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わっちの彼ピは、最強ヴィラン  作者: 弥馬田 ぎゃん


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11/30

最強ヒーロー集結編 疾風のアスリート

割れんばかりの大歓声に包まれて、アメリカ・ジョージ・ワシントン国立陸上競技場では、今、まさに赤土色のコースを駆け抜け、一人のスプリンターがワールドレコードを叩き出したところであった。

その青年の名は、ジョン・カールソン。僅か18歳で達成した大記録に興奮する観衆の中に今、何が起こったのか、正確に把握する者は、いない。

ジョン・カールソンは、満面の笑みを観衆に振り撒き、大きく手を振る。

金色の細い髪質、青い瞳、デキモノ一つない白い美しい肌。青年は、自らの容姿に絶対の自信を持ち、この世界記録も相まって、明日から女子にモテまくる事とスターになる事をこの瞬間、確信していた。

が、表彰台の晴れ姿を披露する間もなく、黒服の男達に連行されてしまう。

ジョン・カールソンを国立陸上競技場から離れた密室で待ち構えていたのは、あの大統領特命を受けたエージェントチャールズである。

「なんだよ。俺は、ドーピングなんてしてないぜ」

ジョン・カールソンは、エージェントチャールズに顔を合わせるなり、第一声でそう言った。

一発でエージェントチャールズを何かしらの責任者であると見定めた観察眼の高さは、賞賛されてもおかしくはないが、まだ、あどけない子供っぽさの残るその口調が品格を台無しにしていた。

エージェントチャールズは、自分がドーピングを疑っていると言われ、軽く鼻で笑った。

「やり過ぎとは、思いませんか?」

とジョン・カールソンに問う。

「50m、2秒なんて」

とチャールズに言われ、ジョン・カールソンは、目を点にして、一瞬、固まる。

「そんなに速かった?ちゃんと加減したのにな」

そう発言だけを残して、ジョン・カールソンは、屈強な男達の腕を振りほどき、疾風と共に姿を消した。

文字通りの目にも止まらぬ速さで、その場の誰も対応できなかった。

一秒後、すでにジョン・カールソンは、アメリカのワシントンD・Cのはるか上空にいた。

彼は、風を操るスーパーパワーで空を飛んでいた。

それに一番に反応を示したのは、訓練飛行中だったアメリカ空軍パイロットのトップガン2名だった。

マッハ5の速さの戦闘機に搭乗している彼らは、同じ速さで飛行するジョン・カールソンを発見し、司令部に判断を仰いだ。

即時撃墜命令が下り、彼らは、その命令に従い、小型追尾型ミサイルによる攻撃を行った。

ジョン・カールソンは、その攻撃を能力的にスピードで振り抜く事もできたが、そうはせず、飛行しながら、手刀を振り、かまいたちを発生させ、小型追尾型ミサイルをすべて撃ち落とす。

その後、余裕を持って、空軍パイロットと並走し、ピースサインしてみせるジョン・カールソン。

携帯を取り出し、戦闘機と空軍パイロットがちゃんと入る画角で自撮りする。

携帯をしまうと、ぐんぐんとスピードを上げ、マッハ5で飛行中の戦闘機乗り達の視界から消えた。

何故、そんなことが、可能なのか。普通、そのスピードで生身で飛行すれば、人間の身体など簡単にバラバラになってしまう。あるいは、燃え尽きるか。

しかし、ジョン・カールソンは、そうなっていない。彼の着用している陸上着も携帯さえも無事である。

彼は、空気の壁を作って、自らの身体を守ったうえで、風でブーストし、超高速飛行しているのである。

理論上可能かどうかもわからない人智を越えた所業を軽くこなし、ジョン・カールソンは、30分後、パリのエッフェル塔の展望台でソフトクリームを食べる。

気づけば、その隣には、エージェントチャールズが立っていた。

「あんた、何者?俺は、人類最速のはずだぜ?」

ジョン・カールソンは、目を剥いて、驚く。

「どうして、俺に付きまとうんだ?まさか、俺を解剖するつもりじゃないよな?俺は、宇宙人じゃないぜ」

エージェントチャールズは、それに返答せず、

「ジョン・カールソンさん。アメリカのヒーローになってみる気は、ありませんか?」

と提案する。

「ヒーロー?」

ジョン・カールソンは、ソフトクリームを舐める舌の動きを止め、エージェントチャールズの顔に焦点を合わせた。

「今、世界は、大きな危機に直面しているのです。あるミッションに参加し、その危機をあなたの力で取り除いてくれるなら、アメリカは、あなたを英雄として、表彰し、勲章を与えることをお約束します」

「勲章だけぇ〜?」

ジョン・カールソンは、チャールズに向け、両腕をWの形に見えるように広げた。てんで、お話にならないのポーズ。

「アメリカのヒーローとは、少し謙遜した物言いでした。あなたは、このミッションを終えれば、間違いなく、世界のヒーローになれます」

「それで俺にどんな良いことが?」

「世界中の女性からモテます」

「グッド。世界のヒーローか。いいんじゃな〜い」

ジョン・カールソンは、深くミッションの内容を聞くことなく、天条誠人抹殺の作戦に参加することとなる。


最強ヒーローチーム結成まで、あと4人。

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