30 いい夢が見られて、幸せ。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
「色々と大丈夫だから…1つ、検査を受けてみてくれない?」
アルト殿下にそう言われて、きょとんとした。
「俺が治ったの、奇跡みたいなんだ」
アルト殿下がそう言ってへらっと笑った。
最推しのへら笑いは可愛い。
「でも、俺はヴェロの魔法なんじゃないかと思ってるんだ。目が覚める前に、確かに俺はヴェロの声を聞いたから」
そう言われて、首を傾げる。
「私の声が聞こえたのと、魔法と、どんな関係があるんですか?」
思わず素直な疑問が口から出る。
そもそも私が使えるのは、炎魔法だ。
そう認識しているからこそ、余計に話が結びつかない。
「きのう、話してくれただろう。ヴェロは異世界から来たって。それは、ミレイア嬢と同じということだよね?だったら、ヴェロも光魔法が使えるんじゃないかな?」
アルト殿下がそう言った。
「それは…ないと思いますけど」
戸惑いながらも、ゆっくりと否定する。
魔法の属性は、1人につき1つだ。
私はすでに炎魔法が使えるから、光魔法が使えるはずがない。
「一応、検査だけでもしてみて」
そう言われて、神殿に連れてこられた。
巨大な神殿は、天へと伸びるような高い柱に支えられ、荘厳な静けさに包まれていた。
色鮮やかなステンドグラスから差し込む光は床や壁を神秘的に彩り、まるで神々の祝福そのもののように揺れている。
大理石の床を踏みしめながら進むたび、澄み切った空気はひんやりと肌を撫で、次第に重々しい緊張感を帯びていく。
足音は静寂の中で小さく反響し、そのたびに自分が神聖な領域へ足を踏み入れているのだと強く実感させられた。
6歳になると、自分の属性を確認するために検査を行う。
ただ私は、5歳のときに炎魔法を使えるようになってしまったため、検査はしていない。
けれど。
どうしてこんな大げさなことに。
アルト殿下と、なぜか王族の方々もいらっしゃっているではないか。
視線が多すぎて、歩くたびに背中がこわばる。
見世物状態だ。
重々しく水晶が7個運ばれてきた。
神官たちが慎重に台座へと並べていく様子は、神聖な儀式であることを物語る。
この水晶はそれぞれ、光・闇・水・炎・風・雷・土の属性があるものだ。
整然と並んだ色とりどりの光が、静かに存在感を放っている。
手をかざすと、自分の持っている属性の水晶が光るという代物だ。
「では、手をおかざしください」
うやうやしく神官にそう言われて、手をかざしてみた。
ゆっくりと指先を伸ばし、空中に向ける。
ぽわっと…全ての水晶が光る。
一斉に、色とりどりの光が同時に灯る光景に、時間が止まったような錯覚を覚えた。
「ん…?」
自分でも間抜けな声が漏れる。
神官が驚いて、水晶を見ている。
何度も瞬きを繰り返し、状況を確認するように私と水晶に視線を動かしていた。
「あ…いや、少しお待ちを」
そう言って、神官たちが別の水晶を運んできた。
明らかに想定外の事態であることが、その慌ただしさから伝わる。
同じように手をかざし、同じように全ての水晶が光った。
再び起こった同じ現象に、神官の動きが止まる。
「水晶の異常ではないようですね…」
神官と私で、目を合わせる。
「…1個ずつ触れてみてもいいですか?」
私がそう言うと「そうですね、そうしましょう」と神官に言ってもらえた。
何度やっても、結果は同じだった。
触れるたびにすべての属性が反応し、光が重なっていく。
私はどうやら、炎だけではなく、全部の属性を持っていたようだ。




