村人たちに祝われる、異世界に来て22年目の誕生日
村人たちが、梢が誕生会を開いている建物にやってきて料理を運んできた。
料理の数々に喜ぶ梢。
そして意外な存在が料理をしたことに、梢は驚く──
「「「「「「コズエ様、お誕生日おめでとう!」」」」」」
「ありがとう、皆さん」
家族内で料理を先に食べていると、村人たちが身なりを整えて入って来た。
多分クロウの指示だろう。
そして私に深々と頭を下げる。
村人たちは作った料理を運んでくる。
「わぁ、凄い!」
大きなケーキに、ローストチキンなど色んな料理が並べられていた。
勿論吸血鬼用の料理もだ。
「梢、食べるといい」
「私とクロウ様と、ベアトリーチェ様でお作りになったんですよ」
「ベアトリーチェさんも⁈ あと、クロウこっちの料理も手伝ったの⁈」
思わず驚きの声を上げてしまう。
「此奴等はお前ほど料理を知らんからな」
クロウ悪びれも無く言う、まぁそうだろう。
「料理は趣味だったが、自分は食べられなかったから、人の従者たちに振る舞っていた。此処に来て吸血鬼用の料理があると知り、振る舞っているうちに今回抜擢されたのだ、光栄なことだと思っている。愛し子様」
ベアトリーチェさんそうは穏やかに笑んだ。
「最初は私がやりますといったのだが、夫達から『母さんだけは止めておけ』と止められて……」
ヴェロニカさんがばつが悪そうな顔をしていた。
ああ、そういや、ヴェロニカさん、料理は下手じゃないけど、下手だった。
包丁の使い方が天才的な程ないんだよ。
本当、どうしてこうなったのかな?
と、思ってしまうほどに。
だから料理すると切り傷だらけになるから旦那さんのアレックスさんが料理して、ヴェロニカさんたちが味見するって聞いたな。
今はミラちゃんや、フレア君がやっているらしいけどね。
そのお陰でで旦那さんの負担が少なくなったらしいけどね。
だって旦那さんは人だから吸血鬼用の料理は食べられない。
だから自分用の料理を作っている。
ただ、フレア君に、ミラちゃん、ミリーナちゃんはそっちの料理にも興味があるので、ニンニク無しだったけど、私のニンニクのお陰でニンニク料理を出せるようになったって喜んでたな。
流石はネロ神様印のニンニク、吸血鬼も食えるニンニク。
まぁ、それを育てたり、種を買えるの私だけなんだけどね。
「梢、食わないのか?」
「ううん、食べるよ」
私はローストビーフを口にする。
肉の旨みとソースが相性抜群だった。
「ああ、美味しい」
コンソメゼリーのサラダも切り分けて食べる。
コンソメの旨みと新鮮な野菜の旨みが丁度いい。
「皆さんも食べましょう、私一人じゃ食べきれないわ」
「そうだな。皆、皿を持って欲しい物を食べると良い」
元々そのつもりだったらしいクロウの言葉に皆がお皿を持って料理を取り分けていく。
ただ、クロウは自分の作った料理しか食べていなかった、どうしてかな?
「美味しい!」
音彩が嬉しそうに言う。
「これは美味いですね」
肇も言う。
「母上もっと食べてください」
「分かっているわ」
晃の言葉に私は頷く。
料理を食べられる分だけとって、料理を口にする。
デザートは最後と決めている。
そうして私はこの世界に来て家族と、村の人達と22年目の誕生日を堪能したのだ。
「22年かー」
クロウの屋敷の一室で私はクロウと話し合う。
「お前がこの世界に来て22年目の誕生日か」
「うん、そうだよ」
「楽しかったか?」
「勿論!」
私が笑うと、クロウも笑った。
「ところで、前の世界へ未練はあるか?」
「ない! と、言いたいけど……残して来たお母さんの事だけが心配でね」
「母親か」
「そう」
「いい母親だったか?」
「そういうのは分からないけど、私のことを極端に否定しなかった」
「そうか」
「ただ、兄妹でただ一人の女児だったから過保護だったことはある」
「そんなに?」
「ええ」
クロウの言葉に私は思い出した。
兄は遅く帰っても怒られなかったが、私は怒られた。
遊びに行くなら午前中なら午前、午後なら午後帰って来るとある意味厳しかった。
思い返せば不満は多い。
でも私を大切にしているのは分かった。
私の趣味、漫画とか小説を頭ごなしに否定しなかった。
お母さんは読めないと言っていたけどね。
本当、お母さんは本が読めない人だった。
でも、自分が本を読めないからと人の本を取り上げることはなかった。
もし、もっと早くに母にSOSを出していたら、母に相談していたら、結末は違っただろう。
この世界に来ることもなく、親の庇護の中で生きていただろう。
でも、私はここにいる。
一人の自立? してるかしてないか分からないけども、とにかく仕事をして、結婚して、子ども達に恵まれて、幸せに暮らしている。
お母さんには悪いが、今の私にはそれが一番良かったのだろう。
「──でも、後悔はしてない」
「……そうか」
クロウは静かに頷いた。
そして口を開く。
「デミトリアス神より言づてだ」
「何?」
私は首をかしげる。
「近いうち、お前の母が天に召される」
「……」
そうだよね、私がこっちに来た時もう60近くで、22年たったなら80歳。
健康寿命はとっくに過ぎてて、いつ死んでもおかしくない。
「迎えに行くか?」
クロウの問いかけに、私は静かにうなづき、応える。
「当然じゃない、お母さんを迎えに行くのは早死にした娘の役目よ」
と──
誕生日の和やかな雰囲気楽しげな雰囲気の後の、クロウの言葉。
そうなんですよね、一般的な健康寿命って70弱くらいなんですよね、確か。
梢のお母さんも、話す相手がいないし、妄想と取られるから、多分寿命一気に落ち込んだと思います。
梢の祖母の鞠子お祖母さん、マリーが死んでから。
さて、どうなるでしょう、次回。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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