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十二章 “とりあえず必要なのは地理”

 帝国騎士団シュレン隊は隊長シュレンを始めとした十五人からなる分隊で、シュレンを除けば副隊長のウルナ=タイ=カナルが指揮系統の頂点に立ち、下級騎士から順に二級騎士六名、一級騎士四名、特級騎士三名で構成される。


 シュレン隊は帝国騎士団の中では最小の部隊になるが、強さのランクで言えば上から三番目。それは少数精鋭による隊員間の連携の速さということもあるが、それ以上に隊長であるシュレンが帝国内でも屈指の実力者である事に依るところが大きい。

帝国内でも帝国騎士団を統括するハイラルという人物以外、シュレンに太刀打ちできる人間すらいないのだそうだ。


 以前、どこか別の場所で尖角竜と呼ばれるシャルパイアを討伐したという功績もあり、今回シュレンが強引に押し込んだカレイプス討伐に出向くことを認められている。

なお、フィニの世界にもシャルパイアは存在し、脅威度で言えばカレイプスより上であるとのこと……何者なんだよ、シャルパイア……


 ちなみに、シュレンが魔術を使おうとした際に被害が周りに出ぬよう指示を飛ばしていたのは副隊長のウルナである。


「では君達は異世界からの訪問者であると?」


 この世界での主な移動手段は馬車……馬はいるようだ。


 帝国は馬車で一日と半分ほどの距離にあるとのこと。


 シュレンとウルナのみが乗る事を許される隊長用という特別な馬車と、他の隊員が丸ごと押し込められる八人乗りの大型の馬車が二台、計三台の馬車が移動手段であった……なんて嫌な勝ち組と負け組の縮図なんだろう、とか考えてしまう俺は負け組みなんだろうな……


 俺とフィニはその隊長用の馬車に乗る事を許され、もともと四人用である隊長用の馬車にシュレン、ウルナと共に乗せて貰っていた。ウルナは御者台に座って栗毛の丈夫そうな二頭の馬の手綱を握っている。


 ウルナはシュレンと同じく金髪だが、割と短く切り揃えているシュレンとは違い、肩口まではありそうな長い髪を後ろで一纏めにして尻尾のように垂らしている……ポニーテールってやつだ。

 碧眼で掘りは深く、優しさを感じさせるゆったりとした印象を受ける。美形だが実直に眉根を引き結んだシュレンとは、また違った方向性な顔付である。

 声色は男としてはやや高く、女としてはやや低いくらいの中性的な感じ。お陰で見た目や声から性別が判断し辛い。騎士なんだし、多分男だと思われる。

ちなみに一人称は『オレ』だった……カタカナ表記な感じのイントネーションが良い感じ。


「まあ、概ねそんな感じです。」


 とりあえずシュレンは信用できると判断した俺とフィニはこちらの世界の情報を探るためにもシュレンと、シュレンが信用しているというウルナに事情を打ち明ける事にした。


 もっとも、フィニの言霊についてと、謎の声が神だと名乗った事は念のため伏せておいた。


「なるほど。どうも見かけない格好だと思ったら、そう言う事か。私はてっきり遠方のカテアテ辺りからの旅人だと思っていたよ。あそこは変わり者が多いと聞くしな。」


 俺の話に対し、まずシュレンが理解を示す。


 変わり者扱いされた事に対しては怒るべきなんだろうけど、そんなことしてたら話が進まないのでここはスルーしておく。


「隊長!そんな簡単に鵜呑みにして良いんですか!?」


 やや楽観的な感があるシュレンにウルナが切迫した声を出す……なんか苦労人の空気があるよねウルナさん。


「まあ半信半疑といったところではあるがな。」


 異世界から来ましたなんて話をいきなり信じたらそれこそ変人だろう。


「だが、彼らはカレイプスを倒し村を救っている。ケントは私の申し込んだ決闘を正々堂々受けてくれた。悪人ではない。それに、そんな嘘を吐く意味があるとも思えないしな。だから、信じるよ。」


 爽やかな笑顔でシュレンは言い切った。


「隊長がそう言うのであればオレは逆らいませんよ。」


 そんな迷いのない様子のシュレンにウルナは折れた。


「そうか。ではこの世界では知らぬ事も多いだろう。何でも聞いてくれ。」


 期待通りの反応のシュレン。


「ではまず、ここがどこなのか地理的な物から教えて欲しいのですが……」


 地理を知っているのと知らないのでは大きく違う。そういう考えからか、フィニがまずそう口を開いた。


「ふむ……」


 どう説明すれば良いか迷うようにシュレンは顎に手を当てて少し考える。

やがて考えが纏まったのか、一度頷き、ゆっくりと口を開いて……


「分からん。」


 俺とフィニは思い切りずっこけた……アホなのかこいつは!!ああ、アホでしたねぇ!!


「ウルナ、説明してやってくれ。」

「隊長……オレ、別の部隊に移ろうと最近考えているんですけど、どう思いますか?」

「ふむ、悩みでもあるのか?まあその話は後でじっくりしようじゃないか。今はこちらの方が重要だ。」

「ハァ……」


 村に来た時は実直で随分と格好良い感じのしたシュレンだが、こうして話してみると結構残念な感じである事が分かってくる……ウルナさん、ドンマイ!


「では隊長に代わり説明させていただきます。まず今オレ達がいるのが大陸の中心に位置するルヴィス帝国になります。ルヴィス帝国は北にフィガル神国、東にアメリア王国、南にネルト宗国、西にカテアテ集合国と四つの国に囲まれる形で存在しています。」


 ふむふむ……何となく簡単な地図は頭に描けた。


「さらに、国に属さない自治州や蛮族の集落などが国境線同士の隙間や、時には国の中などにいくつかあります。そして、大陸の外――広大な海の向こうに薄らと見る事が可能な広大な土地が魔人や亜人と云った者達の住まう異人領とされています。」


 馬車を引きながら走る馬達を巧みに操りながら、ウルナはゆっくりと言葉を紡ぎ続ける。


「魔人とか亜人ってのは?」

「言ってみれば『人ならざる者』といったところですね。見た目はオレら人間とそれほどの違いは無いとのことですが、人間よりも魔力に優れる者を魔人、力に優れる者を亜人と言うそうです。」


 異人ね……なんだか随分とファンタジー染みてるけど、ウルナは大真面目なんだからここで茶化しちゃいけないよな。


「『されている・・・・・』と言う事は、あまり詳しくは無いのですか?」

「遥か昔には交流もあったという話ですがね、ある時を境に異人領へ渡った者達が帰ってこないようになり、それ以来交流も途絶えてしまったとか。」


 つまり、詳しい情報など全くないのだ――という結論だった。


「異人の存在は証明されておりません。ただ、海の向こうからやってくる人間に似た姿をした者たちがいた、という記録が残っている為に、“いる”事になっているのです。」


 「まあ、オレは出会った事もありませんがね」と―暗に『異人の存在を自分は信じていない』と告げる様に―そう締めてウルナの地理に関する講釈は終わった。

 とても分かりやすい説明で、覚える事がとても苦手な俺でも、何とか理解は出来たと思う。


 ちなみに今いる場所は帝国領内では帝都であるランクルートの南方に位置する草原で、そのままランクルート草原と呼ばれているらしい……現代日本に生きていたせいか、町を出るとそこは草原と言うのがどうにも実感が湧かなくて困る。そもそも、町と町を行き来するのに一日掛るというのだから驚きだろう。


「さて、他に聞きたい事は?」


 地理に関する講釈が一段落した所でシュレンがそう口にする。

 確かに聞きたい事は沢山あるんだが、なんだかシュレンには聞きたくない気分だ。


「勇者とは何ですか?村長が頻りにケントの事をそう持て囃していたのですが……」


 何を訊こうか、シュレンに訊いても良いものか……なんて悩んでいたら、そうフィニが疑問を口にした。

確かにそれは俺も気になる事だ。


「勇者か……それならば私が説明しよう。『鳳印ホウイン』は幼い頃よりよく親にも聞かされたしな。」

「「ホウイン?」」


 俺とフィニの声が重なった。

『世界観説明章 地理編』でした。

こうやって話を進めながらゆっくりと世界観は明かして行くつもりですので、まあ推測など程々に楽しんでいただけたら幸いです^^

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