30 いい夢が見られて、幸せ。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
たくさん泣いて、たくさん話したら、疲れた。
さて困った。
「…どうやったら、夢から覚めるのかしら」
疲れたから、もうそろそろ寝たい。
ん?なんか変だ。
「寝たらいいんじゃないかな。夢の中で寝ると、現実では起きるっていうし」
アルト殿下がそう言った。
それは、聞いたことがある。
「そうですね。では、部屋に戻って休みます。アルトもしっかり寝て…ってなんか違うか。でも、明日も夢で逢えたら嬉しいです」
夢だと素直になれる。
「…夢なんだし、ここで寝ていけば?」
アルト殿下がポンポンと自分の隣を叩く。
「…なんてね」
アルト殿下がいたずらっ子のような顔をした。
「そうですね。夢だし、ここで寝ちゃお」
私がそう言ってベッドに飛び乗ると、アルト殿下がビックリしている。
「え?…ほんとに…本気?」
アルト殿下が驚いているの、面白い。
「はい、本気ですよ。こんなふっかふかのベッドでなんて寝られないもの。私の部屋のベッド、使用人の部屋のものと同じなんです。あ~、硬いベッドが嫌いってわけじゃないんですよ。それはそれで好き」
私が一気にしゃべると、アルト殿下がポカンとした顔で私を見る。
「でも、今、本当に寝不足で。それもこれも、アルトが怪我をしたからなんで。今日はこのふっかふかベッドでぐっすり休ませていただきます。あ!久しぶりに、アルト抱き枕、してもいいですか?」
久しぶりというのは、異世界にくる前のお話だけど。
我が家にあった、アルト殿下の抱き枕。
この世界には抱き枕という文化がなくて、抱き枕自体久しぶりなんだけど。
「え?ダキ枕って?」
アルト殿下がきょとんとしているから、抱きつく。
「抱き枕は、抱き枕ですよ~。アルト~、久しぶりに一緒に寝ようね~」
抱き枕にしてはややゴツゴツしているけれど、まあ仕方ない。
私の想像力が足りないんだろう。
「え?え?…え?」
アルト殿下があたふたしているのが面白いから、それでいい。
なんていい夢なんだろう。
今日はとてもぐっすり眠れそうだ。
「アルト…明日には目を覚ましてね。どうか、幸せになって…」
アルト抱き枕をぎゅっと抱きしめる。
私の最推しには、幸せになってほしい。
もう、処刑でもいいや。
どうせ、1度死んでるんだもん。
私の命をあげるから、クソ神、どうか、アルトの怪我を治してください。
そう思ったのか、口にしたのか。
そのまま眠りに落ちていった。
ずっと見ていたい夢だったのに、こんなに簡単に眠れてしまうのね。




