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異世界旅行を終わらせる為に頑張る男の冒険譚  作者: Latte


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1 急に現れた者

「ここはどこだ」


 一人の男が大草原のど真ん中でぽつりと呟いた。先程まで自室にいて扉を開けた瞬間知らない場所にいたなんてことはあるのだろうか。

 否、目の前の光景が現実を物語っている。


 空は眩しくて目を細めるほどに快晴、広い大地、そして男を囲むように数十体もの狼の姿をした魔獣がいる。


「はぁ……」


 彼――セスは小さくため息を溢した。セスは突然知らない場所に飛ばされる経験をすでに6回はしている。だからさほど動揺もしていなかった。

 ひとまず目の前にいる魔獣から片付けないと状況を判断することもままならない。手のひらで魔力が使えることを試し、指をクロスさせた瞬間背後から魔獣の悲鳴が聞こえた。

 後ろを振り向くと、黒い何かが視界を横切る。セスの背後はすでに数十体の魔物が倒された後だった。視線を元に戻すと最後の魔獣を斬った黒い服の男が立っていた。男はセスを睨めつけるかのように鋭い視線を投げた。


「おい、お偉いお貴族サンがこんなとこで何してんだ」

「何って……なにも?」


 微笑みながら素直に答えれば男は舌打ちをする。本当に貴族だった場合この男は処罰でもされそうな態度だ。


「助けて頂きありがとう。ところで……ここはどこだ?」

「はぁ?」


 男はセスを上から下までじっくりと眺める。セスもその男の容姿をじっと見つめる。自分よりも頭一個分以上大きい身長、体格の良さが伺える。手に持ってる大きな剣は重そうだが、さっき難なく振り回していたところを見るに見た目以上の筋肉量がありそうだ。


 男はセスが自分の剣に視線が落ちてるのをみて鞘にしまう。


「ここはアラスタン帝国近くの平原だ。冒険者、ってわけでもないんだろ?」

「冒険者……君も?」

「俺はソロのAランク冒険者だ」


 傭兵かと思っていたが冒険者だったようだ。確か3つぐらい前の世界で冒険者というものがあった。おそらくそれに酷似していると考えていいだろう。


「ソロ活動してるのか……」


 魔力で周りを探知してもこの男以外に近くに人はいない。表情から見ても噓はついてない。


「俺のことを知らないってことはよほど家から大事にされてた坊ちゃんか……記憶がない、いやこれも違うな。貴族……他国の王族か?」

「僕が王族に見えるのか」

「あぁ、いかにもって顔してるからな」


 今着てる服も相まっているのだろうか。白を基調にしたジャケットには装飾も施されていて肩にはペリースもつけている。確かに傍から見ればどこかのお偉い様だ。実際にお偉い立場ではあったが。


「残念ながら全部外れだ。君も僕のことを知らないなら確証は得た。この礼はまた今度いつかするよ」


 軽く頭を下げて去ろうとすれば男はセスに声をかけて引き止める。


「まだ何か?」

「王都は反対側だ」

「……そうか」


 男は何かを察したのかセスの顔を見ると小さくため息をつく。


「王都まで護衛してやろうか?」

「そうだな…金はこれで足りるか?」


 亜空間魔法で空中から金貨を1枚取り出すと男の表情が変わった。


「魔法使いか?」

「見たことないのか?」

「あるが…今の魔法は初めてだ。そもそも魔法使いが稀有な存在だからな」

「へぇ~……」


 セスがあまり興味ないとでも言いたげな表情をするから男は眉を顰める。


「お前、この国の人間じゃないな」

「お、やっと正解したな」

「お前なぁ……それにこの硬貨も見たことがない。使えないぞ」

「そうなのか、じゃあ宝石でもやるよ」

「いらねぇ」


 セスが亜空間から取り出そうとしたのを男は断る。


「報酬はいらない、お前の情報でいい」

「でも僕も君の情報が欲しいな」

「ちっ、わかったからついて来い。王都に向かいながら話してやる」


 男が歩き出し、セスも男の一歩後ろを歩く。男はセスがついてきていることを確認すると先に口を開いた。


「俺の名はギルバート。さっきも言ったように冒険者でAランク」

「僕はセス。ん〜、そうだな……今は無職だ。あと魔法使い」

「お前が無職?そんな成りして?」

「厳密に言えば職はあったが、今さっきなくなった」

「そうか」


 ふざけたような回答をしたのに男は素直に受け入れた。違和感。この男はどうしてセスに興味を持つのか。なぜ知らない硬貨に疑問を抱かなかったのか。

 一説の仮説にたどり着き、セスは素直に話してみることにした。


「ギルバートさんが信じるかは任せるけど僕の認識してる世界と違うみたいでね。アラスタン帝国なんてもの僕は知らない」

「……やはり降臨者だったか」

「降臨者?」

「異世界から来た異邦人のことだ。この世界じゃ数百年に一度かはあるらしい」


 数百年に一度、なんて曖昧だしこんな突拍子のない話を簡単に信じられるはずがない。なのにどうしてこの男はこんなにも簡単に異世界人だと認めたのだろうか。

 それはセスの存在を最初から知っていたとしか考えられない。

 ギルバートはセスの考えを読み取ったかのように、フッ、と笑うとセスの目を見る。


「お前は気づいてなかったかもしれないが、俺はお前が突然現れたのを目撃してるからな」

「あぁ……これは一本取られたな、最初からカマかけられてたとは」


 カマをかけられたというのにセスは満足そうな顔をする。久しぶりに察しの良くて頭の切れるいい人材に出会った。

 異世界早々、運が向いてるようだ。





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