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十一章 “帝都への招待”

 勿論、フィニが俺達を殺そうとするはずなんて無いから、言霊の威力も俺とシュレンの意識を奪う程でもなかった。


「痛い……」


 痛くて泣きそうだ。


 きっとフィニは分かってないんだ……意識が飛んだ方が楽な事もあるって……


「う……くっ……今のは一体?」


 シュレンはそんな事を呟きながらゆっくりと体を起こす。

同時に俺もシュレンに隙を見せぬよう起き上がった。


「おい今の……」

「ああ、隊長を地面に倒れさせるなんてハイラル騎士団長以外に出来る奴がいたのか!?」

「ケントとやらと一緒にいるるあの女が何か言っていたが、魔術が発動した形跡はないし……まさかあれが勇者の力だと言うのか!?」

「しかし、その割にはケントも一緒に倒れたぞ?」

「力が膨大すぎて扱えていないのか?」


 次々とそう囁き始める騎士達。


 なんだか話が勘違いの方向に収束し始めているような気がする。


「いや、今のは……」

「凄いなお前!!」


 全部フィニの仕業です。俺は何もしていません。と、そう言おうとして、その前にシュレンに割り込まれた。


 地面にキスする羽目になったというのに何て良い笑顔なんだろう……


「すまない。私は君を……ケント殿を見くびっていたようだ。無礼を詫びさせて頂きたい。申し訳なかった。」


 そう言ってシュレンは俺に頭を下げる。


 その表情は本当に申し訳ない事をしたという反省に満ちていて、もの凄く心苦しくなった俺は思わず謝り返した。


「いや、こっちこそすいません。よくわからない意地を発揮して変に挑発したりして……ごめんなさい。」


 悪い事をしたときには素直に謝れる男になれ、とは俺の父の教えだ。

残念ながらシュレンに先に謝られたけど……


「そんな!ケント殿は謝らなくても良いのです!!大体私がケント殿に武器を向ける事自体既に間違っていました。」


 ああ、うん……それは確かに。


「カレイプスを討伐したのはケント殿だと村長も言っておられましたからね。我々が間に合わなかったのに、この村が無事なのはあなた方がいたお陰だった……まさかそのような方に一時の感情だけで決闘を申し込むなど……どうか、この未熟な私を許してほしい。」


 そう言ってシュレンは再度頭を深々と下げる。


 う〜ん……悪い奴じゃないし真面目な人なんだけど……挑発したのは俺だし、嗾けたのは村長だし……

あれ?シュレンってどこが悪いの?


 ああ、そうか……そもそも俺達が恩人であるというそこに考えが回っていなかった頭が悪いのか……


「そこまで言われて許さないような人で無しじゃないぜ、俺は。」

「では!」

「ああ、許すさ。だから、挑発したりした俺の事も許してくれるか?」

「はい!」


 そこで俺とシュレンは握手を交わす……友情の誕生だ。


「大丈夫ですか?」

「ああ、フィニにも迷惑をかけたよな。悪い。」


 まさか罰として文字通り叩き潰されるとは思わなかったけど。


 喧嘩両成敗か……フィニってどことなくお母さん的だよな。


「ところで、貴女は?」


 そこでシュレンがフィニに声をかける……こいつはフィニにすら気付いていなかったのか……


「あ、はい。私はフィニフィ……フィニと申します。」


 フィニはフルネームを名乗ろうとして、途中で止めた。


 フィニのフルネームは『フィニフィアン・シュルツ』。対してシュレンは『シュレン=クル=ルグタンス』。ついでに俺は『來生賢人』。

つまり名前の違いのせいで変に疑惑を持たれなくするためだろうと俺は勝手に推測した。


「そうですか。ではケント殿、フィニ殿。先程は大変迷惑をおかけしました。どうか、お詫びをさせていただきたく、帝都までご一緒していただけないでしょうか?」


 そう、シュレンは言った。


 まあなんだ?

シュレンのフィニを見る目が若干熱っぽいのは、まあフィニは美人だし許してやるとして、俺とフィニを帝都に招くって?

なんか……どっかおかしい気がするぞ?

……ああ、分かった。出会って五分で決闘騒ぎがヒントだ。


 シュレンは行き当たりばったりなんだ……もしかして、俺より馬鹿なんじゃ……

ほんと、困難が隊長で大丈夫か?帝国騎士団とやらのの諸君……


「ああ分かった。折角だからそうさせて貰うよ。フィニも良いだろ?」

「ええ。」


 フィニも笑顔で頷いた。

シュレンの目線に気付いている様子無し。


 ちょいと鈍いんでないかい?


「たださ、ケント殿なんて他人行儀な呼び方やめろよ。さっきまで貴様とかお前とかだったじゃん?仲直りもしたわけだし、ケントって呼び捨てにしろよ。な?シュレン。」

「そうですか?ではそうさせていただきましょう。」


 なんか堅い奴だな。

実直と言うか何と言うか……


「それでしたら、私の事もフィニと呼んでください。その……敬称をつけられる事に慣れていないので……」


 そこにフィニがおずおずと発言する。


 きっと化物なんて呼ばれる事に慣れ過ぎているんだろう……

フィニだったら様をつけて呼んだって良いくらいなのに……


「はい、分かりました。」


 シュレンはそれだけだったら思わず見蕩れてしまいそうなほど爽やかな笑顔でそうフィニに応えた。


「隊長、帰還しますか?」


 そこに隊員の一人であろう騎士がこっそりとシュレンに声をかける。


「そうだな。カレイプスを討伐したという勇者を迎えての帰還だ。そう伝令を飛ばしておいてくれ。」


 シュレンはその言葉に少しだけ黙考し、そして、そう隊長の表情で告げた。

隊員はそれに敬礼で応え、すぐに他の隊員に内容を伝える。


「さて、ではケント、フィニ、我々は今から帝都ランクルートに帰還するが、よろしいか?」


 伝令の手段が伝書鳩なのか、携帯電話みたいな遠距離通信機器なのか、それとも別の何かなのか、帝都とやらの文明レベルが気になるところだが、それを見る前にシュレンに声を掛けられた。


 『帝都ランクルート』か……多分町の名前なんだろうな。


「えーと……ああそうだ。村長さんとこには挨拶しとかないとな。」

「そうですね。」


 そういうわけで、俺とフィニは村長の前に並ぶ。

いつの間にか村長の奥さんと娘さんも一緒にいた。


「そんなわけで村長さん、お世話になりました。」

「お世話になりました。」


 そう言いながら俺とフィニは一緒に頭を下げる。


「とんでもない!こちらこそ命を捨てねばならぬ所を助けていただいて、本当に感謝してもし足りないほどです。また我々の村にお越しください。その時は村人総出で歓迎いたします。」


 村長は、そう笑顔で返事してくれた。


 わざわざカレイプスを倒した手段見たさにシュレンを挑発したような子供っぽい村長とは思えないほど、それは大人な返事であった。


「おにーちゃん、行っちゃうの?」


 村長の娘である女の子が俺の服の裾を軽く抓みながら、やや涙目で俺にそんな事を言う。


 う゛……ここで、俺が出発したら女の子が傷付いてしまう……

だからって残っていては何も分からないし、連れて行くわけにもいかない……

だったら、俺は絶対にこの女の子を傷付けないように……


「ごめんな。俺は行くよ。」

「そんなぁ……おにーちゃん、行かないで?」


 そんな泣きそうな顔で俺を見ないでくれよ。


「俺は君の事を忘れない。君も俺の事を忘れないでいてくれよ。そしたら、俺はきっとまた君に会いに来るからさ。」

「ほんと?」

「ああ、本当本当。俺のせか……国ではね、嘘を吐いたら針を千本も飲まなくちゃいけないんだ。だから俺は嘘をつかない。君も嘘ついちゃ駄目だよ?」

「うん!私嘘つかない!!私、おにーちゃんのこと絶対忘れないからね!」

「ありがとう。」


 そう言って笑って、女の子は俺の服から手を離した……これで女の子は傷付かないだろう。


「……」


 気付くと、フィニとシュレンが唖然とした表情でこちらを見ていた。


「どうかした?」

「いえ、ケントは……育児の経験でもあるんですか?」

「ブッ!?」


 まさかのフィニの爆弾発言だった。


「ケントは聊か子供の扱いが手慣れているように私にも見受けられるな。まさか、ケントは倒錯嗜好の持ち主なのか?」


 シュレンまでそんな事を言う。


 倒錯嗜好って何だ?ロリコンって意味か!?


「そんなわけあるかい!!」


 とりあえずそうツッコまざるを得なかった。

書き貯めしていた分はこれで最後です。

試験も近く、なかなか小説を書いている時間も少ないので、以後更新は不定期になります。

申し訳ありません。


さて、ここまで割と一気に更新してきましたが、皆さんこの小説いかがでしょう?

感想などおありでしたら、一言でも残していただけると嬉しいです。

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