29 いい夢をみてたっぷりと、愚痴。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
「…起きたら結婚してくれるって、本当?」
アルト殿下が目を開けるなりそう言った。
「ええ。アルト殿下が元気に走り回ってくれるなら、結婚でもなんでも…だから、現実でも早く起きてくださいね」
私がそう言うと「そうするよ」とアルト殿下が笑った。
「さっき、アルトって呼んでくれただろ?アルトって呼んで」
「はい、はい。夢でも起きてくれたし、アルトって呼びますよ。あとは何をしましょうか?」
なんでもすると言った手前、なんでも言うことを聞いてあげる。
「…アルト、ごめんなさい。あなたに怪我を負わせてしまって」
アルト殿下が膝枕をしてほしいというから、ベッドに座らせていただいて膝枕をする。
夢なのに、結構重い。
「ヴェロのせいじゃないよ。俺の不注意だよ」
そう言われたけど、そうじゃないことはわかっている。
アルト殿下には、全てを話した。
「シエル殿下にも、なんとお詫びをしたらいいか…」
「その手紙はまだ持ってるの?」
アルト殿下に言われて、少し言いよどむ。
でも、どうせ夢だし。
「はい。捨てるのも怖くて…本当に情けない話です」
捨てて、誰かにうっかり見られたらと思うと捨てられなかった。
「ほかには?俺に何か隠していることはある?全部話して」
アルト殿下がそう言うから、本当に全部話してしまった。
異世界から来たこと、ここがゲームの中だったこと。
アルトは私の最推しだったこと、でも、破滅エンド回避のために好きだと言えなかったこと。
せっかくゲームのストーリーが終わったのにシエル殿下の側妃にされたこと…
「私は、アルト推しなのにヒドくない?なんで10歳も下のシエル殿下なの~…いや、可愛いけど。弟みたいで可愛かったけれども!同じお城にいるのに、アルトを見られないなんてヒドイと思わない?」
最後はもう、愚痴になってる。
アルト殿下はちょっと引いていたけど、笑ってくれた。
「そんなに俺が見たかったなら、どんどん見にこればよかったのに」
アルト殿下がそう言った。
「そういうところよ。あなたのその、自分を中心に世界が回ってるって思ってるところがムカツクの!行けるわけないじゃない!私、シエル派の家の娘なのよ?…いっつも勝手なことばっかり言って。私がどれだけ、アルトのことを考えて行動してたと思うのよ。…ムカツクのに、好きなんだもん。ムカツク~」
愚痴って泣いて、愚痴って泣いて。
私の愚痴を、アルト殿下はちゃんと聞いてくれた。
夢の中のアルト殿下も、優しい。
いい夢だ。




