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腹話術

人物紹介

豪徳寺高志:俺。24歳。普通のリーマン。モテない。

豪徳寺瑞穂:20歳、171cmでスポーツが得意な妹。女子にモテモテ。

豪徳寺初穂:150cmと小柄だが、ローキックが重い。何故かモテる。

女子高生様:何故か俺の背後を取る達人。モテまくってるぽい。



ふう疲れた。

俺は定時退社するために、業務中は人の2倍働く。

残業はしない。

だから17時半に会社を出るとクタクタだ。


駅に着き電車に乗ると、そのままぐったり。

疲れ果てて席に座って斜め前を見ると…

あれ?見覚えのある女子高生が。


そうだ、週に一回朝の電車で会う清楚系女子高生様だ。

コッチをじっと見ている。


なんだ?

無言でカバンを開けると、なんか可愛いエレファントが刺繍されたポーチをだす。

「これ、いーらない。」

いうなり俺に投げつけてきた。


バシ!


うお!何だ?

流石の俺も、防御姿勢で固まってしまった。


次に女子高生様は10cmくらいのフワフワの猫を出す。

なかなかリアルだ。

羊毛フェルトってやつかな。

女子高生様は、その猫を顔の前に構えて、腹話術のようにしゃべりだした。


「おにいさん、じょしこうせいのパンツをみようとしてるでしょ。やっらしーなー。」

「してねーよ!」


猫はぴょこぴょこ動いて俺を見る。

「それはひどくない?じょしこうせいのパンツは、みるかちもないってこと?」

「違うよ!見たいけど見ないのが紳士のたしなみだ!」


するとフェルトの猫は、女子高生様のスカートの端を持った。

そして少し持ち上げる。


おいおい、何しているんだ?

「おにいさん、ぼくはこのままジャンプしてもいいんだよ。どうしてほしい?」

「おいおい、俺は紳士だぜ…。」


するとフェルトの猫はぴょこっと動いてカバンに入る。

…っていうか、女子高生様、その腹話術で何がしたかったんだ?

凄えドキドキしてしまったじゃねえか。


乗り換えの駅につく。

女子高生様が電車を降りるが、俺も降りる。

無言で女子高生様の後ろを歩く、気まずい。

声をかけるのもアレだけど、無言で同じ方向に歩くのも微妙な気持ちになるよな。


すると女子高生様が振り返って微笑んできた。

「おにいさん、なんで朝にあった時は追いかけてこないんですか?一緒に乗り換えたいのに。」


そういうなり、小走りで走って行ってしまった。

そしてまた、『さあ、追いかけてきて』的な顔で振り返って微笑んだ。


おお、やっぱ追いかけて良かったんじゃん。

俺は迷わず追いかける。


あははは、追いついちゃうぞー。


階段を軽やかに駆け上がり、直線コースでも軽く走る。

あははー、追いかけっこ楽しいー。


あと少しで追いつきそうなとき、曲がり角から急に妹の瑞穂(女子大生)が現れた。

「兄さん!だから女子高生は追いかけちゃ駄目だって言ってるでしょ!」


ラリアットが飛んできた。

げほおおおおおお!

しまった、こいつとは時々帰りの電車で会うんだった!

女子高生様を追いかけているところを見つかるとは、、、不覚。


俺、まじで大ダメージ。

ラリアットを食らった瞬間、勢いで足が浮いたくらい大ダメージ。


勢いよくコンクリの床に倒れる。

その一撃は俺の意識を刈り取るには十分だった。

薄れる意識の中、視界の端に慌てて駆け寄ってくる女子高生様が見えた。




気絶していたようだ。

目を覚ますと、駅の事務所っぽいところで寝ていた。

「痛てて、首がもげるかと思ったぜ」

起きると瑞穂が申し訳なさそうにしている。


「どうした瑞穂、浮かない顔して」


瑞穂は、羊毛フェルトで作った猫を俺に差し出した。


「兄さんごめん、まさか本当にあの子と遊んでいたとは思わなかったから…。あの子、泣きながらイタズラばっかりしてゴメンってこれを置いていったよ。」


なんで俺にイタズラしていたのか分からないけど、イタズラくらい好きにすればいいさ。


次の朝、なにか予感がして一本早く電車に乗った。

すると思った通り、あの子はいた。


俺は女子高生様の前に回り込むと、羊毛の猫をぴょこりとわき腹から顔を出させる。

くらえ俺の腹話術。


「イタズラくらい、すきにやりなよ。かわいいイタズラはすきだよ。」


女子高生様は俺の後ろに居るけど確信できる。

今笑ったろ。


すると、俺から猫を奪い取り、俺の肩に猫を乗せ腹話術を始めた。


「おにいさん、きょうは服がおっさんくさいぞ。」


ガーン!

絶望的な表情で振り返ると、女子高生様は俺の表情を見てケラケラ笑っていた。

「おっさん臭い」発言は、、、イ、イタズラだったのか。ビビったぜ。


猫はさらに俺の肩でぴょこぴょこ動く。

「きのうのゾウのポーチは手芸部でつくったんだ。おにいさんにあげるよ。」


この日から、俺の煙草セットはエレファント刺繍のポーチに入れることになった。

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