28 睡眠不足も限界にきて、夢見。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
あの日から、部屋の外に出られなくなった。
アルト殿下が元気になられるのを祈りながら部屋でじっとしている。
息をひそめて、存在を消して、ただじっとしていた。
ときどき、リリアーヌ嬢が部屋の外まで来てくれているようだった。
私には専属の侍女がいないから、どんな内容で来てくれているのかはわからないけど。
リリアーヌ嬢に会うのも怖い。
誰もかれも、ルージュリス家の使いに見えて恐ろしい。
私はアルト殿下を殺したいわけじゃない。
シエル殿下が王になろうが、アルト殿下が王になろうが、私には関係ない。
でも、誰も殺したくない。
みんな幸せになってほしい…
アルト殿下が怪我をしてから、眠れなくなった。
ときどき、扉の外で侍女が話している声が聞こえてくる。
アルト殿下の状態はよくないみたいだ。
もし、死んでしまったら…
何日も何日も眠れなくて、ある夜、とうとう幻を見た。
目の前に、光る扉が現れたのだ。
もしかしたら、アルト殿下より先に私にお迎えがきたのかもしれないと思った。
だから、迷わず扉を開ける。
目があけていられないくらい眩しくて、扉の中に入ったら、別の部屋の中にいた。
「…ここは?」
キョロキョロと部屋の中を見回した。
私の部屋よりずっと広くて、家具も超高級な感じの物ばかりが並んでいる。
ベッドで誰かが寝ているようだから、そっと近づいてみた。
遠目で見てもそうかなと思ったけど、アルト殿下だった。
てっきり、あの世に来たと思ったけど。
ここはどうやら夢の世界らしい。
ずっと眠れていなかったから、どこかで寝落ちしたんだろう。
それとも、もうアルト殿下は…
ベッドに腰をおろして、アルト殿下の頭を撫でる。
頭を怪我していると聞いたけど、それほどひどいのだろうか。
少し痩せてしまったアルト殿下を見ていたら、涙が溢れてきた。
「…アルト殿下。…アルト。結婚でもなんでもしてあげるから、早く起きて」
これが夢なら、元気なアルト殿下と会わせてくれればいいのに。
「めんご、めんご」と言った神を思い出す。
うん、あいつに期待しても無理。
これは私の夢なんだもん。
元気なアルト殿下の姿を思い浮かべる。
どうか、アルト殿下が元気になりますように…怪我が治りますように。
そう祈りながらアルト殿下の頭を撫でた。
温かい…体温かな?
なんだかホカホカとして、笑みがこぼれた。
すると、アルト殿下がゆっくりと目を開けた。
やっぱり、これは夢なんだと確信した。
夢を見ながら、これは夢だなと思うことはよくあったけど、こんなになんでも思い通りになる夢ははじめてかもしれない。




