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三十三章 “旅人の話術”

 日当たりが良いとな……?

それって肉を焼くのに何か関係があるんだろうか?

もしかして、この世界の肉は特別製で焼くのに日当たりが関係しているのか!?


 そういえば元の世界にいた時に聞いた事があるぞ……超一流の料理人はその日の天気に合わせて料理の作り方を変えるとか何とか……


   「おい、日の当り方で肉の焼け具合が変わるのか?」


 やや不安になったのか、シュレンがボソボソとした声で部下に何やら訊いている。


   「さぁ……自分は料理には疎いもので……しかし、向こうの広場とこの場所でそう日当たりに違いがあるとは思えませんが……」


 良く分からないらしい。


   「フィニは知ってる?」


 フィニに訊いてみた。


   「どうでしょう?私にも分かりません。」


 フィニも分からないらしい。

どういうこと……って……


   「あっ!?」


 思わず素っ頓狂な声を洩らしたのは俺だけではない筈だ。


 なんと、旅人が良い具合に焼けていた肉をそのまま担いで、物凄い速度で逃走し始めた。その速さたるや、旅人の意味深な発言を深く考えていた俺達には誰一人追いかける事が出来なかったほどだ。


   「に、逃げた?まさか先程の発言は……」

   「混乱させて逃げる隙を作る為の口から出任せ……でしょうね。」


 そんなもんに引っかかるなんて騎士団は馬鹿だなあ、と一概には言えない。

なんせ、その場にいた野次馬も含めて全員があの旅人らしき男の口車に見事に乗せられていたのだから。


 普通なら「何を訳の分からん事を」で切り捨てられるような発言。だというのに、「まさか本当に何か意味が?」と考えさせられてしまう様な力が、あの男の言葉にはあった。

だから、皆して「日当たり?」と考え込んでしまったわけだが……


   「それにしたって『この場所の日当たりが最高だったんじゃ』はないよなぁ?フィニもそう思うだろ?」

   「あ、アハハ……そ、そうですね。」


 ちょっと笑い方が引きつっていた。

まんまと引っ掛かった事が悔しいのだろうか。


   「それより……肉は置いて行って欲しかったよ……」


 両膝を地面に突いてガックリと項垂れる。

あんな上手そうな物を背中にぶら下げて遁走……これはもう許されないな。


 さあ騎士団の皆さん!

頑張ってあの旅人……いや、山賊男を捕まえて罰しちゃってください!

そして肉は俺に……


   「あれ?シュレン、追いかけないの?」

   「おやケント。いたのか?」


 シュレンは俺達に気付いていなかったらしい。


   「もともと私達の目的は彼をこの場から立ち退かせる事でしたので。」


 自分から荷物も担いで逃げ得出した以上、追いかける理由もない。とシュレンは語った。


   「斧が屋根から飛んでったよ……オーノー……ヤーネー……」


 ショックのあまり口からつまらない洒落が飛び出した。

日本人にしか通じない……


   「あの、ケント?大丈夫ですか?」


 再び項垂れた俺を見てフィニが心配そうに声を掛けてくれた。

優しく俺の肩に置かれたフィニの掌から伝わる柔らかい温度が俺の心を癒してくれる。


   「大丈夫だよ。ただ本格的にお腹と背中がくっ付いちゃうかなーってだけで。」

   「アハハ。心配しなくてもお腹と背中はくっ付きませんよ。」


 フィニが朗らかに笑って穏やかなツッコミを入れてくれた。うん、これもツッコミの一種だよね?


   「撤収するぞ!各人、軽く昼食を摂った後、再びランクルート城門前の広場に集合!」


 フィニとやり取りをしている間にシュレンは部下達にそんな指示を出していた。部下達は「ハッ!」と短く返事をすると、きびきびとした仕草で散って行った。


 まあ、『軽く昼食』の部分に俺が反応したのは言うまでもない。


   「この後も何かあるのですか?」


 その指示に何か思う所があったのかフィニがシュレンにそう訊いた。


   「もともと、午後から遠出する任務がありましてね。苦情のあった通行妨害の処理はついでだったのですよ。」


 まあそうでもなきゃあ、帝国騎士団の中で三番目に強いらしいシュレン隊がこんな苦情処理に駆り出されたりはしないだろう。

どんな人員不足やねん、と一応心の中で思っておく。


   「それで、今から私の昼食にするが、ケントもフィニも一緒にどうかな?勿論、支払いは私に任せて欲しい。」


 そのシュレンの言葉に俺とフィニは顔を見合わせ……


   「行く!」 「行きます!」


 即答したのだった。

友人に言われました。

 「ケントってさ、別に言うほど馬鹿じゃなくね?割と色んなこと知ってるしさ、思慮も微妙に深いし。」と。

僕は言い返します。

 「そうだろ?実はそうなんだよ。ケントって実は馬鹿じゃないの。なんせモデルになっているのは僕だから。」と。

友人はさらに言い返して来ました。

 「あー、そりゃ文句無く究極にして極限の馬鹿だったわ。ごめんなケント君。」と。

どういう意味なんでしょうね?(ぇ

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