう。
義則のためにも答えは決まってるはずだ。
こうして迷っている間にも義則の身に危険が迫っている。
「本当か?」
「もちろん。嘘はつかないわよー。翼さん」
「待て待て! 勝手に決めてんじゃねぇぞ!」
「えぇー、不満なのー?」
「自分でやる喧嘩はいいが、他人が決める喧嘩は嫌だね! 俺は何物にも縛られない自由な男の中の男!」
「じゃあ、ランキングも気にしなくていいんじゃないのー?」
「それはそれ! これはこれ!」
男の中の男がお母さんみたいなこと言い出した。
「もしも、この子に勝ったらたんぽぽの秘蔵写真あげちゃうよ」




