24 お庭に散歩にでかけてうっかり、密会。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
「シエルのことはシエルって呼ぶのに、どうして俺のことはアルトって呼んでくれないの?」
アルト殿下が真っすぐ見つめてくる。
かっこいい…最推しはやっぱり最推しだな。
「シ、シエル殿下ってお呼びしておりますよ?」
平静を装う。
ここで演技力が役に立つとは思わなかった。
「…ヴェロは、シエルのことが好きなの?」
アルト殿下から、思いもよらない言葉が飛び出した。
私がシエル殿下を好きか?とは?
私はシエル殿下の側妃候補ですから、嫌いなわけがないっていうか。
嫌いだったとしても嫌いなんて言えます?
そして、側妃ですよ、側妃。
正妃も決まってるのに、好きって言えます?
いや、そもそもシエル殿下より10歳年上ですけど。
もう弟にしか見えてませんけど。
私の最推しはアルト殿下ですけど。
無表情でここまで考えられるのだから、私の演技力はますます上達している。
「シエル殿下のことは側妃候補として尊敬申し上げております」
100点満点の答えでしょう。
尊敬という言葉は、使い勝手がいい。
尊敬している相手を嫌いなわけがないけれども、愛情表現ではないから好きとか愛しているからも少し距離がある。
ベストなお答えでした、私。
さすが、私。
「シエルと話すときは、いつも楽しそうだから。俺とは…会話にもならないのに」
アルト殿下がなぜかシュンとしている。
どうしたんだ最推し。
いつも完璧な王子様なのに、今日はシエル殿下と同じくらい子どもっぽく見える。
「…何かありましたか?愚痴ならお聞きしますよ」
シエル殿下に話すときのように、視線を合わせてみた。
アルト殿下の頬が少し…赤くなったような気がするのは、気のせいだろう。
「ヴェロが、シエルと仲良さそうにしているのが嫌だ」
アルト殿下が、本当に子どもみたいにそう言った。
さっき私のことを愛称で呼んだ気がしたけど、気のせいじゃなかったか。
ため息が漏れる。
「アルト・アズリオン殿下。私はシエル殿下の側妃候補です。適度な距離を…」
そう言うと、抱き寄せられてしまった。
バランスを崩してアルト殿下にもたれかかってしまって、しっかり抱きしめられてしまう。
これは事故だ。
たぶん、アルト殿下は…そう、私の服についていた葉っぱを取ろうとしただけ。
私はバランスを崩しただけ。
だからすぐに立ち上がれば、これは事故になる。
そうわかっているのに、抱きしめられた腕の中が思っていたより居心地がよくて。
なかなか手をほどけない。
もう、バランスを崩したという言い訳がきかないくらい抱きしめられてしまっている。
こんなところを誰かに見られては大変なのに…




