デートの終わり
その場にいた全員が一斉に駆け寄る。
「あのマラドンナに勝つなんて」
「マジかよ! やるじゃねぇか」
「なんの武術を習ってんだ!?」
「い、いやー、たまたまでー」
「おい! 次は俺と戦おうぜ!」
「待て! 次は俺だ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて。あ、いや、触らないで! そこはらめぇ!」
義則がもみくちゃにされてる。
それをわたくしとお姉さまは眺める。
「思った以上の道化ぶりに満足よ」
「これがお姉さまの望みですか?」
「ええ、そうよ」
お姉さまは満足そうだ。
その態度に少しだけ腹が立ってしまった。
なんでわたくしじゃなくて、あいつがお姉さまに認められなくちゃいけないのか。
「お姉さまの望みがわかりません」
頬を膨らませた。
「あら、嫉妬しているの?」
「……悪いでしょうか?」
お姉さまがにこりと笑った。
「いいえ。かわいい子ね」
無造作に頭を撫でた。
それだけで天にも昇る気持ちになれた。
「お、お姉さま……」
頬が赤くなってお姉さまを見る目が潤む。
まるで恋のようだ。
「最初に言ったけど私はね。あなたに恋をさせたいの」
「は」
口がぽかんと開いた。
一瞬で気持ちが冷めていった。
わたくしはあの男なんかよりもお姉さま……あなたに……。
いや、その気持ちはまだはっきりとしないものだ。
「お姉さま。お言葉ですが、あいつと恋をさせるのはどうかと思います」
「あなたが好きなのは強い人でしょ。だから、私があれを強くさせればあなたはあれに恋をする」
「お、お姉さま、そ、それではそのためにあれとマラドンナを戦わせたのですか!?」
「まだ序章よ。私はあれをもっと強くさせるわ。後継者としてね」
「それはいくらなんでも」
「今回の戦いであれは確実に他の者に目をつけられたわ」
「また狙われるということですか?」
「可能性は高いでしょうね」
「わかってて戦わせたんですか?」
「だって、そのほうが面白いでしょ?」
お姉さまの酔狂もこまったものだ。
「あなたは不満そうね。ろくに戦えなかったものね」
「それは……はい。わたくしは戦うことだけが望みです」
「それは本当にあなたの望みかしらね」
もちろん。そのはずだ。
なのに、お姉さまは少しだけ悲しそうだ。
「ま、いいわ。私はあなたと翼に恋をさせる。どんな手段を使っても、ね」
「恐れながら、お姉さま、それに関してはわたくしよりも翼のほうが問題になります」
「性格は別でも同じ人間に恋するのだから問題ないじゃない」
「そこじゃありません」
「どういうこと?」
「それは――」
わたくしが言葉を紡ぐ前に、
「ちょ、ちょっと助けてくれよ!」
義則の悲鳴が届いた。
思わずわたくしとお姉さまは顔を見合わせた。
「今日のデートはここまでね」
「そう、ですね」
日が暮れる。
これからではどこにもいけないだろう。
「これからますます面白くなりそう」
それは予感か。それとも願望か。いずれにしてもわたくしにとっては面白い結末になるとは思えない。




