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破滅エンドが確定しました。悪役令嬢ですが知ったこっちゃない、逃げる。  作者: 西園寺百合子


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37/50

37 学園時代の思い出話で、涙涙。

悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法

皇太子  アルト・アズリオン    水魔法

皇太子弟 シエル・アズリオン    風魔法

婚約者  リリアーヌ・マーロウ   雷魔法

ヒロイン ミレイア・ノクス     光魔法

先生   カサンドラ

あの日はたしか、パーティーがある数日前。

エスコートをお願いしようと、アルト殿下にお願いにいったときだった。

それまで近づきがたい雰囲気だったけれど、両親に「誘ってもらえないなら、自分から誘いなさい」と言われて、仕方なく、アルト殿下に声をかけた。


『アルト殿下』と私が呼んだら、アルト殿下は害虫でも見るような顔で私を見た。

その一瞬の冷たさまで、妙に鮮明に思い出される。

嫌われているとわかっていたけど、推しからのあの視線はキツかった。


『君に名前で呼ばれる筋合いはない。婚約は親が勝手に決めたものだ。学園では他人だと思ってくれたまえ』

そう言われて、私はアルト殿下と仲良くなるのを、会話をするのを諦めたんだ。

廊下の端で一人、視線を伏せた自分の姿まで思い出す。


それが、こうなるんだもんね。

人生とはわからないものだ。

ゲームの中のアルト殿下は、真面目で誠実な人だった。

立ち絵の中の凛とした表情や、選択肢で見せる優しい反応が頭に浮かぶ。

隣国の皇太子は逆に、少しいい加減で、いわゆるチャラ男。

軽口を叩きながら場をかき回すような、そんなキャラクターだった。

ゲームの設定で2人は、対照的なキャラとして描かれていた。


実際に学園にいるとき、アルト殿下は真面目で誠実だと思っていた。

課題にもきちんと向き合い、他者への態度も崩さない姿を遠目に見ていた記憶がある。

自分が王族であることを鼻にかけることもなく、他の生徒と同等に扱ってもらいたいと談判していたし。

掃除や準備なんかも、他の生徒と同じようにしていた。

ホコリまみれになったり、泥まみれになっていたり。

本当に王族なんだろうかと、微笑ましく見ていたこともある。


人に優しく、誰にでも気さくに話しかけてもいた…私に以外は。

私の推しは、最高にかっこよかった。

避けていたわりに、けっこう見ていたな、私。


もしも、強制力がなかったら。

もっと素直に言葉を交わしていた未来を、ぼんやりと想像してしまう。

学園を一緒に散歩したりしていたんだろうか。

木漏れ日の下で並んで歩く光景が頭に浮かぶ。

試験前には図書室で一緒に勉強していたりして…

ページをめくる音や、静かな息遣いまで想像してしまう。


アルト殿下が座った私をもう1度抱きしめてくれた。

背中から包み込む腕に、先ほどよりも少しだけ力がこもる。

「ごめんね。強制力だったとしても…ごめん」

低く落ち着いた声が、すぐ近くで響く。

私が考えていることがわかっているように謝ってくれるんだから。

本当に、私の推しは最高にかっこいい。


アルト殿下との結婚を決め切れないまま、神殿での修行は続いていた。

「まあ!ヴェロニカ様はそんな魔法すら使えませんの?」

ミレイアが大きな声でそう指摘する。

わざとらしいほどよく通る声で、周囲の視線を一気にこちらへ引き寄せる。

周囲の神官たちが小さく息を呑むのが分かった。


神殿で本格的に魔法を学び始めているわけだけど。

どうも上手くいかない。

もともと使える炎魔法も、たいして上達していなかった。


修行をしている部屋の高い天井には淡い光を吸う石がはめ込まれ、空気そのものが少しひんやりとしている。

白い石造りの壁に囲まれた空間は静かで、魔力の気配が薄く漂っている。

その静けさが、かえって失敗や未熟さを際立たせるようで、落ち着かなかった。

むしろ、神官が怒ってくれるならいい。

私が『特別』だからか、変に気を遣われて「こういうときもあります」なんて言われるから。

余計に居心地が悪かったりする。

そして、ミレイアにバカにされるのだ。

神官とミレイアを、足して二で割ってくれないだろうか。

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