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ネイムレスの蝶系統動物効果  作者: 水色十色
思念量子波の無免許使用
20/25

《★~ 室町カルテットの沙汰 ~》

 四人は、あれこれ思い悩んだところで無罪放免になる訳でもないと開き直り、話題を変えて、三休さんが義政公と繰り広げた頓智勝負、富子の婚約破棄通告、あるいは身の上話などで気を紛らしていた。


「三休さんのお祖父上そふうえがアデライード人だったとは驚きです」

「拙僧も乳母から聞いただけで、その爺さんと()うたことないんや。まあどうでもええけどな」

「僕たちの作戦は不本意な結果に終わりました。けれど、もしも僕たちが想定していた通りに、蝶系統動物の陰謀を阻止できていれば、アデライードは婚約を破棄しなかったでしょうし、船出して新大陸を見つけることはなく、アデライード合衆国は建国されなかったはずです。三休さんのお祖父上は生まれず、そうすれば、三休さんは存在できませんし、頓智九番勝負も行われないで、傾国の将軍と揶揄されていた義政公は心を改める機会を得られず、乱れのない応仁の世は訪れていなかったかもしれませんね」

「ややこしい理屈やなあ」


 突如、目前にある時空間交信器が「じりりりーん!」と、けたたましい音を響き渡らせ、パンナコッタが咄嗟に応じる。


「もしもし、全世界管理者さんですか?」

》そうに決まっている《

「僕たちの沙汰が決まったのでしょうね」

》それもそうだ《

「覚悟はできています。あ、首を洗うのを忘れておりました」

》それはよい《

「どういうことでしょうか?」

》等活地獄に落とそうと考えていたが方針変更だ《

「え??」

》四人の沙汰は、かくかくしかしか、まるまるうまうまとする《

「な、なんと!」


 室町カルテットに下された沙汰は異例なものだった。

 彼らに課されたのは、四百七十四年の間、冷凍コウルド睡眠スリープさせられ、改めて「世界史の塗り替え任務」に就くこと。

 後土御門天皇と富子は迷惑そうだけれど、パンナコッタと三休さんは満更でもない表情を見せている。


「心なしか、嬉しそうになさっておいでのようね」

「富子さんは嫌でっか?」

「嫌に決まっています。なにしろ、身体が凍えるのですから」

「あ、それについての心配は無用です」


 パンナコッタが口を挟んできた。


「冷凍睡眠で眠りにつくまでは温かいですから」

「寝てもうてから、じわじわ冷やされるんかいな」

「ご名答です。ははは」


 今度は後土御門天皇が口を挟む。


「パンナコッタと三休は、どうして嬉しそうなのじゃ?」

「僕は全世界学者ですから、四百七十四年後に全世界がどのようになっているかを見たいという好奇心の方が勝っているのです」

「拙僧は、修行や雑用やらから逃げられるんが嬉しいんや」

》雑談タイム終了だ《


 突如、四人の身体が清涼殿から消え失せた。

 彼らは、全世界管理者が作った亜空間へ瞬間移動させられ、冷凍コウルド睡眠スリープ用服スートに包まれて、冷凍コウルド睡眠スリープ容器キャプスルに納まる。

 地球にネイムレスという愛称の技師を送り込んだのは、蝶の守護省と呼ばれる蝶系統動物を守る目的の巨大組織である。ネイムレスは、作戦「ネイムレスの蝶系統動物効果」を決行し、およそ九百年眠った後、蝶の守護省に帰還して報告することになっている。

 しかしながら、ネイムレスは全世界管理者によって消滅させられたので、このままでは蝶の守護省に報告が上がらず、別の新たな技師が地球に送り込まれるに違いない。そうなる前に、蝶の守護省を攻めて壊滅させようというのが、全世界管理者が思いついた作戦である。

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