上司との帰宅は気が休まらない(30日版)
うげええええ設定間違えて、荒書きをアップしてしまっていました!
恥ずかしい!申し訳ないです
本文差し替えました。お恥ずかしい限りです。
疲れた。
俺は残業はしない主義だ。
だが、他人よりも仕事量が少ないと思われるのは癪なんだよな。
だから就業中は、全力で仕事をする派だ。
ほかの奴が残業しないとできない量を定時内にこなす。
だから誰にも文句は言わせない。
だから、仕事が終わるとクタクタだ。
会社から駅に向かって歩いていると、駅の入り口で見慣れたやつが待っていた。
「あ、お疲れ。今日も定時で上がったのね。」
松葉杖の戦闘民族、玲奈だ。
最近、こいつはいつも駅の前で待っている。
多分乗り換えの時に俺が手伝うから、楽ができると味を占めやがったのだろう。
「おう、お前もいつも定時上がりだな。ちゃんと仕事してるのか?」
「ちゃんと仕事してるにきまってるでしょ。私の仕事は残業がない仕事なのよ。」
そんな話をしていると、後ろからゴッツイ声がした。
「お、豪徳寺。彼女と帰宅か?だからいつも必死に定時上がりしてるんだな。」
振り返ると、180cmはあるプロレスラーのようなおっさんが立っていた。
無駄にガタイがいいが、これでも普通にサラリーマンである。
俺の上司、武藤課長だ。
「お疲れ様です。今日は課長も定時上がりですか?ちなみに俺は妹たちの夕飯のために急いで帰ってるんで、こいつのためではないです。」
ゴツっと玲奈の義足キックが入ったが気にしない。
事実だし。
「わっはっは、別に彼女と帰るために定時上がりすることを責めたりしないぞ。お前が人よりも頑張って定時あがりしていることは分かっているからな。」
武藤課長は部下をよく見ている人だ。
だから俺のことも理解してくれている。ありがたい。
入社直後いた部署の上司は無能で、人の二倍働いても定時で帰るのを怠慢だと叱られたことがあった。
あの時、上司に恵まれない不幸を思い知った。
だから、武藤課長の下につけたことは幸運だと思っている。
厳しいけど。
俺は一礼して、玲奈を支えて駅の階段を降りはじめたら、武藤課長も歩調を合わせてついてくる。
あれ?
もしかして、一緒に帰るつもりか?
横を見るとゴッツイハゲ頭を光らせながら野太く笑っていた。
「豪徳寺は面倒見がいいよな。」
やめてください。
なんか恥ずかしい。
すると玲奈はニコニコしながら武藤課長を見た。
「こいつ、会社でもなんだかんだ言って他人の面倒見るタイプなんですか?」
「おう、困っている奴がいると自分から面倒に突っ込んで行くタイプだ。口は悪いが行動が優しい奴だ。」
「ふふふ、単純な奴ですからどこでもこのままなんですね。」
「そうだな、どこでも馬鹿なお節介屋だ。」
なぜか武藤課長と玲奈が談笑を始めた。
やめて。
俺の話で盛り上がらないで。
なんでこの二人は一瞬で仲良くなったの?
戦闘民族同士だからか?
武藤課長がサイヤ人のナッ〇に似ているからか?
ヤベ、二人が仲良く話始めると俺のほうが孤独感を感じるぜ。
玲奈をここに捨てて走り出しちゃうか。
そんなことを考えていたら、スマホが鳴った。
テロロン
見ると妹の瑞穂からのメールだった。
『部活が終わったから今から帰るけど、夕飯の買い物手伝おうか?』
そのメールを武藤課長がのぞき込む。
「おう、豪徳寺の妹は相変わらずできた妹だな。俺の妹なんて兄貴の手伝いなんて絶対しなかったぞ。」
すると玲奈はウンウンうなずいていた。
「ほんと瑞穂ちゃんと初穂ちゃんはできた妹ですよ。私の妹なんて電車で私と顔を合わせたくないからって、時間ずらして電車に乗るくらいですから。」
「だよなー。妹がかわいいとかいう都市伝説は無くなってほしいぜ。」
「ですよねー。」
この二人は、俺を挟んで世界中の妹をDISり始めたぞ。
しかし利口な俺はこの会話に乗らない。
仕事に関係ないことでは、上司に意見しないのがサラリーマンの処世術。
だから『いや妹はかわいいですよ』と反論しないのだ。
だまって瑞穂にメールを返す。
『じゃあ乗換駅で合流だ。』
気を抜いていたら武藤課長が俺の肩をバシリと叩く。
「そいや、この彼女さんはお前がクソ漏らしたときに傍にいたんだろ。それなのにまだ仲良くしてるなんて大したもんだと思うぞ。良い彼女見つけたじゃねえか。」
彼女じゃないって言いたいけど、ここはサラリーマンの処世術発動。
否定しないでやんわりと逃げる。
「武藤課長、そのことは勘弁してくださいよ。」
人がいっぱいいる駅内で、ウンコ漏らしたことをお声で言わないでほしいし。
だが武藤課長は上機嫌。
「あの時の連絡も笑えたよな。もっとましな言い訳があるだろうに馬鹿正直にクソ漏らしたって連絡してくるとか驚いたぞ。お前だからすぐに信じたが、ほかの奴からあんな連絡来たら怒鳴りつけるところだ。わっはっは。」
俺の人柄のおかげで、あの後武藤課長は迅速にパンツとジャージを買ってきてくれたのか。
喜んでいいところなんだろうか・・・微妙だ。
会話をしながらも電車に乗り込む
武藤課長も当然一緒に乗り込んでくる。
そこで会話が途切れた。
ガタンガタン
ガタンガタン
あ、話題が思いつかない。
気まずい。
なんだろう、この無言の空間のプレッシャーは。
会話をしないといけないという強迫観念。
でも、上司とどんな世間話をすればいいかわからない事に気づいた。
ガタンガタン
ガタンガタン
なんなのこの唐突な無言の空気。
いかん、サラリーマンとしてここは上司に会話を提供しなければ。
ガタンガタン
ガタンガタン
くそ、こうなったらクソ漏らし事件をもう一度話題に出して会話を提供するか。
そう追い詰められたとき、武藤課長がいつになく低いテンションで口を開いた。
「豪徳寺よお。俺は仕事と家族を両立できなくてよ。娘たちは口きいてくれないし、嫁は俺がいないほうが楽しそうらしんだ。だからお前が必死に定時で帰って妹の面倒を見ようとする姿が羨ましいのさ。」
「武藤課長・・・。」
「がんばれよな。仕事なんかいくらでもあるがよ、家族は替えが効かないんだ。俺みたいな家庭にならないためにもよ。」
「俺なんか、まだまだですよ・・・」
そこで乗換駅につく。
玲奈を支えながら武藤課長と電車を降りると、二人の妹が待っていた。
どうやら初穂も合流したらしい。
初穂は俺に駆け寄ると第一声。
「外で合流できたんだからステーキ食べに行こうよ!」
欠食児童め。
だが。
「金がねーよ。お前の修学旅行費を払ったから、我が家は金縮財政中だ。」
我が家は今、余裕がない。
ゆえにステーキなんてないのだ。
「なんでよー。ファミレスで良いからさ。」
チラリと瑞穂を見る。
瑞穂は小さく首を横に振った。
瑞穂も金はないようだ。
すると武藤課長がヌーと現れる。
「おう、じゃあオッちゃがご馳走してやるぞ。豪徳寺の妹なら他人じゃねーしな。」
「武藤課長、それは悪いですよ。」
でも初穂は物怖じしないで武藤課長に近づく。
「わーい、ありがとうございます。おじさんはどこの団体のレスラーさんですか?」
「がははは、俺はレスラーじゃねーよ。フツーのリーマンだぜ。」
「うっそだー。絶対レスラーさんでしょ。」
まあプロレスラーに見えるよな。
でも
恐ろしいことに、本当に普通にリーマンなんだよこのひと。
すると武藤課長は玲奈を見た。
「豪徳寺の彼女さんも一緒にどうだい。遠慮はしないでくれよ。」
そして武藤課長を中心に、玲奈と妹達はファミレスに向かった。
その背中を見つめていてハっとなる。
「なんで俺だけ置いて行かれているんだ!」
慌てて追いかけて俺もおごってもらった。
武藤課長、やっぱパないぜ。
初穂はちゃっかり、また奢ってもらう約束を取り付けていた。
やめろ、俺が恥ずかしいだろ!
だが武藤課長はうれしそうだった。
「気にするな豪徳寺。おっちゃんてやつは、若い娘に飯を食わしたい生き物なんだ。お前もいつかわかるさ。」
そういって上機嫌で帰っていった。
俺にはまだ分からない領域だ。
オッちゃん道、奥が深いぜ。




