出会い
『よしっ!今日は森に探検に行こうぜ!』
まだ声変わりのしていない声で黒髪の少年が叫びながら走っていく。
『待って、フィル!』
その後を追うように綺麗な銀髪の少女が走っている。
『遅いぞラミィ、置いていっちまうぞ』
フィルは瞳をキラキラさせながら銀髪の少女ラミィを待つ。
『はぁ、はぁ。ご、ごめんね。ちょっと休憩しよう?』
ラミィは昔から身体が弱い。今となってはフィルと外で走り回る事もできるが数年前までは外にいる時間よりベッドの上で寝ている時間の方が多かったぐらいだ。歳はフィルよりも1つ年上で背も高いのだが、びっくりするほど細い身体つきをしている。
『仕方ないなぁ。とりあえずそこの木陰の岩で休むか。ラミィ、そこの川で水汲んできてやるから待ってろよ。』
フィルは笑顔でそう言って走り出した。ラミィは走っていくフィルの背中を見つめながら、フィルには聞こえない声で
『フィルは優しいよね。友達が少ない私をいつも連れ出してくれて。私と遊んでてそんなに楽しそうな顔をしてくれるのはフィルだけなんだから。そのくせいっつも私の体調に気遣ってる』
と呟く。フィルはいつもそうなのだ。自分が一番楽しんでいるように見えて一番周りを気にしている。大口を叩いて人を馬鹿にしても皆んなが嘘だと気付いている。そういう人なのだ。そんな風に考えていると
『おいっ!大丈夫か!おい!』
川の方からフィルの大きな声が響く。
『どうしたの?』
ラミィと先程落ち着いた呼吸をまた荒くしながら小走りでフィルの方に向かう。そこには自分達と同じくらいの金髪の子供が倒れていた。 フィルが体を揺するとその少年は
『うっ…』
っと小さい声を漏らす。それを見たフィルは
『村へ連れて行こう!』
と言い、2人は懸命に少年を担ぎながら自分達の村タルツへ急いで帰って行った。
自分達と同じくらいの重さの少年を抱えながら懸命に歩く2人はやっとの思いで村の端に着いた。そこに見える家が2人の家だ。2人の家といってもラミィの母マイアが1人で6人の面倒を見ている孤児院である。フィルは本当の親の顔を知らない。1番古い記憶はこの孤児院で暮らしている記憶である。どうして孤児なのか知りたいと思う事もあったが、マイアがその話題に触れない事や今の生活が楽しい事もあり、幼いながらこの話をするのはやめた方が良いと判断した。
やっとの思いで家まで辿り着いた2人は扉を開け
『マイアさん!この子が倒れてたんだ!助けてあげて!』
と叫んだ。すると奥からラミィと同じく銀髪の美しい女性が歩いてきて、少年を見つめ、少し驚いた顔をして
『この子は…どこで見つけたの?』
と恐ろしそうな顔で尋ねてきた。
『ママ、この子が森の川で倒れてる所をフィルが見つけたの』
それを聞いたマイアは驚いた表情を隠せないながらも、少し落ち着いて
『…分かったわ。そこのベッドに寝かせてあげて』
と言った。2人は急いで少年を寝かせる。マイアが少年の胸元に手を当てると暖かい緑の光が溢れ出す。フィルは前にマイアから教わった事を思い出す。これはマナを使った精霊術だ。この世界には目に見えない精霊がたくさんいると言われている。精霊にとってマナはエネルギーであるが、大地のマナは精霊に適した形をしていない。マナは人間が取りこみやすい形をしているのだ。精霊術とは、大地のマナを精霊が取り込みやすい形に変換する事で精霊の力を借りるものだ。今母さんが行なっているの精霊術の中でも治癒術と呼ばれるもので、細胞の再生を早める事で怪我を早く直す…らしい(正直よく分かってない)。他にも精霊術を応用してロウソクの火をつけたり、紙を切ったりする事もでき、それを仕事として行う者もいる。
2人が心配そうに見つめていると
『ラミィ、フィル、この子は私が面倒を見るから、安心して部屋の外で待ってなさい』
それを聞いた2人は安心して居間に入っていった。
2人が居間に戻り腰を落ち着かせるとフィルが興奮気味に話し出す。
『それにしても良かったな、ラミィ。あいつ大丈夫そうで。目が覚めたら俺が助けたんだぞって自慢してやる!で、その後の反応を…って聞いてるか?ラミィ?』
よく見るとラミィは椅子に座ったまま寝ていた。身体が弱いにも関わらず気を張って頑張り続けたせいだろう。安心したのと同時に張り詰めた糸がほどけるようにして眠ってしまったようだ。そんなラミィを見てフィルは
『そんな所で寝てても疲れ取れないだろ…かと言って起こすのも…よし、運ぶか』
そう言うとフィルはラミィをお姫様抱っこで隣の寝室に連れて行こうとした。担ぐと同時にスルッと何かが滑る音がした。何かと思って音のした方を向くと、なんとラミィの服の肩紐がズレ、胸が露わになりかけていた。それを見たフィルは顔を真っ赤にしてそっぽを向きながら
『み、み、み、見てないぃぃ!!し、しかも俺は悪くねぇ!』
と、慌てながら急いでラミィをベッドに寝かせた。ラミィをベッドに寝かせ、布団を被せた後、恥ずかしい思いを持ったままチラッと顔を覗くと、心なしかラミィの顔が紅くなっている気がした。少し体調が悪くなったのかも知れないと、一応見ておこう。と考えたフィルは、そのままベッドを背もたれに地べたに座った。さっきの事を思い出して恥ずかしい気持ちになりそうだったので、必死に今日あった他の出来事を思い返した。
『あいつ。どっから来たんだろ。あんなに綺麗な金色の髪初めて見たな…。綺麗さで言えば銀色だけどラミィやマイアさんぐらいだな。』
と、村の中では知らない人がおらず、一部の人からは貴族の末裔なんじゃないかとも噂されている2人の事を考える。
『貴族ねぇ。王都に行ったら貴族ってのにも会えるかな。んでその人達も銀の髪なのかなー。まぁもし貴族ならこんな小さな村で孤児院なんかせずに普通に王都で暮らすよな』
などと呟いているうちに、ラミィにつられるようにフィルもゆっくり眠りに落ちていった




