マラドンナ
「それでは少し楽しんでまいります」
制服のスカートの両端を優雅に摘まんで上げた。
「へ!?」
わたくしはまだ事態を把握していない義則を置いて男たちのもとに向かった。
「この中で一番強い方はどなたですか?」
わたくしの声に場が静まり返った。
やがて、一斉に笑い声があがった。
「お嬢ちゃん、ここは子供の遊び場じゃないよ」
「たまにいるんだよな。ランキングに影響されたやつが」
「ははは、あるある」
思ったとおり、わたくしを翼だと認識してないようだ。
顔は同じなのにどうして気づかないの。
しょうがない。力づくで認めてもらう。
「なら、誰でもいいからかかってきてください」
やれやれというような雰囲気が漂ってきた。
「だから、お嬢ちゃん」
筋骨隆々の男が無造作に手を伸ばしてきた。
わたくしはそれを華麗にかわして、
「ふん」
男の腹部に拳を突き入れた。
「うご、お、おま――」
白目を向いて男が呆気なく倒れた。
普通に戦えば女性の拳なんて効かないだろう。
油断していればこんなものだ。
「次は?」
場にいる男たちの目の色が変わった。
「や、やばいって! これマジでやばいって! 今なら俺が土下座すればなんとかなるから!」
わたくしの耳元で義則が必死に囁く。
邪魔だな。
「次はもっと強い人をお願いします」
わたくしの一言で男たちが詰め寄ってきた。
「今度は俺だ!」
「いや、俺だ!」
不意打ちとはいえ、今の攻撃でその場にいる全員に実力を示せたようだ。
「誰でも構いませんよ。なんでしたら全員一度にかかってきてもらってもいいですよ」
実をいえば全員を相手にするのは無理だ。
しかし、こういってしまえばプライドの高い男たちのことだ。
絶対に一度にかかってこないだろう。
「ざけんな!」
「女如きにそんな真似できるかよ!」
思った通りだ。
男なんて単純だ。
「舐めた真似してくれるじゃないの」
静かだが雰囲気のある声が響いた。
男たちをかき分けて現れたのは一人の男だった。
カリアゲ、金髪、ムキムキ、タンクトップ。
男らしさであふれた格好だが、なぜか唇に塗られたルージュの口紅が蠱惑的だ。
その迫力に場の雰囲気が飲み込まれた。
「ミ、ミスマラドンナ」
「お、お久しぶりです」
男たちが一斉に後ずさる。
見ただけでわかる。
かなりの強者だ。
「私が相手になってあげてもいいわよ」
「い、いや、でも、あんたほどの人がでることとは」
「あ、ああ、あんたが出るとちょっと警察沙汰になっちまう」
「あら、今度は大丈夫よ。ね、あなたはどう思う?」
マラドンナと呼ばれた男がわたくしに目配せしてきた。
「どう考えてもやばいって! だってオカマキャラって大体強いじゃん!」
義則が必死に袖を引っ張る。
当然無視。
「もちろん。手合わせお願いします」
わたくしの言葉にマラドンナが残酷な笑みを見せた。
「そうこなくちゃね。言っておくけど女性には容赦しないわよ」
互いに笑いあう。
笑顔の裏には明らかに殺気が込められていた。
「じゃあ、早速――」
マラドンナ言いかけたそのとき、
「ちょっと待った!」
義則が待ったをかけた。




