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十八章 “異国民?貴族?”

 気付けばフィニは大粒の涙をまた溢していた。


 まったく……ろくに言葉も交わしていない人のために泣けるなんて……

それはもう優しいなんて次元じゃないよな。


   「あー……まあ、なんだ?分かってくれってなぁお嬢さんには酷な話だってのは分かる。仕方ない。」


 泣き出したフィニを見て、皇帝は困ったように言葉を紡ぎ出した。


   「でもな、やっぱり分かってくれ。私だって訳もなく自国の民を見捨てるような非道ではない。出来ることなら助けたかった。」

   「では、なぜ?」


 涙を拭いながらフィニは問い返す。ただ、そこには皇帝としての並々ならぬ理由があった事を悟ったのか、先程の責めるような気配は無くなっていた。


   「それは国政事情であるがゆえ異国民である貴女に話す事は出来ない。」


 しかし、皇帝はそこだけはきっちりと断った。

先程までのだらけたイメージを一蹴する様な、そんな毅然とした皇帝の言葉だった。


   「だから、私の事は民を見捨てた冷たい皇帝と受け取ってもらって結構だ。」

   「……いえ。」


 その皇帝の言葉にフィニは何も言い返さなかった。

皇帝がどれほどの葛藤を経て『民を見捨てる』という決断に踏み切ったのか、フィニなりに何か思う所でもあったのかも知れない。


 フィニはやや冷静になった面持ちでゆっくりと椅子に座り直した。


   「ところで、自己紹介して貰っても良いかな?」


 その言葉で、俺はまだ自己紹介もしていなかった事に気が付いた。


 そういえば……いきなりのゲル状に直面したせいで何も言ってない……

うわー……なんて俺って失礼な……自己嫌悪。


   「あ、すいません……名乗りもせずに失礼な事を……」


 フィニも同じことを思ったらしい。

ここはフィニが自己嫌悪に陥ってしまう前に俺から名乗ってきっちりフィニをフォローすることが大切だろう。


   「俺はケントっていいます。どうぞよろしく。」


 そう言って頭を下げる。


   「私は、フィニと申します。」


 聊か安心した様子でフィニが続いて名乗った。


   「いや、名前は分かっている。姓名とショウ、それに出身国を教えて貰いたいんだ。」


 ビキッと固まった。


 どうやら皇帝殿は名前だけじゃ不服なご様子。

だからって……姓名は、まあ苗字のことだろうけど、ショウって何だ?章?称?それとも賞?

それに出身国……『日本です』じゃあ通じないよなぁ……


   「ああ、いや……深い意味は無い。」


 固まった俺達を見て何を勘繰ったのか皇帝は慌てたように両手を振った。


   「我が国では見ない異国の装束であったから、純粋に興味があって聞いただけだ。言えない理由があるのなら、無理に訊きはしない。」


 どうやら皇帝が変に勘繰ってくれたお陰で無用な説明はしなくて済みそうだ。


   「だが……その服、相当良い素材で出来ている。我が国であれば貴族の装いくらいにしか使われないほどの……」


 しかし、皇帝はそれだけで見逃す気はなさそうだ。

俺やフィニの服をジロジロと見渡しながら、勝手な推測を次々と口にする。


   「もしかして君達は貴族なのか?」


 いいえ、違います。と答えた方が良いんだろうか?


   「だとしたら、旅をしている事にも相当の理由がありそうだ。名乗れないという事にも合点がいくし、出身国など当然明かせぬだろう。仕方ない。」


 最後に皇帝は自分で納得して完結させてしまった。

どうやら随分と思いこみが激しいらしい。


   「(まあいいか。)」

   「(アハハ……そうですね。)」


 隣のフィニとこっそり言葉を交わす。

フィニも大分落ち着いたらしく、笑顔で応えてくれた。


   「さて、シュレン君。先程の罰の件だが……」

   「はい!なんなりと!!」


 俺達と皇帝の会話に口を挟まず黙っていたシュレンが皇帝に言葉を向けられた途端、背筋をビシッと正して規律姿勢を取りながらハキハキとした口調で応えた。軍人の鏡だ……軍人のことなんて知らないけど。


   「そうだな。カレイプスを討伐し、かの村を救った勇者と決闘騒ぎを起こすなど言語道断だ。」


 さっき不問にするって言ったのになぁ……なんでシュレンはわざわざ罰を受けるかな?俺には分からん。


   「よって、罰として……」

   「ちょっと待ってください!」


 しかし、挑発したのは俺だ。

悪いのは俺なのにそれでシュレンが罰を受けるなんて、そんなの倫理的に間違っている。

俺は駄目人間であるかも知れないが、それでのほほんとしていられるほど人間失格ではないつもりである。


   「シュレンを挑発したのは俺です。シュレンは悪くないんですよ。俺が意味もなくシュレンに喧嘩を売りました。」

   「ケント!それは言わなくて良いとっ……」


 言ってないよね。


   「ふむ……」


 皇帝は俺ん言葉を聞いて少し考える仕草をした後、再び口を開く。


   「だからといって軽々しく挑発に乗るなど騎士としてあるまじき行為である。よって罰として……」


 そこで皇帝は一端言葉を切った。


   「今日の日が暮れるまで騎士昇華訓練を受ける事を命じる。」

   「は……はい!!」


 うん?一瞬シュレンが言い淀んだ?

罰を与えてくれと懇願したのはシュレンなんだから、むしろ「はい喜んで!」くらいの返事をするもんだと思っていたんだが……


   「さて、ケント君とフィニ君には今夜の晩餐に招待しよう。それまで時間もある。時間がきたら迎えを寄こすから、それまで帝都内をゆっくり探索でもしていてくれ。」


 皇帝は最後にそう言って話を締め括った。

村を見捨てた理由は語られず……どうしましょう?(ォィ


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