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十章 “喧嘩両成敗”

 えーと……1、2、3、……6匹……


 何度数えても6匹の炎の獣がシュレンの足元に出現している。

何だよそれ……反則でしょ?


「卑怯だぞ!決闘ってのは一対一じゃないのか!!」

「何を言うか!魔術は我が技術であり我が身の一部!故にこれらは全て私の分身たちだ!!」


 マジュツね……あーはいはい、魔術ですか……なるほどなるほど。


「つまりシュレンとやらは丸腰の人間相手にも大勢でないと怖くて戦えない臆病者と言う事でオーケー?」

「貴……様………まだ私をそうも愚弄するか!」


 あれ?プライドを煽って魔術とやらを引っ込めさせる作戦だったんだけど……

もしかして、失敗?


「許さん!その罪!全霊をもって贖わせてやる!!掛れ!!」

「ってぇ!!やっぱりそいつら嗾けてくんのかよぉ!!」


 シュレンが右腕を振った瞬間、6匹の炎の獣が一斉に俺に向かって襲いかかってくる。


 俺は右方向に身を投げ捨てるように飛び込んで何とか初撃は回避。

次の攻撃が来る前にすぐさま立ち上がる。


 炎の獣は散開し、6匹で円を描いて俺を取り囲んでいた。


「これはアレですか?逃げ場無しってやつですね……」


 そんな事をぼやく。


 炎の獣は俺から絶妙な間合いを取りながら、いつでも飛びかかれる体勢を取って俺を睨み続けている。

俺が一瞬でも隙を見せようものなら一気に襲いかかってくるだろう。


「謝れば、今なら許してやるぞ?」


 そこにシュレンのありがたいお言葉。


 そうだ謝ってしまえ。

そうすりゃ騎士道を重んじるであろうシュレンの事だ。

戦意の無い相手に襲いかかるような真似はしまい。


 だから俺は一度ごくりと喉を鳴らし……


「御免だね。お前みたいな頭の悪そうな奴に下げる頭は持ってねぇんだよ!!」


 気付けばシュレンに向かって一気に駈け出していた。

丁度炎の獣同士の隙間にシュレンは立っていて、即座に殴りかかれば炎の獣に襲われる前に一発くらい殴れるかも知れない。


「愚かな……だが、その心意気は認めてやろう!」


 シュレンは腰の剣に再び手を掛け、抜刀する。

同時に、周囲から炎の獣が襲いかかって来た。


 予想より動きが速い。

俺とシュレンの距離は約2メートル……一歩で踏み切れなくもない距離だ。

だが、この速度では俺の拳が届くより、炎の獣が俺に突撃する方が早い。だから……


「だからテメェはアホなのさ!」

「何!?」


 俺は殴るのではなく、そのままダイブしてシュレンの脇下を潜り抜ける。


 殴るにはロスタイムがあるが、もともと身体能力の高い俺だけに、そのまま飛び込むなら殴るよりも遥かに速い。


 結果、俺を追いかけていた炎の獣はシュレン自身が壁となり、そのまま“壁”に激突する。


「ガッ……ハァッ!」


 シュレンは右手の剣を一閃、炎の獣を薙ぎ払った。

故にシュレンにダメージは通っていない。

しかし、切り札まで避けられては、シュレンの精神的ショックは相当だろう。


 そう思ったのだが……


「なるほど。これでも駄目か。面白い。」


 なんかむしろ良い表情をしていた。


 あれ?切り札って破られたらショックなもんじゃないの?


「ハイラルにはとても敵わないが……貴様、ケントと言ったな?」

「ああ、そうだけど?」

「良いな。貴様、丁度良い。私は実力が近い相手と戦いたかったのだ!!」


 ヤバい!?なんか凄い良い顔してる!


「いかん!隊長は本気を出す気だ!」

「総員!命を捨てる覚悟で挑め!!」

「「「「「ハッ!!」」」」」


 待って!?とばっちりが周りに行かないようにする人たちが命懸け!?

銃口を直接向けられる俺はどうすればいいの!?

死にたくないんだけど!!


「【精霊よ】」


 今度は剣を握ったままシュレンは唱え始める。


「ケント、反省しましたか?」


 しかし、そこでシュレンの動きなど何でも無いかのような気楽な口調で背後からフィニに話しかけられた。


「うん!反省した!もう二度と軽々しく挑発なんてしません!!」


 とてもシュレンから目を話す事など出来なかった俺は、その姿勢のまま心の底からそう叫ぶ。


「そうですね。それなら……」


 フィニはそこで一旦言葉を切った。その間にもシュレンの詠唱は続く。


「【崩落を求める破滅の理】」


 ゴゴゴゴと地響きが鳴り響き、シュレンの持つ剣が何やら怪しい輝きを帯び始める。


「【剣に纏いて大地を切り裂く力となれ】」


 ピッカー!と眩しいほどの輝きを放つ剣をシュレンは上段に振り被り、俺との間合いなど関係なくそのまま振り下ろす……振り下ろそうとする。


「≪止まれ≫」


 フィニが小さくそう呟いた瞬間、シュレンは剣を上段に構えた体勢のままピタリと制止する。


「なっ!?なんだこれは!!貴様!何をした!?」


 俺は何もしてないけどね。


 この後、何が来るか何となく分かった。

だから俺は何とか堪えようと両足を踏ん張ることにした……意味無かったけど。


「≪喧嘩両成敗≫」

「ブゲッ!」

「グハッ!」


 上からの膨大な圧力が俺とシュレンを纏めて叩き潰した。

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