《☆~ ミクロ宇宙船ネイムレス号 ~》
八月十四日、ジパングに帰還していた室町カルテットは、キャビア公園で催される戦勝祝賀会に参列した。ドーナツ民国ナチョス党代表者のトリュフ氏を籠絡した功績を讃えて、彼らに功一等金竜勲章が授けられた。
パンナコッタが「まさにポンチュー家の家宝だ!」と大喜びするけれど、三休さんは、なんら惜しむことなく勲章をオークションで売り飛ばす。
次の月、国際連盟が発足した。全世界で進行していた蝶系統動物による「ネイムレスの蝶系統動物効果」という作戦は、幸いにして失敗に終わった。それでも地球人たちは、今なお、警戒を怠たる訳にいかないだろう。
地球人同士のごたごたが要因で次の世界大戦が引き起こされないようにとの名目で、国際連盟に加盟している五十すべての国が「核兵器廃絶条約」を締結し、全世界の恒久平和を願っている。
この日、ジパングでは、室町カルテットがジパング陸軍のキャビア基地に呼び出された。第八会議室に入ってみると、津田大佐が一人で待っていて、近くに時空間交信器がある。
「きさまらは皆、二階級特進で今日から大尉だ」
「津田大佐よりは、まだ格下でんなあ?」
「きさまらを招集したのは、そのような雑談をするためではない。極秘の特別任務について、全世界管理者准将から説明があるのだ」
「ういっす」
津田大佐は、能面のような表情で時空間交信器に向かって話す。
「全世界管理者准将、室町カルテットの四人がきております」
》津田大佐は席を外してくれ《
「了解しました!」
津田大佐が第八会議室を後にする。
早速、三休さんが全世界管理者に問い掛ける。
「あんさん、准将やったんかいな?」
》便宜上のことだ《
「ふうん」
准将は大佐の一つ上の階級に過ぎない。全世界管理者というくらいだから、もっと偉いのかと思うけれど、三休さんは、話したところでなんら得をする訳でもないと分かっているから口に出さない。
「そんで、今度はなんの任務でっか?」
》蝶の守護省壊滅作戦だ《
「なんやそれ?」
》説明するから黙って聞け《
「ういっす」
三休さんが口を閉じ、全世界管理者の話に耳を傾ける。
蝶の守護省は、ネイムレスが帰還してくるのを待っている。しかしながら、全世界管理者がネイムレスを根刮ぎ消滅させたので「ネイムレスの蝶系統動物効果が予定通り成功して、地球人は滅亡した」という報告は上がらない。やがて蝶の守護省は異変を知るに違いない。その前に先手を打ってやろうとのこと。
かつてネイムレスを運んできた「ミクロ宇宙船ネイムレス号」が、アデライード連合国軍によって接収されている。それに乗り込んで蝶の守護省を破壊しに出向くという危険な任務が、室町カルテットに与えられた。
既にネイムレス号が、このキャビア基地に搬送されている。
「やれやれ、人使い荒いなあ。生身の人間には堪えまっせ」
》ぐだぐだ文句を言うな《
「まあ今回、新しい言葉の猛特訓をせんでもええんだけは、せめてもの救いちゅうことやな」
》健闘を祈るとしよう《
全世界管理者との交信が途切れた。
このタイミングを見越しているかのように、津田大佐が入ってくる。
「きさまらを最重要機密扱いの宇宙船発着場に連れてゆく」
「ういっす」
四人が、津田大佐の後に続いて歩き始める。




