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第73話 いざ、ドワーフ国へ


 上半身裸で筋肉モリモリのエルフが、カケさんに向かって


「戻ろうと思ったら、ティターニアとリッカの反応があったんでな、気になって会いに行ったら、リッカの容姿が変わっててビックリしたぞ!」


 そう言い放つと、カケさんが笑顔で


「なんか色々とあったみたいで、今はあの姿で過ごしてるらしいよ」


「ああ、なんかそうらしいな。リッカは身元を隠せるから都合が良いって言ってたが、あの姿はどうかと思うぞ?」


 すると、カケさんが少し困ったような顔をして


「まあ、本人が良しとしてるから何も言わなかったけど、魔物の件が落ち着いたら話してみるよ」


「ああ、そうした方が良いかもな」


 筋肉モリモリのエルフが難しそうな顔をして頷く。


 ん~、やっぱりこの上半身裸の筋肉モリモリエルフがヤマさんなんだよな?


 言語学者って聞いてたし、共通語を創った人物だって話しだったから、なんとなく線が細くて知的な感じな人なんだろうなって思っていたんだが……


 俺のイメージとあまりにもヤマさんの容姿がかけ離れていたので、困惑していると


「いや~、それにしてもリッカと一緒にいたラミアの子! まあ~元気が良いこと!」


「ターニャ君だね」


「そうそう、ターニャ! リッカの弟子らしいんだが、ティターニアが色々と魔法を教えてて、えらく気にいってたぞ?」


「うん、なんかリッカ君を村まで連れて来る間に仲良くなったみたいで『ターニャちゃんに魔法を伝授したいから、私もリッカちゃんと一緒に魔物退治に行ってくるわね~』って、彼女も行くことになったんだ」


「なるほどなあ。あいつは結構気まぐれなところはあるが、気に入ったらチャンと面倒は見るからなあ」


「うんうん」


 笑顔で頷くカケさんに、ヤマさんが申し訳なさそうな顔をして


「でな、ティターニアの教えに応えようと一生懸命頑張るターニャの姿を見ていたら、なんか俺も頑張らねえと! って思っちまってな……」


 すると、カケさんが片方の眉を上げ


「それで、魔物の討伐数をみんなで競い合い始めたのかな?」


「いや、俺がターニャの隣で一緒に魔物を倒してたら、突然ターニャが『負けないぞ!』って言いだして、ティターニアと一緒に魔物を倒し始めたんだが、そしたらリッカも一緒になって魔物を倒し始めてな……」


 あ~、なんか「うりゃ~!」とか「おりゃ~!」とか言って魔法を放つヘビ娘を見て、「そう、その調子よ!」ってゴリラが嬉しそうに魔法をぶっ放してる姿が目に浮かぶなあ……


 などと思っていると、カケさんが笑顔で


「別に遅れた事を責めてる訳じゃないから、そんなに気にしなくったって大丈夫だよ?」


「ん? そうなのか?」


 笑顔で頷くカケさんを見て、ヤマさんがホッとしたような表情をすると


「でもまあ、その分リッカ達は予定よりも早く次の転移魔法陣へ移動出来たし、あらかた魔物も退治しといたから、ドワーフの村や街への被害も最小限に抑えられると思うぜ!」


 カケさんが笑顔でウンウンと頷き


「ローズ君に増援の依頼はしていたけど、まさかリッカ君が来てくれるとは思わなかったねえ」


「だな。しかも、リッカだったら安心して魔物退治を任せられるからな!」


 ヤマさんが笑顔でそう答えると、カケさんが


「リッカ君達にはこのまま転移魔法陣の破壊と周辺の魔物退治をしてもらって、ヤマには街や村を襲ってる魔物と廃鉱山に住み着いてしまった魔物、それと迷宮から溢れた魔物の退治に向かってもらうよ」


「ああ、分かった。じゃあ、転移魔法陣の方はこのままリッカ達に任せて、俺はその分魔物退治に全力を注げば良いんだな?」


「うん、そうすればこっちに来る魔物の数は減らせるし、ついでにドワーフ達の被害も減らせるからね」


「おう!」


 ヤマさんがそう言って頷くと、エリスを見て


「んで、あの子は?」


 カケさんが笑顔で


「ニュクスの娘だよ」


 すると、ヤマさんが目を見開き


「おお! ニュクスの娘だったか!! な~んか子供の頃のニュクスにそっくりだなあ? って思ってたんだよなあ」


 と言って、エリスに駆け寄ると、エリスが俺の後ろに素早く移動した。


「おっ!? その怯えたような感じの仕草! 子供の頃のニュクスにそっくりじゃん!!」 

 

 いやいや、上半身裸で筋肉モリモリの人が急に駆け寄ってきたら、そりゃあ誰だって身を守りたくもなるでしょ……


 などと思っていると


「俺はヤマだ! よろしくな!!」


「はっ、初めまして。エリスです、ヤマさんと一緒に魔物退治に同行することになりましたので、よろしくお願いします」


 頭を下げるエリスを見てヤマさんが、カケさんに


「なあ、連れてっちゃって大丈夫なのか?」


「うん、さっき魔法の腕前を試させてもらったけど、威力も精度も問題なかったよ。それに、回復魔法も使えるみたいだから、怪我人がいたらエリス君に任せも大丈夫そうだよ」


「おっ! そうか!! だったら、俺は魔物退治に専念出来るな!」


 と言い、エリスを見ると


「魔物との戦いでケガしてるドワーフもいるから、そん時はよろしく頼むな!」


「はい! 分かりました」


 エリスが姿勢を正して返事をすると、ヤマさんが俺を見て


「で、この人族は何で強化装備なんて着てるんだ?」


 えっ? 強化装備??


 俺が着てるのは、装備者を弱体化させるマイナス装備なんですけど?


 などと思っていると、カケさんが


「彼はリッカ君の仲間で、ニュクスからエリス君の事を任されたケビン君だよ」


 ヤマさんが目を見開き


「えっ! マジで!? ニュクスが娘を人族に預けたの?」


 と言いながら、こっちを見たので


「ども、色々と見聞を広げたいと思ってるエリスをニュクスさんから任された、ケビンです。ちなみに、俺もエリスと一緒にヤマさんの魔物退治について行きますので、よろしくお願いします」


 頭を下げると、ヤマさんがエリスを見て


「なんで見聞を広めたいって思ったんだ?」


「えっ?」


 エリスが急に話を振られたので、若干戸惑いながら


「母と一緒にいると、どうしても他種族に対して偏った考え方や意見になりがちなので、一度母から離れて私自身で他種族の人達の目線で色んな物事を考えてみたいと思いまして……」


 と答えると、ヤマさんが目を見開き


「いいね! それは良い心掛けだ!!」


 と言い、両手を左右に広げると


「文化の違いや価値観の違いで色々と戸惑ったりもするが、色んな発見があるから他種族との交流はスッゲー面白れえぞ!!」


 急に熱量が増したヤマさんに驚いたのか、エリスが若干身構えながら


「は、はい……」


 と答えると、ヤマさんが腰に手を当て


「あとな、他種族と交流すると自分にとって当たり前だと思ってた事や、自分の勝手な思い込みとかにも気づけたりするし、物事の捉え方や見方とかも多角的に出来るようになるから、困難な問題にぶち当たっても、柔軟な判断や対応が出来るようになるから、この先のエリスの人生は確実に豊かになるぞ!!」


 ヤマさんの勢いに圧倒されているのか、エリスが顔を引きつらせながらも


「は、はい……」


 と返事をすると、ヤマさんが嬉しそうにウンウンと笑顔で頷く。


 すると、ヤマさんが急に面倒くさそうな顔をして、俺を見ると


「なあ、これって、カケが昔ドワーフ王と作った強化装備だよな? こんなもん着てまともに戦えるのか?」


「いや、ケビン君は戦力としては見てないよ」


 すると、ヤマさんが親指をクイッと俺に向けて面倒くさそうに


「はあ? でも、こいつも魔物退治に行くんだろ?」


 カケさんが片方の眉を上げ


「ケビン君にはエリス君の魔力を回復させてもらいたいから、ヤマ達が倒した魔物の魔石をエリス君のとこまで運んでもらうのに同行してもらうんだよ」


「はあ? 魔石を運ぶ?」


「うん、エリス君には魔力を気にせず存分に戦ってもらいたいからね」


「なんで?」


 ヤマさんが首を傾げると、カケさんがエリスを見ながら


「エリス君はニュクスに頼ることなく、自分の身は自分で守れるくらい強くなりたいって考えてて、普段から【魔力半減】のブレスレットを身に着けたまま生活をして強くなる努力をしてたから、お近づきのしるしに【吸収】の指輪を渡したんだ」


「なるほど! それで魔石を運ばせようとしてるのか!」


 カケさんが笑顔でウンウンと頷くと、ヤマさんがニコニコしながらエリスを見て


「普段から強くなろうと努力するたあ、良い心掛けじゃねえか!!」


「あ、ありがとうございます」


「じゃんじゃん魔物を倒してどんどん強くなれよ!!」


「は、はい」


 上半身裸で筋肉モリモリのヤマさんの勢いに押されて、エリスが顔を引きつらせながら返事をすると、ヤマさんが俺を見て


「そんで、こいつも一緒について来るってか……」


 と言い、口をへの字にしながらカケさんに


「だったら別に、強化装備なんて着なくたって良いんじゃね?」


 すると、カケさんが片方の眉を上げ


「ケビン君は、自分の身の周りの人達を守る為に【体力半減】の鎧を着て体を鍛えてたんだけど、体を鍛える理由が昔のヤマと一緒だったからなのか、ケビン君の事が気に入っちゃってね。だから、お近づきのしるしにその強化装備をプレゼントしたんだよ」


 ヤマさんが意外そうな顔で俺を見ると


「へ~、自分の身の周りのヤツ等を守るために普段から強化装備を使って体を鍛えてたのか?」


「ええ、まあ。色々とありまして、俺なりに頑張ってます……」


 と言い、頬をポリポリかいてると


「いいね! なかなか骨のあるやつじゃねえか!!」


 ヤマさんが急に笑顔になると


「やっぱ体は鍛えてなんぼだもんな!! 俺もこの強化ベルトで自己鍛錬しつつ普段から体を鍛えてるんだぜ!」


 そう言って、腰に巻いてるベルトをヤマさんが見せつけてきた。


 ベルトには【体力減退】【気力減退】【腕力減退】【脚力減退】【魔力減退】【清潔】【快適】【修復】といった、確実に装備者を弱体化させる宝玉がいくつも埋め込まれていた。


 すると、それを見たエリスが小声で


「ケビンさんの鎧と同じくらい、あのベルトを見ているとソワソワしてくるのですが……」


「ああ、宝玉の数が足りないからレジェンド級とまではいかないが、あれも確実にマイナス装備だ……」


「やはり、そうでしたか……」


 小声で話す俺とエリスを見て、ヤマさんが


「あっ、そっか! 今は強化装備のことをマイナス装備って言ってるんだったな!!」


 と言い、腰のベルトに目をやりながら、ちょっと浮かない顔をして


「昔はこういった装備品を使って色々と体を鍛えてたんで、当時は強化装備って言ってたんだけどなあ……。時代が変わって装備すると弱体化するってんで、今じゃハズレ装備とかマイナス装備って言うようになっちまったんだよなあ……」


 へ~、捉え方の違いで今と昔では全く違った解釈の装備になるってのは面白いなあ。


 などと思っていると、浮かない顔をしていたヤマさんが


「でもなケビン!」


 急に笑顔になると


「お前もその鎧を着て頑張れば、いつかは俺みたいになれるぞ!!」


 と言い、大きく息を吸うと


「なんてったって、筋肉は……」


 ムキッと上半身の筋肉を肥大させて


「日々の努力を裏切らないからな!!」


 歯を食いしばりながらプルプルと体を震わせ、笑顔で俺を見つめるヤマさん。


 いや……、別に俺は、筋肉モリモリになんてなりなくはないのだが……


 などと思いつつ


「はっ、はい。頑張ります……」


 と答えると


「はっはっは! 気に入ったぞ! 改めて、俺はヤマだ! よろしくな!!」


 なんだ? 急にヤマさんとの距離が縮まったぞ? やっぱマイナス装備を着てる者同士ってことで、親近感でも湧いて来たのか?


 などと思いながら


「改めまして、ケビンです。よろしくお願いします」


 すると、カケさんが


「では、自己紹介も済んだことですし、そろそろ魔物退治に行ってもらいましょうかね」


「ああ、俺はいつでも良いぞ!」


「はい! 私も大丈夫です」


「あっ、俺もいつでもいけます」


 カケさんが俺達の返事に笑顔で頷き


「多分、女王蟲の出産は後三、四日程度で終わるでしょうから、それまではケビン君もエリス君も頑張ってくださいね」


「はい! 分かりました」


「分かりました」


「ヤマは今まで通り定期報告をよろしくね」


「ああ、分かった」


 と言い、渋い顔をすると


「にしても、魔物退治は嫌いじゃないから何日だってやっていられるが、今回たまたま女王蟲の出産で俺達がいたから良かったが、俺達がいなかったらドワーフの村や街は大変なことになってたぞ?」


「そうだねえ。こっちが色々と落ち着いてからになるけど、ドワーフ王には僕達が色々と頑張ってたんだよって、掛け合ってみるのも良いかもね」


 口元に笑みを浮かべるカケさんを見て、ヤマさんが


「ゼースにか?」


「うん、兄のハデスも戻って来たみたいだからね」


 すると、ヤマさんも口元に笑みを浮かべ


「ああ、そうだな。あの兄弟からたんまりとお礼をしてもらわないとだな」


 カケさんとヤマさんが、なにやら悪だくみをするような顔でニヤニヤすると、ヤマさんが足元を光らせ


「エリス! ケビン!」


 と言い、俺とエリスに近づくと


「ちゃんと目を閉じとけよ!」 


 ヤマさんが俺とエリスの腕を掴み


「じゃあ、ちょっくら行ってくる!」


 と言うのと同時に、視界が眩むほどの一際明るい光が放たれ


「いってらっしゃい」


 見送るカケさんの声が微かに聞こえた。


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