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破滅エンドが確定しました。悪役令嬢ですが知ったこっちゃない、逃げる。  作者: 西園寺百合子


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27/50

27 和やかなムードで、夢見。

悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法

皇太子  アルト・アズリオン    水魔法

皇太子弟 シエル・アズリオン    風魔法

婚約者  リリアーヌ・マーロウ   雷魔法

ヒロイン ミレイア・ノクス     光魔法

先生   カサンドラ

「…ここは?」

さっきまであんなに眩しかったのに、夜の闇に包まれた部屋にいる。

キョロキョロと部屋の中を見回した。

私の部屋よりずっと広くて、家具も超高級な感じの物ばかりが並んでいる。

一つひとつが整然としていて、落ち着いた気配を放っている。

ベッドで誰かが寝ているようだから、そっと近づいてみた。


遠目で見てもそうかなと思ったけど、アルト殿下だった。

呼吸は穏やかで、けれどいつもよりずっと静かに見える横顔に胸が詰まる。

てっきり、あの世に来たと思ったけど。

ここはどうやら夢の世界らしい。

ずっと眠れていなかったから、どこかで寝落ちしたんだろう。


それとも、もうアルト殿下は…

ベッドに腰をおろして、アルト殿下の頭を撫でる。

指先に触れる髪の感触がやけに現実的で、夢だという実感が薄れていく。

頭を怪我していると聞いたけど、それほどひどいのだろうか。

包帯や血の痕を探すように視線を動かしてしまう。

少し痩せてしまったアルト殿下を見ていたら、涙が溢れてきた。


「…アルト殿下。…アルト。結婚でもなんでもしてあげるから、早く起きて」

私にできることは、願うことと祈ること。

それだけ。

そう思ったら、さらに涙が止まらなくなる。

これが夢なら、元気なアルト殿下と会わせてくれればいいのに。

「めんご、めんご」と言った神を思い出す。

あのふざけた軽い謝罪を思い出して、思わず心の中で小さくため息をつく。

うん、あいつに期待しても無理。


これは私の夢なんだもん。

元気なアルト殿下の姿を思い浮かべる。

城の廊下を歩く姿、剣の稽古で笑う横顔、何でもない会話でこちらを困らせるあの余裕。

どうか、アルト殿下が元気になりますように…怪我が治りますように。

そう祈りながらアルト殿下の頭を撫でた。

温かい…体温かな?

そのぬくもりが指先から腕へとじんわり広がっていくようで、体に染み込んでくる。

すると、アルト殿下がゆっくりと目を開けた。

まぶたが持ち上がるその動作すらはっきり見えて、時間がゆっくりになったように感じる。


やっぱり、これは夢なんだと確信した。

あり得ないほど穏やかで、都合の良い展開なんだもん。

夢を見ながら、これは夢だなと思うことはよくあったけど、こんなになんでも思い通りになる夢ははじめてかもしれない。

「…起きたら結婚してくれるって、本当?」

アルト殿下が目を開けるなりそう言った。

まだ完全に覚醒していないような、少し掠れた声が静かな部屋に響く。


「ええ。アルト殿下が元気に走り回ってくれるなら、結婚でもなんでも…だから、現実でも早く起きてくださいね」

自分でも驚くほど自然に言葉が出てきてしまう。

夢だからこそ言える無責任な言葉に、涙が溢れた。

現実でも言えたらいいのに。


すると「そうするよ」とアルト殿下が笑った。

その笑顔はいつも通りで、胸が痛くなるほど眩しい。

「さっき、アルトって呼んでくれただろ?アルトって呼んで」

少しずつ、声がはっきりしてきているようだ。

夢なのになんかリアル。


「はい、はい。夢でも起きてくれたし、アルトって呼びますよ。あとは何をしましょうか?」

なんでもすると言った手前、なんでも言うことを聞いてあげる。

どこか投げやりで、それでいて妙に優しい気持ちになった。

「…アルト、ごめんなさい。あなたに怪我を負わせてしまって」

言葉にした瞬間、胸の奥がきゅっと痛む。

アルト殿下が膝枕をしてほしいというから、ベッドに座らせていただいて膝枕をする。

夢なのに、結構重い。


「ヴェロのせいじゃないよ。俺の不注意だよ」

そう言われたけど、そうじゃないことはわかっている。

アルト殿下には、全てを話した。

夢で懺悔したって仕方がないことはわかっている。

それでも、ずっと胸にしまっておくには、私には重すぎた。


「シエル殿下にも、なんとお詫びをしたらいいか…」

あの可愛いシエル殿下の不安そうな顔を思い出して胸が苦しくなる。

「その手紙はまだ持ってるの?」

アルト殿下に言われて、少し言いよどむ。

父や母のことを気にしたわけじゃない。


でも、どうせ夢だし、全部吐き出そうと思った。

「はい。捨てるのも怖くて…本当に情けない話です」

捨てて、誰かにうっかり見られたらと思うと捨てられなかった。

「ほかには?俺に何か隠していることはある?全部話して」

アルト殿下がそう言うから、本当に全部話してしまった。

これまで抱えていたものを全部。

ただ、自分が楽になりたくて。


夢だしね。

我慢しなくていいよね、と言い訳をしながら吐き出す。

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