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デートの場所は


 気が付いたとき、目の前には幼馴染の男がいた。


 なんでこいつがここに?


 思い出す。


 ……なるほど。お姉さまの仕業か。


 わたくしは翼と違って翼が体験したことを思い出すことができる。


 わたくしはあのような臆病者とは違う。


「具合でも悪いのか? あっちに喫茶店があるからそこで休もうか?」


 馴れ馴れしく肩に手を置いてきた。


「触らないで」


 それをわたくしは払いのける。


「え!?」


「くだらない」


 こんな軟弱な男に興味はない。


 早く帰って――。


 途端に激しい殺気が背中に突き刺さった。


 振り返るとお姉さまが黙って見つめていた。


 ここでデートしなければ消される。


 直感的にそう感じ取ったわたくしは唾を飲み込んだ。


「ご、ごめんなさい。ちょっと調子が悪くて」


「わかるわかる。俺も寿冬なのにアイスばっかり頼んでたら調子悪くなってさぁ」


「それ腹壊しただけですよね」


 こんなやつとデートなんてお断りだ。


 ……そうだ。いいことを思いついた。


「あの、実はいってみたい場所があるんですけど」


「どこどこ? 遊園地? 水族館?」


「とっても静かな場所です」


 わざとらしく頬を染める。


「そ、それって?」


 ごくりと唾を飲み込んだ音が聞こえた。


「お寺です」


 ゴーンという鐘の音が聞こえたような気がした。


「なんで!? 始めてのデートでお寺? 釈迦かブッダみたいなチョイス!」


 そこで何かに思い至ったようにぽんと手を打つ。


「……もしかして恋愛成就の祈願に?」


「いえ、痴情のもつれで住職が刺されて殺された廃寺なのでそんな効果はないと思います」


「ますます意味がわからない!?」


 にこりと笑った。


「修行です」


「デートに修行ってドラゴンボールでもやらないんだけど!」


「修行デート。それが最先端の流行です」


「最先端っていうか、もう未来にしか存在しない流行のような」


「駄目でしょうか?」


 上目遣い。


 これをやれば。


 義則はきりっと顔を引き締めた。


「いいよ。可愛い子の頼みなら鼻からステーキだって食べちゃう!」


「せめてうどんとかパスタみたいに流し込めるタイプのものにしましょう」


「さすが女の子! 優しい!」


 我ながら別に優しいとは思えないが。


 だが、思ったとおりだ。


 この男は女の頼みであれば絶対にNOとはいえない。


「よかった。では行きましょう」


 笑って義則の手を掴んだ。


「お、俺の手を掴むなんて……ちょっと待って! 携帯で『もしかして 惚れてる?』で検索検索ゥ!」


 思い込みが激しいにもほどがある。


「よし、ネットのみんなが言うには俺に惚れてるでQ.E.Dだ! 絶対に君を守るよ! 誰にも傷つけさせないから!」


 がっしりとわたくしの手が掴まれた。


「いえ、別に惚れてるわけではありません」


 その手を振りほどく。


「え、マジで!? もう老後まで考えてたのに! 裏切ったね! くらえ! 乳を揉むためだけに生まれて死ぬ我が手のひらを!」


「生と死のハードルが低い」


 義則が泣きながら襲い掛かってきた。


 展開が速い。


「落ち着いてください」


 鳩尾を拳を突き入れた。


「うぐ! 人生の分岐点を間違えた」


 義則は膝をついたが、意外と元気そうだ。


 もっと強く殴ってもよかったかもしれない。


「とにかくお昼はお寺でデートしましょう」


「夜は墓場で運動会と同じようなフレーズ! まさかこれは偶然の一致じゃなくて」


「特に何もないですから。無駄に風呂敷を広げないでください」


 なんでこんなやつとデートなんて。



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