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破滅エンドが確定しました。悪役令嬢ですが知ったこっちゃない、逃げる。  作者: 西園寺百合子


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34/50

34 元ヒロインの言葉に、激震。

悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法

皇太子  アルト・アズリオン    水魔法

皇太子弟 シエル・アズリオン    風魔法

婚約者  リリアーヌ・マーロウ   雷魔法

ヒロイン ミレイア・ノクス     光魔法

先生   カサンドラ

それにしても、まあいいかで選んだの?

「え…好きだから、結婚したんじゃないの?」

激昂しているミレイアから少し距離をとりつつ、疑問に思ったことを尋ねてみた。

「はあ!?好き?何それ!皇太子妃になりたかったから結婚したのよ!それ以外に理由なんてあるわけないでしょ!?だって、攻略対象3人なのよ?3人しかいないの。皇太子のどちらかを選ぶの、当然じゃない!」

語気がさらに強くなり、髪が揺れるほどの勢いで首を振る。

声が響く。

そんなに大きな声を出したら、外にも聞こえるんじゃないだろうか。


攻略対象は皇太子と騎士と隣国の皇太子の3人だけ。

ミレイアの言うとおり、乙女ゲームとしては、攻略対象が少ないのは確かだ。

でも、だからこそ、1人1人とじっくり話せるし、じっくりじっくり相手を観察できる。

眼福…

スチル集め、楽しかったなと、ゲームをプレイしていた頃を思い出した。


「私はね…」

ミレイアがそう話始めて現実に引き戻された。

危ない、危ない。

妄想の世界に行くところだった。

「私は、誰からもチヤホヤされるお姫様になりたかったの。だって、ヒロインなのよ?私が一番可愛くて、一番愛されて当然なの!」

その言葉と同時に、胸を張るように腕を広げる。

だがその動きは誇らしさというより、傲慢な感じがした。

だから、同情することなく、引いてしまった。


それにしても、ミレイアはいつの話をしているんだろう。

学園にいた頃なら、チヤホヤされていたじゃない。

乙女ゲームのヒロインだったけど、もうゲームのストーリーは終わった。

終わってもう、何年も経ってるのに。


「だいたい、アルトの好感度が上がらなかったのは、あんたのせいなのよっ!あんたが邪魔したからでしょ!」

ミレイアにそう言われて、ますます戸惑った。

「私?…私は、なにも…」

言いかけると、またミレイアに肩を押された。


「そう!あんたは何もしなかったの!悪役令嬢なのに、なんで私をイジメないのよ!ちゃんと役割果たしなさいよ!」

足音を踏み鳴らすようにして詰め寄ってくる。

怒りのあまり、声が裏返りそうになっているようだ。

そう言われても。

「ミレイアさんをイジメる理由が、私にはなかったので…」

本当にただそれだけのことだった。


私がイジメなくても、私がイジメたことになっていたし。

周囲の空気が勝手に物語を作っていくのを、ただ見ていただけだった。

ゲームの強制力もあって、私はちゃんとイジメたことになっていたはず。

だからちゃんと悪役令嬢の役割は果たせていたと思うけど。


「挙句!卒業式、来なかったでしょ?!あそこが見せ場なのに!あそこで、あんたがギャフンってされないと、私のハッピーエンドが成立しないのよ!現に、私、修道女になっちゃったんですけどっ?!」

叫ぶように言いながら、両手を振り回す。

怒りで息が荒くなり、肩が上下している。

まあ、たしかに修道女ですね。


でもそれは、私のせいなんだろうか。

「ミレイアさん、落ち着いてください。あの…神殿を案内いただけないなら、今日は帰ります」

この場の空気に耐えきれず、視線を逸らしながら一歩引く。

ここは逃げたほうがよさそうだと思った。

「ちょっと待ちなさいよっ!話は終わってないんだから」

腕を強く掴まれた。

「あんた、アルト殿下と婚約破棄しなさい。もともと、アルト殿下と結婚するのは、ヒロインである私の役目なんだから」

ミレイアが自信満々にそう言った。

声に迷いがない。


私とアルト殿下との結婚については、まだ悩んでいる。

それは事実だ。

でもどうしてだろう。

こいつにだけは、アルト殿下を譲りたくない。


何も言わず、ミレイアの手を振り払って、情けないけど、逃げるように神殿から帰った。


疲れた。

神殿から帰る馬車の天井を見上げながら、心の底から息を吐く。

精神的に疲れた…

ヒロインって、あんな性格だっけ?

窓から差し込む光がやけに眩しく感じられて、私はその場で少しだけ視線を落とす。

胸の奥で引っかかった違和感を確かめるように、ゆっくりと記憶をたぐった。

乙女ゲームでの彼女を必死に思い出してみる。


たしか、人懐っこくて穏やかな雰囲気のキャラクターだった。

ふわりと花がほころぶように笑い、身分や立場を問わず誰にでも自然に寄り添っていく。

そんな、将来の聖女を思わせる少女。

少し抜けたところもあって、よく転んだり物を落としたりしていたけれど、不思議とそれすら愛嬌になってしまう。

守ってあげたくなる危うさと、周囲を和ませる優しさを持った、誰からも愛される存在だったはず。

だからこそ、皇太子や騎士に愛されたのだ。


今日会ったのは、本当にヒロインのミレイアだったんだろうか。

目の前で怒鳴っていた姿を思い返すと、どうしても記憶のキャラと結びつかない。

考えてみたけど、どうにもわからない。

学園にいるときは、必死に避けてきたんだもん。

廊下ですれ違いそうになるたびに、別の道へと逃げていた自分を思い出す。

目すら合わせないように努力していた。

イイ性格だったのはなんとなく覚えているけど。


『あれと仲良くは無理だろ。あんな腹黒…』とアルト殿下が言ったのを思い出した。

腹黒。

本当にあれが、ヒロインだったの?

自分の記憶と現実のどちらを信じればいいのか分からず、思わず眉を寄せる。

愕然とした。

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