《★~ 頓智九番勝負が大波乱 ~》
室町殿で、いよいよ頓智九番勝負が始まる。
義政公が不敵な笑みを浮かべながら、三休さんに言い渡す。
「一番目はお使いじゃ」
「は??」
「茗荷屋で鶏肉を四リーブル買ってくること。制限時間は二十分じゃ。僅かでも遅れたら、三休の負けとする。よいな?」
「ういっす」
綽綽の余裕顔を見せる三休さん。
義政公が、正確に二十分を計測できる砂時計に手をつける。
「開始じゃ!」
砂時計がひっくり返された。
三休さんは、茗荷屋までの最短経路を歩く。
あろうことか、途中の橋が、いわゆる「虎柄ロープ」で封鎖されていた。しかも「この橋、渡るな」と書いた貼り紙までついている。
「あちゃー、やられた!! 別の橋に回ったら絶対遅れてまうわ」
三休さんは飛脚を捕まえて、金貨を四枚握らせる。
「済んまへんけど、茗荷屋で鶏肉を四リーブル買うて室町殿に届けてんか。そしたら将軍はんから、金貨二十枚貰えまっせ。どや?」
「やるやる! あ、いえ、是非やらせて下さい!」
飛脚が大喜びで引き受ける。
三休さんは、手ぶらで室町殿の御座所に戻った。
義政公が問い掛ける。
「鶏肉はどうしたのじゃ?」
「坊主が鶏肉なんか持って歩いとったら、生臭とかって揶揄されまんのや。ほんまに世知辛い世の中やなあ。そんで飛脚に頼みましたわ。せやから、褒美の金貨二十枚、払たってくれまっか」
「余に払えと申すか?」
「ういっす。お使いを頼んだのは将軍はんやろ。頼んだからには、必要経費ちゃんと出して貰わんとなあ。へへへへ」
「むむぅ」
「どないしました?」
「余の負けじゃ! 二番目を始めるぞ!」
「ういっす」
次の頓智も、勝ったのは三休さんだった。三番目、四番目も同じく。
そして五番目で、鶏肉の料理が二人分用意された。
「早食い競争じゃ」
「それ、頓智でもなんでもないわ」
「やかましい。先に完食した方を勝ちとする。開始じゃ!」
義政公が鶏肉の山賊焼きを食し始めた。
三休さんも、あわてて後を追う。若者の食欲は旺盛だった。
凄い勢いで料理に食らいつく三休さんの姿を目の当たりにした義政公は、このままでは負けると感じて、いちゃもんをつけることにする。
「これこれ、三休!」
「は、なんすか?」
「坊主が鶏肉を食せば、生臭なぞと揶揄されるのではないか」
「へえー、一体どこの誰が揶揄しゃはるんや? これを見てるんは、将軍はんと神座ヱ門はんだけでっせ。お二人とも、そんなしょうもない小者やないやろ?」
「むむぅ」
義政公が困っている隙に、三休さんは「ほんならお先に」とだけ言って、残りの山賊焼きを食し終えた。
またしても敗北を喫した義政公は、この上なく憤懣やる方ない。
「おらぁ生臭坊主、こうなったら殴り合いじゃ!」
「ええっ!? ちょ、ちょっと待ってんか!」
「いいや問答無用! さあ、全力で掛かってこい!!」
「ちょ、将軍はん、無茶苦茶でっせ??」
「やかましいわ! おぬしも男であろう、拳で応じろや!」
「ひぃえぇー、神座ヱ門はん、仲裁してんか」
「拙者は、勝負に口も手も出せない立場でござるからして」
「そんな殺生なあ……」
もう遅い。義政公の拳骨が顎に打ち込まれる。
立て続けに殴られて、三休さんは一分も経たないうちに失神する。頓智九番勝負は、大波乱で幕を閉じるのだった。




