合流を目指して
突如足元が割れてしまい、カイト、セアン、コスタはケアノスたちと分断されてしまった。ケアノスは落ちて行くカイトたちに手を伸ばしたが、間に合わなかった。
「そんな……落とし穴の罠があったなんて……」
「ケアノス、悔やむ暇はないみたいよ。ピンチはまだ終わってないわ」
と、大剣を構えたラージュが声をかけた。周りを見渡すと、無数のフィッシュスライスマンが取り囲んでいたのだ。
「地響きが止まったから、仲間を連れて戻ってきたみたい。頭のいい半魚人ね」
「セアンたちを探したいのに……こっちにはそんな暇ないのに! どこかへ行きなさい、半魚人!」
ケアノスは魔力を開放し、フィッシュスライスマンに格の違いを教えた。弱いモンスターなら、相手の魔力が強いと知れば、一目散に逃げていく。モンスターも命が大事なのだ。だが、フィッシュスライスマンはケアノスの魔力を感じても、不気味に舌を出して震えさせていた。それを見たラージュはため息を吐いた。
「怒ったケアノスの魔力を感じても怯むどころか、逃げもしない。どうやらやる気みたいだね」
「この先、何があるか分からないから力を使いたくないけど……しょうがないね。戦うしかないか」
ライアとラージュは武器を構え、目の前のフィッシュスライスマンに対し、風を使って一閃した。
「こうなったら、やるならとことんやるわよ。かかって来なさい」
「最初に言っておくよ。死にたくなければ、逃げた方をおススメするよ! 私たち、モンスター相手じゃあ命を奪うから!」
戦い始めた二人を見て、ケアノスは呆れた。だが、自分の周りにもフィッシュスライスマンが攻めてきたことを知り、レイピアを構えた。
「私と戦うつもりなのね……しょうがない……切り刻んであげるわ! あんたたちとの戦い、秒で終わらせる!」
そう言って、ケアノスもフィッシュスライスマンと戦い始めた。
「ぐ……う……うう……」
落ちた先で、カイトは目を覚ました。また死んでしまったのかと思ったが、まだ自分は生きていることをカイトは察した。手には、何か柔らかい物が触れていた。何だと思いつつ、手に触れる柔らかい物を握った。
「あ……ん。うーん」
握ったと同時に、セアンのいやらしい声が聞こえた。その声を聞き、顔を真っ赤にしながらカイトは顔を上げた。
「んも~、カイトってば大胆~。こんな状況で攻めるだなんて~」
「セ……セセセセセ……セアン! じゃあ今、俺は……」
何と、カイトはセアンの上で倒れていたのだ。で、手に触れていたのはセアンの胸だった。目が覚めてすぐにどこうとしたが、上から人の体温が感じた。何かが乗っているのかと思ったカイトだったが、セアンが声をかけた。
「カイト、起き上がらないで。コスタが落ちちゃう」
「コスタ? 俺の上に乗っているのか?」
「うん。まだ目を覚ましてないみたい。私が動くからちょっと待っていて」
セアンはカイトの下から動き、コスタの様子を調べた。コスタが無事なことを知り、セアンはコスタを起こそうとした。
「コスタ。起きてコスタ。カイトの背中を独り占めにしないでー。おーい、何か返事せんかーい」
そう言いながらセアンはコスタの額を叩いたり、頬をつねったりしていたが、コスタは目を回していて起きはしなかった。
「うーん……ダメっぽい。気絶してる。全然反応しない」
「気絶してるのか。大丈夫かな……」
「見た所傷はないけど……頭をぶつけていたら大変だよ。ちょっと待って、回復魔法をかけるから」
セアンは魔力を少し使い、回復魔法を使ってコスタを治療した。しばらくして、コスタは唸り声を上げながら目を覚ました。
「よかった、目を覚ました。一安心」
「大丈夫か? コスタ? どこか痛むところはあるか?」
「セアン……カイト……あれ? ここは? 真っ暗で何にもわからない」
「落っこちた先。覚えてないの? 私たち、洞窟の罠に引っかかって落ちちゃったんだよ」
セアンの言葉を聞き、コスタは自分たちが落ちたことを思い出した。
「そうだ……私たちは落ちたんだっけ。それで、ここは落ちた先ってわけね」
「その通り。穴に落っこちてケアノスたちと離れ離れになっちゃったの。早く戻って合流しよう。上から魔力を感じるよ。ケアノスたちが魔力切れになる前に、早く合流しよう」
「さっきのフィッシュスライスマンって奴と戦っているのかな……あいつら、また戻って来たのか。しつこい半魚人だなー」
カイトは心配そうに呟いた。セアンは周囲を見回し、道の確認をした。カイトとコスタもセアンと同じように周囲を見て、道があるかどうかの確認を行った。
「コスタ、そっちに道はあったか?」
「分からない。もう少し目が暗闇に慣れれば分かると思うけど……それらしい物は見当たらない」
「えーっとどこだどこだ……あ! あそこに階段がある! 多分あそこから上の階に上がれるよ!」
「先へ急ごう! 今はあれこれ考えるより、皆と合流することを考えよう! 早くしないと、ケアノスたちがあの半魚人にやられるかもしれない!」
「そうだね、早く合流してケアノスたちを安心させよう。今頃不安の気持ちで一杯かもしれないし」
カイトの言葉の後、三人は急いで階段へ向かった。しかし、会談へ向かう途中で天井から液体の集合体のようなモンスターが現れた。それを見たカイトは腰を抜かして驚いた。
「うわっ! 何だ、こいつ。気持ち悪い! いきなり上から現れたぞ!」
「こいつはアジットスライム。腐った水に魔力を入れてできたモンスターだよ」
「大体腐った水に魔力を入れても反応しないけど、たまーに異常反応でこいつができるの。多分、天井の水滴に魔力のカスが溜まってこいつが生まれたんじゃないかなー」
「へーそんなことが起こるのか」
「うん。ごくまれにね」
セアンとカイトの説明の直後、アジットスライムがカイトの方に向けて体を伸ばしてきた。
「ウワッ! 感心している場合じゃない! こいつをどうにかしないと!」
「そうだね。こいつ、私たちを食べるつもりでいるみたい!」
「食べる? あんなスライムに食べられてたまるか! 食べられる前に倒してやる!」
カイトは刀でアジットスライムの刀を斬ったが、落ちた体の破片は腐った水となって地面に落ちた。アジットスライムの体積が減ったため、カイトはそれなりにダメージを与えたと思ったが、セアンがこう言った。
「ダメだよ、剣でやみくもに斬ってもあいつは倒せない! また再生するよ!」
「再生するのか。じゃあどうやって倒せばいいんだ?」
「あいつの体の中にある変な丸っこいのがあるでしょ? それがあいつの弱点の核だよ!」
「弱点を狙えばいいんだな、分かった! 俺が斬る!」
「でも、無暗に斬ろうとしたら、あいつに飲まれるから注意して!」
コスタはカイトに注意を言ったが、突如足元から別のアジットスライムが現れた。
「キャアアアアアアアアアアアアア!」
「コスタ!」
カイトはコスタの方を振り返り、捕まったコスタを助けようとした。だが、後ろにいたアジットスライムがカイトを捕まえ、体内に入れてしまった。
「グガガガガガ……」
「ウブゥ……」
カイトとコスタはそれぞれアジットスライムの体内に入れられてしまった。腐った水のせいで、二人はダメージを負い続けてしまう。早く倒さねばならないが、アジットスライムの弱点である核はアジットスライムの体内を素早く動き回る。セアンは挑発するようにうねうねと動くアジットスライムを見て、舌打ちをした。
「この腐ったスライム、私の大事な人を汚したらどうなるか……教えてあげるわよ。覚悟しなさい!」
そう言って、セアンは左手の銃に二発の弾を入れた。
よく魔力に関しての話が出ますが、俺の作品の魔力はドラゴンボールで言う気みたいなもんです。ですが、エネルギーの元はカロリーです。なので、食事をすれば魔力は回復します。よくチョコバーとか非常食が欲しいから頂戴と言うシーンがあるんですが、その理由は魔力補充のためです。ちなみに、魔力を使うとカロリー消費するってのはトリコが元ネタです。トリコも読んでいたので、かなり影響を受けています。
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