14 お城での再会に、固る。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
なんだかんだと、シエル殿下をダシにしてリリアーヌ嬢に勉強をしてもらう。
私とカサンドラ先生は、いまや同志だ。
カサンドラ先生はリリアーヌ嬢を立派な正妃にしなくてはいけない。
そうして私は…
おそらくシエル殿下が結婚を決める年齢になる頃、私は離宮にでも隔離されるだろう。
お飾りの側妃なのだもの。
気持ちよく退場できるように、リリアーヌ嬢にはしっかり学んでいただかないといけない。
窓辺のテーブルでお茶を飲みながら外の景色を眺める。
こんなにゆったりとした時間を過ごせるとは思わなかった。
ルージュリス家にいる時より、逃げている時より、ずっと気持ちが落ち着いている。
それは、ルージュリス家から何も言ってこないことも関係していた。
恐ろしいくらいの沈黙。
でも、なにもないなら、それに越したことはない。
お城に私の場所なんかないだろうと思っていたけど、そうでもない。
王族しか立ち入れない場所を除けば、お庭は自由に散歩させてもらえるし図書室にも行ける。
「そういえば、しばらく本を読んでいなかったわ」
そう思い立って、図書室に行ってみた。
学園にいるときは、よく図書室に籠っていた。
アルト殿下とミレイア嬢、そのほかの攻略者と接点をもたないようにするためだ。
イベントが発生するとき以外、図書室は使われなかったから、いい避難所になっていた。
そのとき読んでいた本の続きがあるといいのだけれど。
お城の図書室の本は、私の権限では部屋に持っていけない。
図書室の本を図書室から持ち出せるのは、王族だけなのだ。
本を読みたければ、図書室で読む必要がある。
そっと中に入ってみたけど、どうやら貸し切りのようだ。
アルト殿下の妃教育を受けていた時、ときどき通っていたから本棚の位置は把握している。
歴史書の棚をこえて、小説の棚のところまでくると、アルト殿下がいた。
居るはずがないと思っている人がいると、人は固まるものだ。
声を出すこともできないまま、その場に立ち尽くした。
ゆっくりとアルト殿下が振り向いて、私を見る。
「あ…」
アルト殿下が声を発したのが聞こえて、ハッとする。
挨拶もしないで立ち尽くしていては不敬だ。
「これは失礼しました。アルト・アズリオン殿下にご挨拶申し上げます。…誰もいらっしゃらないと思っていたので驚いてしまいました」
頭を下げて素直に謝る。
ん…
アルト殿下が何もおっしゃってくれないから、頭を上げられない。




