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食の革命児  作者: 亜掛千夜
第十七章 イシュタル創卵編

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第310話 スパッドの調査結果

 土地の所有者にしっかりと許可をもらってから畑に入り、さっそく竜郎は調査を開始する。

 まずは万が一にでも刺激して出てこないように、相手に索敵がばれないよう注意しながら土と解、闇魔法による地中探査を行っていく。



「今回のやつは1匹逃がすと100匹で帰って来ると言われてるらしいからな。念入りに調べていこう」

「なにそのどこぞのGみたいな言われよう……。ほんとに美味しい魔物の素材になるんだよね?」

「もちろんだ。じゃなきゃここには来なかったからな。さて、どれくらいいることやら」

「ニーナたちが退治すればスミスさんたちも喜んでくれるだろうし、みんな幸せになれるね!」

「そうだね、ニーナちゃん」



 ニーナはいい子だなぁと愛衣が彼女の頭を撫でてあげると、嬉しそうにニーナも微笑んだ。

 ちびっ子たちも撫でて欲しそうにしてきたので、調査中の竜郎に代わって愛衣が他の子たちの頭も撫でまわし可愛がっていった。


 そんな中、愛衣に撫でられている子供たちを羨まし気に見つめつつ、竜郎が調査をしていくと嫌な事実が判明する。



「うわ……これは酷いな……。どうりで今まで根絶できずに毎年出てきたわけだ……」

「え? そんなにやばい感じなの? たつろー」

「ああ、この近辺の地中の情報を一気にさらった感じだと、こんな感じになってた」

「うぇっ!? こんなに!?」



 称号効果によるイメージの共有で愛衣に調べた結果を伝えると、彼女も思わず驚きの声を上げてしまう。

 そのイメージを文字で説明すると、この辺りの地形の立体地図があり、その地中深くの場所にスパッドの反応を示す赤い点が点と認識できないほど真っ赤に染めていた──という感じだろうか。



「それだけ、ここが食糧豊富だと思われているのかもしれないな。

 ただ安心……していいかどうかはともかくとして、それはスパッドが植え付けた卵──こいつらの場合は種と言ったほうが近いかもしれないが、それがほとんどではあった。

 ちなみに生まれた状態の奴だけにすると、こんな感じになる」

「あーだいぶスッキリしたねーって、いやいや、種を入れると異常なだけでこれも十分多くない?」

「多いけど後から見ると少なく見えるから不思議だよな。

 んでもって厄介なのは、この種は生まれた個体が特殊な救難信号というか波長を地面にソナーみたいに撃ち付けると、急速に成長してどんどん生まれてくるっていう性質もあるみたいだ」

「つまり、その全部が一気に成体になることもあるってこと? パパ」

「そういうことだな」

「農家の人が倒すのが遅れると仲間を呼ばれて~って言ってたのって、一気に種から成長して生まれた個体だったのかもね」

「その可能性が高いだろうな。急速成長して出てきた個体は、普通に生まれた個体より弱い傾向にあるみたいだが、それでもある程度力量がないと数の暴力で押し潰される。厄介な事には変わりない。

 それでいてこれだけあるから、大量に駆除したと思っても次の年には残っていた種から普通に生まれる。

 そういう個体がまた地中に大量の種をまき散らしながら、地上に出てきて作物を食い荒らす──っていう循環がずっと成り立っていたみたいだ」



 種の位置はかなり地中深くまで根付いているのと、土に限りなく近いような偽装までされた魔卵であることもあって、そこいらの冒険者が調べた程度では発見できないし、発見できたとしても、その全てを竜郎のように把握することも不可能。

 異常なほどレベルの高い魔法能力と、それを成しえるエネルギーがなければできない芸当だ。

 毎年ここにきて冒険者たちがやっていた討伐は、ただの対処療法的な行動でしかなかったということになる。



「まあそれでも助けを呼ぶ個体を倒し尽くせば収穫の時期までは眠っているだろうから、一時的に安全にはなるんだけどな」

「じゃあニーナたちが全部倒しちゃえば、もうここにいる人たちも困ることないのかな?」

「あー……でもそれって大丈夫なの? ほら地球でもミミズとかいた方がいい土になる? みたいなのあったよね?

 美味しい魔物の素材になるくらいだし、実は作物の美味しさに関わってた! なんてこともあるかもよ」

「いやぁ、実はこいつらの場合、むしろ害しかないんだよなぁ。

 種が土に混じったエネルギーや養分を余計に吸い取ってるから、作物のためにはむしろ全部取り除いた方がいいまである。

 あとは生態系の問題になってくるわけなんだが」



 ここをスパッドたちが占領しているおかげで、別のもっと危険な魔物の侵入を防いでる──なんていうことも有りえないわけではない。

 なにせ数だけは凄いのだから、多少格上でもゴリ押しで勝つことくらいはできるだろう。



「その辺の調査も一応してから、大丈夫なら全部討伐っていう流れでもいいかもしれない。

 別にここにしかいない珍しい魔物ってわけでもないから、この世界から消えるわけでもないしな」

「それならここの農家の人たちのためにも、全部狩っちゃった方がいいかもね」



 ということで竜郎がサクッと周囲の生態系を調査したところで、とくにスパッドのおかげでここに来ないといった魔物は近辺にはいないようだった。



「ただそうなると、消えたことで後々別の厄介なのが──ってのもないわけじゃないだろうが、そこまで考えてたら大変だしな。もうやってしまうとしよう」

「もしも今後、何か厄介なのが出てきたら連絡ちょうだいって冒険者ギルドに言っておけば大丈夫だろうしね。

 私たちがすぐに対処しにくれば問題ないよ、きっと」

「ママ頭いい!」

「「あまたいー!」」

「「フィィリリリィ」」

「えへへ、でしょでしょ。でも、あまたじゃなくて、あたま、だからね。楓ちゃん、菖蒲ちゃん」

「「うー?」」



 違ってた?と可愛らしく首を傾げる二人が可愛かったので、竜郎と愛衣でギュッと抱きしめてから、いよいよここにいるスパッドの討伐に入っていく。



「ニーナが地面に全力パンチ! ……はダメだよね?」

「それやったら、お野菜どころかこの辺一帯全部が吹き飛んじゃうからねぇ。

 そいう意味では、今回私もちょっと苦手分野かも。

 てんを使えば、それだけを倒すこともできるだろうけど」

「この辺一帯を吹き飛ばす方が、俺たちの場合楽なんだよなぁ。

 農作物への影響がなく、かつ大量すぎるほどに地中にいるスパッドを根絶やしにする方法か。さてどうやってやるか」

「「フィリリ~~」」

「ん? どうした。フォルテ、アルス」



 やり方はいくつか思い浮かぶが、その中でどれが効率的で安全かと竜郎が考えていると、今回一緒に連れてきていた幼竜の内の二人が彼の足を尻尾の先で突ついてくる。

 お腹でも空いたのか、眠くなってしまったのかと腰を落として小さくなってくれているフォルテとアルスに目線を合わせると、眷属のパスを通じてイメージを伝えてきた。



「そんなことができるのか?」

「「フィリリリリ」」

「フォルテくんたちは、なんて言ってるの?」

「スパッドみたいな作物が大好きな草食系魔物が食べたがる実を沢山作りだせるし、そこに眠りの成分を追加することもできるらしい」

「へーー、フォルテとアルスはそんなこともできたんだ! お姉ちゃんのニーナも知らなかった」



 試しに一つ眠り成分のないものを作ってみてもらうことに。

 どちらか片方ではなく、両方できるということは種族的な能力ということなのだろうと竜郎は興味深げに観察する。


 フォルテとアルスは木のような尻尾をプルプルと小刻みに震わせ、しばらく「フィリリリリリ」と鈴の音のような鳴き声を上げると、その先に段々と桃のような果実が実り地面に落ちていく。



「おっと」



 落ちる前に愛衣が素早くキャッチし、彼女の手には二つの果実が。

 別に人が食べても害はないとのことなので、仲良く皆で分け合って齧っていく。



「うーん……ちょっと渋い?」

「だな。微妙に渋い柿みたいな味がする」

「そんなに美味しくないね」

「「うぅ……」」



 人間の味覚的には食べられないわけではないが、そこまで美味しいわけでもない味。

 舌が肥えてしまっている竜郎たちからすれば、好んで食べたいとは思えない果物。


 だがこれはかつてイフィゲニア帝国が騒乱の時期にあった遥か昔、食料生産を任されていた森厳のフォルス種が、スパッドのような作物を荒らす魔物対策にイフィゲニアより与えられ生まれ持った能力。

 こと草食系の魔物に対しては、パルミネのように美味しそうと思えるようになっているので、その効果はかなり高い。



「「フィリリリ?」」



 使えそう?と竜郎に問いかける二人に対して、竜郎は「ありがとう」と頭を撫でていく。

 これで使えないなんて言えるわけがないし、実際にこれを使うことで根こそぎ引っ張り出せるかもしれない。

 フォルテとアルスの好意を無駄にしないためにも、今回はこれを使ってやってみることに決めた。



「よし、それじゃあ、やってみるか」

「「おー!」」「「うー!」」「「フィリリ~~」」

次も木曜更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[一言] 調査したスパッドの生態は冒険者ギルドに報告して資料化を頼んだ方が良いかもですな 今回やる退治法は載せられないでしょうけどw
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