36 ストーリーの強制力と、打算。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
疲れた。
精神的に疲れた…
ヒロインって、あんな性格だっけ?
乙女ゲームを思い出してみる。
たしか、人懐っこくて優しいキャラクターだった。
ちょっとドジっ子なところがあったけど、そこも可愛い。
誰からも愛される、という設定だったと思う。
今日会ったのは、本当にヒロインのミレイアだったんだろうか。
考えてみたけど、どうにもわからない。
学園にいるときは、必死に避けてきたんだもん。
目すら合わせないように努力していた。
『あれと仲良くは無理だろ。あんな腹黒…』とアルト殿下が言ったのを思い出した。
腹黒。
本当にあれが、ヒロインだったの?
愕然とする。
ゲームのストーリーの強制力って、どれだけすごいんだ。
「今日は神殿に行ってきたんだろう?どうだった?」
そう言って、アルト殿下が隣に座る。
私とアルト殿下は一応、婚約をし直したけど。
まだ反対派も多いので、部屋は以前と同じところを使っている。
のだけど…ちょくちょく、アルト殿下が私の部屋に現れるようになっていた。
「アルト殿下、何度も言いますが…」
「『ここは私の部屋ですから、アルト殿下が来るようなところではありません』?じゃあ、ヴェロが俺の部屋に来てよ。それで、解決」
そう言われて、ため息をつく。
アルト殿下の部屋に行ったら行ったで、今度は帰してもらえない。
「もうさ、一緒の部屋にしちゃえばいいと思うんだよね」
結局、こう言われる。
それができないから、別々のお部屋なんですよ。
「神殿で、ミレイアさんとお会いしました。一緒に光魔法を学ぶそうです」
そう伝えると、アルト殿下が驚いていた。
「ミレイアって…ミレイア・ノクス?あ、今はただのミレイアになったんだね」
アルト殿下はそう言って、自分で納得している。
「ええ、いらっしゃるとは聞いていたんですけど。まさか一緒に学ぶことになるとは思わなくて驚きました」
そう伝えて、悩む。
ミレイアに言われたことを、アルト殿下に伝えるべきだろうか。
アルト殿下はゲームの攻略キャラクターだった。
腹黒とか言ってたけど、本当はミレイアのことが好きなのかもしれない。
隣国の皇太子と結婚したから、私を探していたのかもしれない。
だったら…
「どうかした?」
アルト殿下の声に、体がビクっと反応した。
「…なにかあったんだよね?」
アルト殿下が私の隣に座る。
私はまだ、アルト殿下との結婚について悩んでいる。
だったら、今ならまだ、アルト殿下がこの結婚をやめたいといっても傷つかないかもしれない。
そんな打算的な考えが浮かんだ。
「実は…」
アルト殿下に、ミレイアはまだアルト殿下と結婚したいと考えていることを伝えることにした。




