《☆~ 蝶の守護省壊滅作戦 ~》
富子の「足が怠いわ」や「疲れて、もうくたくた」などという愚痴を繰り返し聞かされ、三十分ばかりで目的の場所に辿り着いた。
銀色の丸い容器が置いてあり、津田大佐がそれを見ながら話す。
「きさまらが乗るミクロ宇宙船ネイムレス号だ」
「小っこ!」
さすがにミクロという言葉がついているだけあって、片手で容易く持ち上げられるくらいだった。
パンナコッタが怪訝そうな表情で話す。
「こんなのには、一人も乗れませんよ」
「問題ない。きさまらの身体を、この寸法に合わせる」
「え??」
錬金術者のパンナコッタですら驚かされた。
津田大佐が懐から銃のような道具を取り出し、まず三休さんに向ける。
「うわ、なにすんねん!」
「気にするな」
「いやいや、気にするって!」
「これは人を殺めるために使う銃ではない。人体の大きさを自在に変化させられる特別な道具だ。身に着けているものも一緒に小さくなる」
津田大佐が銃についている赤いボタンを押すと、銃口から赤い光線が放たれ、それを浴びた三休さんが、見る見る小さくなってゆくのだった。
「что」
小型の三休さんが叫んでいるけれど、声も小さいため分からない。
他の者たちも光線を浴びせられた。
ミクロ宇宙船ネイムレス号に乗り込み、宇宙の遥か遠くへ旅立つ。揺れも騒音もなく、快適だった。航行時間のほとんどは、歪みの中を進むけれど、この高度な技術について四人は知る由もない。
次の日、目的の惑星に到着できた。船渠に入港してきたミクロ宇宙船ネイムレス号に、蝶系統動物の技師が無線通信で呼び掛けてくる。
》合言葉を言え《
「?」
パンナコッタが困惑した。どう答えてよいか分からず、黙っていると、相手はまた催促してくる。
》合言葉だ、まさか忘れたのか?《
三休さんが咄嗟に応答する。
「はい。なにしろ九百年も昔に教わったもんやから、綺麗に忘れてもうた」
》ネイムレス、感じが変わったなあ《
「そうでっか? ずっと地球とかって辺鄙な土地におったからなあ」
》なるほど、仕方がないから中に入らせてやる《
「済んまへん」
三休さんが頓智で乗り切った。
しかしながら、四人が蝶の守護省に入るために宇宙船から出たところ、すぐ正体がばれてしまう。
先ほど無線通信で話していた技師が怒り心頭に発する。
「お前ら地球人だな。ネイムレスに成り済ますとは小癪な!」
「あんさん、ジパング語うまいなあ?」
「違う! なに者かが勝手に翻訳して、お前らの鼓膜に送っているらしい。お前らの発する言葉も、私たちが分かる蝶系統動物語に変換されるのだ」
「なかなかに興味深い技術ですねえ」
「パンナコッタはん、感心しとる場合やないで」
三休さんの言う通り、異変を察知した蝶系統動物たちが大勢集結してくる。
「戦いの開始じゃ!」
後土御門天皇が伝家の宝刀を抜いた。
迫りくる敵をばっさばっさと斬り捨てる。富子も木刀で戦う。二人の強さで、最初は優勢だった。
喜ぶのも束の間、数百の蝶系統動物に囲まれ、地球人たち猿系統動物にとっては有毒な神経ガスが撒かれ、四人は駆除される。
あらゆる宇宙の隅々まで、全世界管理者の視聴覚と呼ぶに値する「量子波」が広がっており、この酷い状況を漏れなく観測できていた。
「室町カルテットの力が及ばなかったか。儚く命を散らした四人は、せめてどこかの全世界へ転生させてやるとしよう。彼らに再起を図らせ、蝶系統動物どもに一矢報いてやらねば、我らも立つ瀬がないというもの」
全世界管理者は自らを納得させた上で、全世界の監視を続ける。
《ネイムレスの蝶系統動物効果》完結!




