0. プロローグ
いつもとは違う、少しだけ特別な日。
ありふれた日常の中にたまに訪れる、普段とは異なる新鮮な時間。
それは誰のもとにも等しく訪れる機会はある。
テストで満点を取った。彼女ができた。友達と喧嘩した。そして仲直りした。
3日もしないうちに気にしなくなってしまうようなものもあれば、何年たっても鮮明に記憶しているような出来事もある。
それが面白い思い出になったらみんなで大声で笑いあえばいい。悲しい思い出であったとしても過去のものとしてもっと大きな声で笑い飛ばしてしまえばいい。
しかしごく稀に、『ちょっとした非日常』になるはずだった出来事が『想像を絶する異常』に姿を変えてしまうこともある。
ある少年の話をしよう。
高校二年生のある男子生徒は、修学旅行の目的地であるハワイに向かって太平洋上空約40000フィートを飛ぶ飛行機の中にいた。彼のクラスは飛行機の乗員数の関係から、ほかのクラスとは異なるこの機に搭乗していた。クラスメイトは今回の旅行で初めて海外に行くという生徒がほとんどを占め、その誰しもが興奮を抑えきれずにいた。もちろん、彼もその一人である。皆、三者三葉に旅行中の計画を立てていたが、彼の予定はなかなか興味深いものであった。どうやら彼は、この旅行中に意中の女子生徒に自分の思いを打ち明けるつもりでいたのだ。成功すればよし、失敗すれば笑い話。どちらに転んでも生涯忘れることのない思い出になったであろうことは言うまでもない。
しかし残念なことに、この計画が実行されることはついになかった。
彼だけではない。
この飛行機に乗っていた者全員の予定もどれ一つとして叶えられることはなかった。
なぜなら、乗員乗客287名を乗せた機体は突如としてレーダーからその姿を消したからだ。
この異常事態は即座にハワイ島の沿岸警備隊と軍に伝えられ、直ちに捜索が始まった。
―捜索開始から5時間後、機体は発見され、すぐさま生存者の捜索が行われたものの、残念ながら一人として息をしている者はいなかった。
可能な限りの遺体は回収されたのちに身元の調査をされたが、一つだけ不可解な点があった。
―奇妙なことに最終的に回収された数多くの遺体の中に、少年と彼の所属していたクラスの身元のものはついぞ一人として確認されなかったのだ。




