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アエトス一族の姫~ヴェロニカの天敵~

夜、ヴェロニカが屋敷の外からでも聞こえる怒声を放ち、本人は今にも暴れそうな状態になっていた。

事情を聞くとヴェロニカが毛嫌いしている、自身の一族の直系筋の娘で「姫」と溺愛される吸血鬼が始祖の森にやって来ると言ってきた。

そのことでヴェロニカは発狂寸前になっており──




「ふざけるな馬鹿野郎! 私があの女が大嫌いなの知ってての嫌がらせか‼」

 夜、ヴェロニカさんの屋敷から怒声が響いてきた。

 私は慌てて屋敷に入ると、アレックスさん達が宥めていた。

「ど、どうしたんですか? ヴェロニカさん」

 ブラッドフルーツのスムージーを飲みながら言うと、ヴェロニカさんはげっそりした表情ではぁ、と息を吐き出した。

「……私の一族、アエトス家の直系の娘で、姫と呼ばれる女がこの土地に向かっていると手紙に書いてあるんだ」

「え゛」

 私は顔を引きつらせる。

「確か、ヴェロニカさんはお子さんの事で一族の方々との軋轢があってこっちに移住してきたんですよね」

「そうだ、そしてこいつ私にネチネチとそのことを言ってきやがってあ゛──‼」


 ガツン‼


「……あ、あの、大丈夫ですか?」

 テーブルはこの森の木で作られているから滅茶頑丈。

 しゅうう……と、煙まで出てる。

「いたい」

「デスヨネー」

 私はヴェロニカさんのおでこに塗り薬を塗る。

「しばらくは頭突きしちゃ駄目ですよ」

「分かっている、しかし。よりにもよって何で来るんだ⁈ 私は絶縁した気でいるから手紙なぞ出してないぞ⁈」

「それなら、レイドに聞けばいい」

「エンシェントドラゴン様?」

 クロウがやって来てそう言った。

「レイドさんに聞けば何か分かるんですか?」

「その通り」

 でも、クロウさん夜の都の吸血鬼じゃないらしいし、関係ないんじゃ?

 と、思って居た私。



「ん? ああ、知り合いの吸血鬼に現状報告の手紙を出していた。確か住んでいる場所の一つにアエトス一族が収める土地があったはずだ」

「お前かー‼」

 レイドさんの言葉に、ヴェロニカさんが襲いかかるのを皆で阻止。

「何があったんだ?」

「えっとですねぇ……」

 私は分かる範囲で説明した。


「それはすまない事をした」

「すまないで済むかー‼」

 ヴェロニカさんはまた絶叫し、暴れ出しそうなので皆が取り押さえた。

「……相当嫌っているようだな」

「ですね……」

「ところで、その人についてレイドさんは知ってますか?」

「多少な」

「どれ位?」

「直系の娘で溺愛されており、姫と周囲に呼ばれている」

「それはもうヴェロニカさんから聞きましたね」

「それ以上は知らない、すまないな」

「いいえぇ」

「まぁ、村の物に危害加えるようなら追い出せば良いだけだしな」

 クロウがさらりと言う。

 さすがエンシェントドラゴン様、吸血鬼なんて目じゃないぜ、って感じですか?

「で、いつ到着するんです」

「手紙からすると、もうそろそろだそうで……」

「え゛」

 ちょっとー手紙届けたコウモリさん、もう少し頑張ってよ!

「ヴェロニカさんを出すわけには行かないから、屋敷で大人しくさせておいて」

「はい、分かりました」

 アレックスさん達に任せて、私とクロウは森の入り口に向かう。



 ちょうど良く豪奢な馬の馬車がやって来た。

 騎士らしき鎧を身につけた方々が前に出て、扉を開ける。


「姫、始祖の森に着きました」


 うわーマジ姫呼ばわりだ。

 すると豪奢な白い貴族令嬢が着るような服に身を包んだ薄紅色の長い髪に、赤い目の女性が下りてきた。

 女性はふんわりと笑った。


「初めまして、愛し子様。エンシェントドラゴン様。私はエリザベート・アエトス。姫って呼ばれているわ」


 ハッキリ言おう、苦手だ、この人。

 いや、この吸血鬼。

 なんか分からんが、苦手だ。


 れっきとした王族のイザベラちゃんやマルス王子、ロラン君とはまるっきり違う。


 何なんだこの吸血鬼⁇


「どうかしました、愛し子様」

「おうわ⁈」

 いつの間にか近距離に居たため変な声が出た。

 思わずクロウの後ろに隠れる。

「よさぬか、吸血鬼の姫の一人よ。愛し子をからかうでない」

「だって、可愛い御方でしたから」

「此奴をからかって遊んで良いのは旦那の三人だ」

「あら、旦那様が三人もいらっしゃるの?」

「勘違いするなかれ、愛し子からではない、向こうから愛し子に三人を選べと言われて三人が断られたらこの地を去ると神の言葉を伝えた為、愛し子は受け入れたのだ」

「あらあら、まぁまぁ」

 頼むから楽しそうに私を見ないでくれないかな?

「愛し子様、お名前は?」

「え、あ、その……」

「梢。御坂梢だ」

「ミサカコズエ……極東の発言ですね、これは」

「分かったら要件をさっさと言え」

「ヴェロニカに会いに来たの」

「ヴェロニカはお前が来ると聞いて絶叫して暴れて皆に抑え付けられてるぞ」

「まぁ、そんなに? 私ヴェロニカの事好きなのだけれども」

「彼奴はお前のことを『大嫌い』と言って居たぞ」

「まぁ、悲しいわ」

「ヴェロニカ、分家の立場で姫にそのような言葉を」

「いいの、嫌われてるのは分かってるから」

「しかし……」

「いいの」

 騎士達をたしなめるようにエリザベートさんは言っている。

「ヴェロニカに会いたいの、駄目?」

「駄目だろう、ヴェロニカが拒否してるのだから」

 クロウがきっぱり言い切った。

「あ、あのークロウ?」

「どうした?」

「重しつけられたヴェロニカさんが怒気放ってこっちに来てるんだけど?」

「……」

 クロウは呆れた顔をした。

 ずしずしと歩いてやって来たヴェロニカさん、その表情は怒りに歪んでいた。


「エリザベート‼ 金輪際私に関わるなと都を出るとき言ったはずだぞ‼」

「ヴェロニカ! 貴様姫になんて言い方──」

「お黙り」

 エリザベートさん、騎士の方を黙らせた、拳で。

 騎士の方地面にめり込んでる。

 いいのこれ?

「言ったのは聞いたわ、でも私肯定してないもの」

「がー‼」

 ヴェロニカさん、もう言葉喋ってない。

 奇声上げてる。

 それを嬉しそうに見ているエリザベートさん、趣味わりぃ。


「趣味が悪いなお前は」

「あら、そうでしょうか」

「好いてる相手に毛嫌いされて、その上で奇声発するのを見るのが楽しいなどどうかしている」


 クロウズバッと言うな、本当。


「いくらエンシェントドラゴン様とは言え、姫に──」

「いいのよ、事実だもの。それよりも泊まらせてくださらない? ああ、家はヴェロニカの家じゃなくていいわ、レイド様の屋敷に泊まらせて貰いたいの一泊したら帰りますもの」

「できればヴェロニカさんの精神面の衛生上来ないで欲しいんですが……」

「うふふ、愛し子様。ごめんなさい、それはできないわ。だってああいうヴェロニカが大好きなのだもの」


 本当ヤベぇなこの吸血鬼。


 まぁ、そのままにしておくのもアレだったので、情報を与えていたレイドさんに責任持って見張って貰うことになりました。

 ヴェロニカさんはブラッドワインを一本開けてなんとか落ち着いてくれた。

 ブラッドワイン鎮静作用あるのかなぁ?


「すまぬ、あの女の顔を見るとこう怒りが抑えられないのだ」

「幼少期からですか、もしかして」

 ヴェロニカさんはこくりと頷いた。

「あの女ことある毎に私に近づいて来て、私がどれだけ嫌な思いをしたか、父母は分からんだろう!」

「あー……」

 なるほど、ヴェロニカさんも、私同様エリザベートさんのことが生理的に受け付けないんだろうな、これからも。


 その後、一泊してエリザベートさんは帰って行った。

 お土産にブラッドワインを10本ほど持って。

 お金は白金貨30枚で渡した、クロウが少ないなと言ってたけど、私はお金が欲しい訳じゃ無いしね。


「また来ますね」

「二度と来るなー!」


 ヴェロニカさんのその言葉に、エリザベートさんは嬉しそうに笑って帰って行った。

 アレはもう末期だ。

 私はヴェロニカさんが少し哀れに思えた。







ヴェロニカの家の本家筋の姫「エリザベート」。

彼女はヴェロニカに散々嫌がらせというかちまちま神経を逆なでしてヴェロニカにめちゃくちゃ嫌われています。

しかし、ヴェロニカは分家の身なので逆らえなかったこともあり、始祖の森に来て清々していたのにまたあってかなりストレスマッハです。

梢もなんか雰囲気的に反りが合わないというかお近づきになりたくないと感じています。

さて、この件どうなるのでしょう。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

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― 新着の感想 ―
なんかこの姫、本当にまた来そうだな。私の予想では直ぐ来そう笑 そしてヴェロニカさんのストレスが限界突破するんだぁ…(遠い目)
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