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ポテトサラダとイザベラ達の食事事情

ジャガイモが保管庫を圧迫しているのでポテトサラダを量産した梢。

しかし次に問題ができた。

どうやって消費しよう、と──





「ジャガイモが食料庫圧迫してるからついでに圧迫しているニンジンと玉葱とかも使ってポテサラ作ろう」

 今年は嫌ってくらい食材が豊作だからなぁ。

 アイテムボックスに入れるのもありだけど忘れそうだからね。

 村で作ったフォレストボアのハムを使う。

 胡椒はたっぷりと。

 ジャガイモは裏ごしして滑らかに。

 色々とやって山のようなポテサラができた。

「これ、どうしよう?」

 作っておいて、消化方法を考えてなかった。

 どうすんべ。



「村人達に配れば良かろう」

 クロウが呆れたように言った。

「じゃあ、そうする。」

「待て、我の分は?」

「器頂戴」

 クロウはでかい器を取り出した。

「全く食い意地ははってるんだから」

 器の中にポテトサラダをこんもり盛る。

 すると満足そうに、家に戻った。


「愛し子様、それはなんだ?」

 子ども達と休憩中の大人達が器を持ってきて並んでいるのを見てマリア様が声をかけて来た。

「ポテトサラダです、マリア様。食べてみますか」

「そうだな、いただこう」

 アイテムボックスから器とフォークを取り出して、器に盛り付ける。

「はいどうぞ」

 マリア様は私の隣に座り、ポテトサラダを食べた。

「美味いな……後この辛み……胡椒か!」

「正解です、胡椒たっぷり入れました」

「たっぷり……?」

「胡椒も育ててるんですよ、まぁ私の畑の性質上直ぐ実になって収穫できるんですけどね……」

 それとクラフト小屋の調味料メーカーのお陰で乾燥とかの工程すっ飛ばしであの胡椒になるからなぁ……。

 と、遠い目をする。

「このハムはフォレストボアのハムか?」

「おお、その通りです、マリア様よく分かりますね」

「高級品だぞ、これ全部」

「はい?」

「新鮮な野菜は王都では高価だ、運ぶ必要があるからな。胡椒は高級品だ、砂金と同じ価値がある。フォレストボアなんておそらくかなりの大物だったのだろう、ならばかなりの値段で取引をされるぞ」

「うへぁ」

 知らなかったのでぽかーんとする。

「行商!」

「はい、何でしょうかマリア様」

 レイヴンさんがやって来た。

「ちょっと話したいことがある、いいか?」

「勿論です」

 レイヴンさんは商人の顔になり、マリア様と共に来賓の館に向かった。


 気がついたら、全員に配り終わってもまだ余っていた。

「仕方ない、パンにつけて食べよう」

 トースト用のパンにポテトサラダを塗りつけてもくもくと食べる。

「一人で食べなくてもいいんだぞ」

「でも、食べ飽きない?」

「大丈夫ですよ」

「はい」

 アルトリウスさん達がきて、四人でもくもくとトースト用のパンにつけたポテトサラダを食べる。

「コズエ様、何食べてるの?」

 イザベラちゃんがやって来た。

「ポテトサラダですよ、イザベラ様」

「サラダ⁈ 私サラダ大好き‼ 宜しければ下さいな‼」

「はいはいー」

 野菜って王都だと高価だから王室はどう手に入れてるんだろう?

 と思ったりした。

 器にポテトサラダを盛り付け、フォークを渡す。

 イザベラちゃんは、滑らかなポテトに目を丸くする。

「これはイモかしら? なんて滑らかで濃厚なの? 他の野菜も……うん、美味しいわ!」

「それは良かった」

「王室だと、サラダはたまにしか出ないの、ほとんどスープになってるから。後はお肉の下に敷くよう」

「なるほど……どうしてです?」

「サラダだと、毒が入っているか毒味係が味見しても分からないから、魔導師が毒の検査をする必要があって手間がかかるんですって」

「オウイェ」

「お母様の毒は毒味係には分からないように入れられたらしいから……」

「どういう毒だったんです?」

「スープの底に沈む毒だったそうなの。毒味役はそれまで上澄みだけ掬ってたから気付かなかったみたい。でもお母様の毒の発覚と同時に底までスプーンで掬って飲むようになったそうよ」

「なるほど、スープに対して重い水みたいな毒だった訳か」

「うん、そうなの」

 そう言いながらイザベラちゃんはポテトサラダを完食した。

「ああ、美味しかった。コズエ様の料理は本当に美味しいわ」

「そう言ってもらえて嬉しいです」

 にこにこと笑顔になるイザベラちゃんに吊られた私も微笑む。


 しかしだ。

 こんな小さな子がそんなドロドロとした中で生きているのが悲しい。


「学校でも毒味とかあるんですか?」

「勿論、貴族の子達が居るんですもの。誰かが毒を入れないように毒味をしてますわ」

「オゥイエ」

 なんてこったい。

 貴族社会こわーい!

「毒味係が毒に当たったことは?」

「学校で二三度、王室では十回位」

「Oh」

 なんとも言えぬ。

 貴族社会こえぇ!

「どうしたの、コズエ様?」

「イザベラ様をこのまま帰していいのか非常に悩んでる」

 顔を覆って蹲ってる私に心配そうにイザベラちゃんは声をかけた。

「大丈夫よコズエ様、私王女ですし、次期王太子妃ですもの……!」

「うう、イザベラ様マジ健気」

「コズエが混乱してるように見えるのは気のせいか?」

「大丈夫です、気のせいじゃないです」

「あの、このままで良いんでしょうか?」

 アルトリウスさんにアインさんがなんか言ってるけど気にしない。

 ティリオさん、貴方は心配しすぎです私と同じく。

「まぁ、こんな美味いものを食えるようになったのはここに来てからですね」

「はい、アイン様」

 アインさんとティリオさんが同意する。

 ただのポテサラなんですけどねー。

「母にこれほど新鮮な野菜を食べさせれるのはここに来てからだ、母も畑をやっていたが、私達は手伝えなかったからな」

 まぁーダンピールと吸血鬼は普通植物からしちゃうからしゃーねーわな。

 枯れない植物はブラッドフルーツ位か……

「あ、レイヴンさんがクロウの家入った」

 私はレイヴンさんがクロウの家に入っていくのを見た。

 そして少しすると、クロウがやや不機嫌そうな顔で出てくる。

 来賓の館へ入っていくのを見た。

「何か話す事あるのかな?」

 もくもくとポテサラを塗ったパンを食べる。


 まだポテサラは山ほどある。


 パンに挟んだものを四人でもくもく食べていると、子ども達が寄ってきた。

「コズエ様、ぽてとさらだ、おかわりください!」

「父ちゃん達が酒のつまみにするって」

「はいはい、いいですよー」

 そう言ってポテトサラダを器に盛り付けていく。

 大人達は酒のつまみを常に欲している。


 お酒は余る程ある。

 大人達が好むビールは樽で貯蔵庫に保管されている。

 それは自由に飲んで良いものだ。

 ただうちの村の条件としてお酒は二十を過ぎてからとなっている。

 ハイエルフとドワーフはまぁ、そこら辺は穏便に向こうのを取り入れている、が子どもには飲ませるなと言う私の主張は守られている。


「父ちゃん達、びーるって酒美味そうに飲むんだよな羨ましいよなー」

「安心して私はビール飲まないから」

「どうして?」

「苦いのよ、ビールは。私の舌は子ども舌だから合わないのよ」

「なのに何でコズエ様はびーる作ったの?」

「大人達が好きそうだからよ、実際その通りだったし」

「そういうものなのかー」

「ええ。まぁ子どもの体には特にお酒は毒だから飲んじゃ駄目よ」

「わかってます!」

「はい!」

「はい! コズエ様!」

 子ども達は良い返事をする。

 ポテトサラダも空っぽになったし、そろそろ入れ物を洗いに行こう。

 と炊事所の流しに行き蛇口をひねる。

 水が流れ、油も全て綺麗に浄化されて入れ物達はピカピカになった。


「さて、整備とかしますか」


 と畑仕事に戻った。





 そして翌日の夕方、クロウとレイヴンさんが新規の行商先としてドミナス王国の王家と契約を取り付けた。

 小量のお酒と、メインは新鮮な野菜と肉だった。

 一応最終許可が私だということだが、拒否する理由もないので許可すると、レイヴンさんは喜び、遠くで私達を見ていたマリア様が何かを噛みしめるように頷いていた。







ポテトサラダを食べつつ、色々お話するという内容でした。

クロウに言われて訳にいった梢はそこでマリアが何かを思いつくなんてつゆ知らず。

イザベラから王家事情や貴族社会を聞き若干恐怖。


そして最期に何か契約を取り付けて喜ぶレイヴンとマリア、詳しい事情は分からぬ梢。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。

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