第百話 クロちゃんとあたし【完】
メイド喫茶オスティウム。
ミクちゃんとレイちゃんが切盛りしている。
新人メイドさんも増えて大繁盛。
向かいのマリー様のメイド喫茶リリウムも相変わらず大繁盛。
お互いライバル店として競いながらも他の国でも話題になるほどメイド喫茶が盛り上がっている。
※ ※ ※ ※ ※
「おい! 大丈夫か!」
誰かが声をかけている。
からだじゅうが熱くて動かない。
アスファルトが冷たくて気持ちいい。
あれ? 何か抱えている。
あったかい。
「にゃあ」
と聞こえたかと思ったら腕から黒猫が飛び出して行った。
「この女性がトラックの前に急に飛び出して来たんです!」
「どなたか! この女性を知ってる人は居ますか? 救急車に一緒に乗る方は!」
――ああ、そうだ。
あたしは飛び出した黒猫ちゃんを助けようと思ってトラックの前に飛び出したんだ。
アゼル、ミクちゃん、レイちゃん……。
あたしとアゼルで作ったオスティウム……。
ただなんとなく決まった事をやって。
冒険するような事はしなくて。
ずっと無難に飲食店でアルバイトして。
自分でお店を出す目標があるわけでもなく。
まして、憧れてるメイド喫茶のメイドさんになるわけでもなく。
あーあ、こんなことなら、やっておけば良かったな。
※ ※ ※ ※ ※
「今、話題のお店に今日は潜入レポートしてみたいと思います」
誰もが知る有名なアナウンサーが、お店の入り口へと向かうと
「にゃあ」
っと黒猫がお出迎えした。
「かわいい! このお店の番犬では無く、番ネコちゃんのようです」
「へー。その黒猫が、このお店の入り口で毎日来るお客さんに挨拶するネコですか」
女性アナウンサーのレポートにスタジオの司会者が答えた。
「かわいい! この黒猫がきっかけでお店が有名になったんですよね!」
「そうなんです。番ネコというより幸運の招きネコですね」
スタジオで、ゲストの有名アイドルと司会者が掛け合っている。
「それではお店に入りたいと思います!」
女性アナウンサーがお店の扉を開けると満面の笑みでメイドさんが迎えた。
「メイド喫茶オスティウムへようこそ!」
最後までお読み頂きありがとうございます。
こちらで完結となります。




