第90話 これからも・・・
遺体をグレン会長経由でナビア王国に引き渡しをした後日、グレン会長から報告がある。
「遺体の人物はアルム王国の第四王子でした」
陸地では戦いが始まっており、捕虜になったアルム国の者たちの証言が一致するらしい。
アルム国をより軍事国家にした王太子の右腕と称されている人物とのことだった。
「おそらく応援でこの地に来る予定だったと思いますから、我が国にとっては助かりました」
アルム国にいるナビア王国の密偵から、第4王子や指揮官がグリフォンに襲われたため部隊が混乱していて、戦地に来るのが遅れているらしく、ナビア王国軍が優勢とのことだった。
グレン会長からナビア王国の今後の行動計画として、海軍でアルム国の最大貿易港であるアズーリ港を叩くことにしたそうだ。
「早く決着をつけたいということですね」
「はい、アズーリ港はアルムの王都からも近く、相手に与える打撃は大きいとの判断です」
本来なら傭兵の船が多く出入りしている港のため、今まではできなかったらしい。
「ダニエル様をあてにされているのですか?」
リカード隊長がグレン会長に皮肉気に問う。
「確かにないとは言いません」
私たちは後方支援が基本。
ただ私には海の中から襲ってこないように、見回りをお願いしたいとのことだった。
アズーリ港にもう少ししたら着くというところで、船体が古そうな一団が我々と同じくらいの船数いて、行く手を塞いでいた。
「こちらの行動が読まれていたようです」
リカード隊長が私の横で話し出した。
「そのようだ。こうなったら我々も戦いに参加だろう。みな無理はしないように」
私はそばに居る者たちに声をかけると、海に飛び込んだ。
「やっと戻ってきたのに、休めないとは・・・・」
「仕方ないよ。王都への報告とかあって、2か月近く不在だったからな」
セドは、執務机で書類を処理している私の手伝いをしてくれている。
あの後どうなったかというと、アルム国の傭兵船団との戦闘は、やはり海の中を泳いで船を沈めようとしていた者たちがいて、私が相手をした。
船上でも傭兵もとい海賊でもあった相手なので、私たちの船員たちに負傷者はいたが勝利に終わり、そのままアズーリ港を破壊した。
ナビア王国の優勢がアルム国内に伝わるにつれて、国内のあちこちで反王室の勢力が蜂起した。
またアルム王城に集められていたゴーレム―――ナビア王国との戦いに投入予定だったものが、一斉に暴れて王城を壊したことも追い打ちをかけた。
そしてアルム王国内にいた王族はすべて捕まえられたが、王太子は自害していたそうだ。
アルム国との決着がついたため、私たちは帰国して、国王陛下や宰相様に報告をした。
子爵領に戻った後、宰相様からその後のアルム国についての報告が届く。
新政権は軍事国家に反対してナビア王国に亡命していた、アルム国王の王弟が新国王として王位についたそうだ。
宰相様の話だと、私たちの加勢で短期決戦に終わったことを感謝するとナビア王国側から連絡があったとのことだった。
「ダニエル様、セドリック様、お茶をお持ちしました」
アグネスがお茶とお菓子を執務室へ持ってきてくれた。
アグネスがテーブルにセッティングをはじめたら、亀様が入ってきた。
「おぉ、タイミングが良かったようだな」
亀様の分も用意してもらい、3人で話をする。
「亀様、私に何かお話しでも?」
「そうだ」
亀様の話はこの島で出産したグリフォンたちのことだった。
なんでも子爵領の近くにある山が、グリフォンの住処に似ているため、住んでも良ければここに残ってもいいと言っているそうだ。
「大きな山なんてあったかな?」
「子爵領の隣のリンデン伯爵領にある山ではないだろうか?」
セドの話だと子爵領の南側にある伯爵領だという。
「亀様、他領なので無理ですよ」
「そうか、彼らはセドリックとナディーヤを気に入っておるからこその提案だったのだろうが・・・仕方ないの」
亀様はグリフォンたちに伝えてくれるようだ。
「だが、子供が長距離飛行出来るまではまだ時間がかかるから、面倒を見てやってくれ」
数年後。
「シュトラント伯爵、マーティン子爵成人おめでとう」
「「ありがとうございます」」
宰相様から声をかけられる。
私は成人して、正式にシュトラント子爵領を引き継ぐと同時に伯爵になった。
そしてマーティン子爵とはセドのことだ。
セドはナビア王国とアルム王国の戦争が、短期で終結するきっかけになったアルム王国の第4王子の件と、グリフォンを従えた功績で私の隣の領地―――旧リンデン伯爵領の2/3を賜った。
そして残りの1/3の領地は私が賜ったのだ。
リンデン伯爵は、ナビア王国から戦争に協力したお礼で譲渡された土地と、王家が管理していた土地を合わせた辺境伯として移動したのだ。
リンデン伯爵の新領地は、旧領地の1.5倍になるし、豊かな土地らしいから、快く移動してくれたとのことだった。
国はどうしてもグリフォンを逃したくなかったのだろう。
グリフォンの移住が決まると、セドをいつも乗せるグリフォンとセドは、契約という名のもとに意思疎通ができるようになった。
従魔はなく、対等の同士という契約らしい。
おかげでセドも国内外で注目を浴びている。
私には土地と侯爵の話があったが、侯爵位は辞退したため、追加で金貨や宝石類が授与された。
地位が高くなればそれだけ気苦労も増えるし、実家とのこともあるしね。
それに島の開発や、領内の特産品、他国との貿易など忙しいのもある。
あとセドは、多くの縁談話からナディーヤと婚約した。
一番の理由はグリフォンがナディーヤを認めていることが決め手のようだ。
セドとナディーヤの父親も騎士同士で仲がいいし、話がトントン拍子でまとまったのだ。
今2人でマーティン子爵領を盛り上げようと頑張っている。
2人はたまにグリフォンに乗って遊びに来てくれる。
グリフォンなら日帰りできるしね。
そしてヘレンとジョージさんは無事に結婚できて、すでに1児の親だ。
ジョージさんは超親ばかで、子供が喜ぶ姿を見たいと、おもちゃを開発しまくっている。
ヘレンはおもちゃ工場を作り、笑いが止まらないくらい儲けまくっているようで、いいコンビの夫婦である。
おかげで島だけではなく領内も活気があり嬉しい悲鳴だ。
外れスキルと言われて苦労していた人たちが、噂を聞きつけて移住してくることが増えていた。
我が領内に住み慣れると、ちょっとしたきっかけで自分のスキルの使い方がわかるという不思議な現象も起きていた。
亀様の力か?と思い、亀様に尋ねたら、「違う」と否定された。
ただこの地ではスキルを隠さなくてよく、使い方がいずれわかるさという受け入れの風土が出来たからではないかとのことだった。
亀様は今も島に滞在中で、みんなと仲良く過ごしている。
外れスキルと言われ、実家のエインズワース伯爵家を飛び出し、子爵領を継ぐことはないだろうと思っていたのに、より大きくなってしまった。
あの時、あきらめずに行動したことがこんなにいい結果をもたらすとは思わなかった。
本当に人に恵まれた。
この地を愛してくれる人たちと共にこれからも守っていこう。
本日で最終話です。
最後までお読みいただきありがとうございました。




